IoEとは?
そもそもIoEとはどのようなものなのでしょうか。ここでは、IoEの意味や対象となるものについて解説します。
1. IoEの意味
IoEとは、「Internet of Everything:すべてのインターネット」の略称。あらゆるものがインターネットに接続されることです。2012年に米国のシスコシステムズが提唱したIoTの次なるコンセプトであり、「ヒト・モノ・データ・プロセスを結び付け、これまで以上に密接で価値あるつながりを生みだすものの到来」を提唱しました。
IoEには、さまざまなものがインターネットに接続して発生するデータの活用までが含まれます。IoEの実現によってインターネットはさらに便利なものとなり、暮らしやビジネスを変化させる可能性があります。
2. IoEの対象となるもの
IoEはあらゆるものが対象となり、物理的なモノ以外に、ヒト・コト・モノなどさまざまなものが対象です。データやプロセスなどもIoEの対象です。IoEはウエアラブルデバイスなどによってすでに実現されつつあり、グローバルではスマートシティなどの大規模な実証実験も行われています。
今後、さらに多くのものがIoEの対象となり、身近なものになっていくと考えられます。
3. IoEの市場規模
アジア太平洋地域、北米、ヨーロッパ、ラテンアメリカなど世界のIoE市場は、2021年に約9,182億米ドルと評価され、2022年から2028年までの間、15.1%以上の成長率で伸長すると予想されています。
IoEとIoTの違い
IoEと似たものとして、IoTがあります。IoTとは「Internet of Things:モノのインターネット」の略称。IoTとは、すべてのモノがインターネットに接続されている状態です。IoEとIoTはどちらもインターネットへの接続を意味していますが、対象となる範囲に違いがあります。IoTが対象としているのは物理的なモノだけであるのに対し、IoEはヒト・モノ・コトなどあらゆるものが対象となります。
IoEとIoCの違い
IoCは「Internet of Customers:顧客のインターネット」の略称。IoE やIoTを活用して顧客のために役立てることを表しています。たとえば、顧客にハードウェアを提供する際、IoE やIoTの技術を活用すれば、稼働状況についてのデータを集められます。そして、そのデータを基に効率化や不良箇所の改善などのサービスが提供できます。このようにIoCは、顧客の課題解決を目指しており、導入においては顧客視点が重要となります。
IoEとIoAの違い
IoAとは「Internet of Ability:能力のインターネット」の略称。人間の能力をインターネットに接続することであり、IoEの一種です。例えば、パワードスーツをインターネットに接続して身体の動かし方を学ぶ、人の視界をロボットやドローンに搭載したカメラとつないで拡張する、といったことがIoAの具体例です。IoAの技術はAI(人工知能)と組みあわせると、さらに有効活用できると考えられています。
IoEとIoHの違い
IoHとは、「Intarnet of Human:人のインターネット」の略称。IoHもIoEの一種です。腕時計型やゴーグル型などのウエアラブル端末でバイタルサインと周囲の環境をセンシング、リアルタイムのデータ収集・分析サービスを提供したり、工場の作業員が装着したウエアラブルデバイスから姿勢や脈拍、呼吸回数などのデータを取得、作業効率化や安全管理につなげるサービスなど、既に実用化が進んでいます。
IoEとICTの違い
ICTとは「Information and Communication Technology」の略称。情報伝達技術や情報通信技術を意味します。日本ではITと呼ばれますが、海外ではICTが一般的です。
IoEはすべてのものがインターネットへ接続することを表しているのに対し、ICTは情報を伝達するための技術そのものを指しています。IoEを実現するためには、ICTの活用が必要不可欠です。
IoEが世の中にもたらす変化
IoEは世の中に対して今後どのような変化をもたらすのでしょうか。ここでは、IoEがもたらす変化について解説します。
1. 生活
現時点でも、インターネットを通じた便利なサービスを利用できるようになっています。たとえば、ネットショッピングでユーザーごとにおすすめ商品が表示される仕組みも、IoEのひとつです。
今後は、さらにより便利なサービスが増えていくと予想されます。日用品の買い置きが少なくなったらスマートフォンに通知されたり、自動的に商品が発注されて自宅に届けてもらえたりする可能性もあります。
2. ビジネス
IoEはビジネスにも変化をもたらします。具体的には、顧客の好みや需要を詳しく把握できるようになると、個人にあわせた営業活動がしやすくなり、売上の向上にもつながります。来店した顧客それぞれの特徴や購入履歴を素早く分析し、きめ細やかな接客のために活かすことも可能です。
3. 行政サービス
各自治体でもIoEを取り入れた行政サービスを実現する取り組みが進められています。行政サービスにIoEを導入することで、スペインの事例のように経費削減や効率化が可能です。たとえば、インターネットと電力量の計測機器を接続したスマートメーターや、ゴミの容量をセンサーが感知するゴミ箱の導入などに期待が寄せられています。
4. 医療
医療現場で現状、人手による作業で行われている検査や計測も、IoEによる自動化が期待されています。医療の効率化につながり、よりスムーズな診断や治療が実現するだけでなく、医療従事者の業務負荷の軽減効果も期待されています。さらに、医療に関するビッグデータもIoEを通して効率的な統合管理が実現すれば、蓄積されたデータをさらに有効活用した、医療の高度化が期待されます。
IoEの活用事例
IoEは世界中で活用されています。ここでは、IoEのさまざまな活用事例について解説します。
1. ドイツ
ドイツのハンブルグでは港の周辺道路に複数のセンサーを設置し、管制センターから交通量や交通状況をリアルタイムで把握できるようにしています。あわせて船舶の運航状況もチェックできるようになっているため、瞬時に交通パターンの調整が可能です。また、街なかの駐車場にもセンサーを取り付けており、空き状況の共有のために役立てています。住人はスマートフォンから駐車場の空き状況を確認できるため、車を停める場所を探す手間がかかりません。
2. オーストラリア
オーストラリアでは高速道路管理会社が道路にセンサーとカメラを取り付け、交通事故や渋滞の防止に役立てています。設置したセンサーの数は70,000台以上、カメラの数は 6,500台以上です。道路だけでなくドライバーもネットワークに接続し、情報を共有しています。共有される情報は多岐にわたり、交通事故や渋滞予測の情報に加えて天気による交通への影響に関する情報も配信されています。
3. スペイン
スペインのバルセロナでは、地方公共団体による大規模なスマートシティ・プロジェクトが2000 年から推進されています。具体的には、IoT によりセンサーからデータを集めて一元管理するセンサー・プラットフォームを導入しました。
たとえば、街路灯にセンサーを取り付け、交通量を把握しています。その情報をもとにしてLEDの明るさや消灯時間をコントロールしたところ、光熱費は30%も削減されました。また、スマート廃棄物収集管理により、容器が満杯になっている箇所から優先的に廃棄物を収集する取り組みも実施しています。業務効率化により、経費が10%削減されました。
4. イギリス
ロンドン交通局は、車両センサーや利用者のプリペイドカードなどから収集したビッグデータを統合・分析し、地下鉄・バスや道路などの交通プランニングおよび、緊急時の情報提供にも活用。また、各利用者向けのテーラーメードの情報提供を開始しました。
5. スウェーデン
スウェーデンのストックホルムに本社を置く大手電力会社・エネルギー会社のバッテンフォールは、100万戸にも上るスウェーデン国内の電気、ガスメーターの自動検針化を実現し、エネルギー管理に活用しています。
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まとめ
いかがでしょうか。日本ではあまり耳馴染みのないIoEが、世界では巨大な市場を形成しており、実は身近なサービスとして徐々に広がってきていることがお分かりいただけたのではないでしょうか。IoEはあくまでも概念であり、実態はさまざまなテクノロジーやサービスの組み合わせです。この概念を正しく理解することで、DX推進やデジタルサービスの開発に役立つのではないでしょうか。
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