VPNとUTMの違いは?
VPNとUTMは、それぞれ異なる役割を持つセキュリティ対策です。
VPNは拠点間や、拠点とデバイス間でセキュアな通信を行うのが主な目的であり、UTMはさまざまなセキュリティ対策を統合して総合的な脅威管理を行うことを目指しています。
ここからは、VPNとUTMについてそれぞれの定義や基本的な機能、そしてビジネス環境における役割の違いについて解説します。
VPNとは仮想の専用線のこと
VPN(インターネットVPN)は、公衆ネットワークを利用して仮想の専用線を構築する技術です。この技術により、インターネットを通じて遠隔地から企業の内部ネットワークに安全にアクセスできます。
VPNは、データの暗号化と認証を行うことで、公衆ネットワークであるインターネット上で通信を行ったとしても、その通信の内容の傍受や改ざんを防ぎます。つまり、リモートワークや拠点間での安全な通信が可能になるのです。
UTMとは複数のセキュリティ対策を統合管理するシステム
UTM(Unified Threat Management)は、ファイアウォール、アンチウイルス、侵入検知・防御システム(IDS/IPS)、アンチスパムなど、複数のセキュリティ機能を1つのデバイスやソフトウェアに統合したシステムです。この統合によって、従来個別に管理していた複数のセキュリティ対策を一元管理できます。その結果、全体のセキュリティレベルを大幅に向上させることが可能になります。
UTMの最大のメリットは、セキュリティ管理の簡素化とコスト削減にあります。従来は個別のセキュリティソリューションを導入する必要がありましたが、UTMを採用すれば、そのような非効率なプロセスを排除できます。さらに、UTMはさまざまな脅威に対する包括的な視野を提供するため、最新のサイバー攻撃への対策にも役立ちます。
VPN機能があるUTM機器も存在している
多くのUTM機器には、セキュリティ機能に加えてVPN機能が搭載されています。
この統合によって企業は、リモートアクセスと拠点間接続の両面で効率的かつ安全な通信環境を実現できます。
リモートアクセスVPN
リモートアクセスVPNを備えたUTM機器なら、従業員は自宅や外出先からでも社内ネットワークに安全にアクセスできます。これによりリモートワークが促進され、働き方の柔軟性と生産性が向上します。
また、一元管理できるセキュリティポリシーにより、ITの運用負荷が軽減されるメリットもあります。
拠点間VPN
拠点間VPNを搭載しているUTM機器の場合、離れた場所にある事業所間でもセキュアな通信を可能にします。
VPN機能のあるUTM機器を活用することで、高度なセキュリティを確保しながら、リモートワークと拠点間連携の両立が図れ、働き方改革と業務効率化を促進できます。
UTM機器のVPNを活用するメリット
UTM機器にVPN機能が統合されている場合、別途VPNルーター等の機器を準備する必要なく、セキュアな拠点間通信を実現できます。
また、安全なリモートワーク環境を構築することで、働き方改革と生産性向上を図れます。
ここからは、UTM機器のVPNを活用するメリットについて解説します。
各拠点にUTMを設定する必要がない
拠点間VPNの場合、UTM機器が1つあれば各拠点に個別のセキュリティ機器を用意する必要がありません。インターネットとの通信を本社などのセンター拠点に集約し、本社のUTM機器を通して通信をするスター型のネットワーク構成にすることで、全拠点のセキュリティレベルを一定に保つことが可能になります。
複数の製品を別々に管理する手間が省け、セキュリティ対策のコスト削減とアップデート対応の迅速化も期待できます。
リモートワークの推進に寄与する
VPNを活用することで、従業員が場所を問わずに社内システムへアクセスできるようになるため、データの機密性を守りつつ、リモートワークを実現できます。
これにより働き方の柔軟性が高まり、生産性向上や優秀な人材確保にもつながります。現代のビジネスで競争力を発揮するためには、安全なリモートアクセス環境の構築は不可欠です。
UTM機器のVPNを活用する際の注意点
UTM機器のVPN機能は便利ですが、利用する際には注意点があります。ネットワークの負荷やコストなど、さまざまなポイントについて、適切な準備と知識をもって対処し、課題を軽減し機能を最大限活用しましょう。
UTMの豊富な機能によって通信が遅くなる
多数のセキュリティ機能が統合されているUTMですが、すべての機能をONにした際にUTM機器に過剰な負荷がかかり、通信速度が大きく低下する可能性があります。
この問題を避けるためには、導入前にユーザー数やセッション数を分析し、UTMのスペックが要件を満たすことを確認する必要があります。
ピーク時の負荷にも対応できるよう、余裕を持ったスペックの機器を選定するのが賢明です。
VPNを単体で利用した方がコストが抑えられる
多機能なUTM機器は、高価になりがちな課題も挙げられます。
それに比べると、VPNのみを提供する専用機器やソフトウェアの方が、コスト面で有利な場合があります。
特に小規模企業やスタートアップでニーズがVPNに限られる場合、必ずしもUTM機器の導入が最適解とは限りません。
企業は具体的なセキュリティ課題を洗い出し、各ソリューションの費用対効果を検証する必要があります。状況次第では、単体のVPNソリューションを選び、他の対策は別途検討するのも一案です。
UTMの故障がVPNに影響してしまう
当然ながらUTM機器の故障は、VPNをはじめとするすべての機能停止に直結します。
VPN接続がビジネスの要となっている場合、UTM機器の故障は甚大な影響を及ぼすこととなるでしょう。
このリスクを低減するには、UTM機器の定期メンテナンスと監視、バックアップ体制の整備、サポート確保が不可欠です。適切な対策により、万が一の際もダメージを最小限に食い止められます。
UTM機器のVPN機能を最大限活用するには、上記の注意点を踏まえ、事前の検討とリスク管理が肝心です。企業の実情を加味した、賢明な判断が求められます。
VPN機能のあるUTMを選ぶ際のポイント
UTM機器の選択は、企業のセキュリティ体制を大きく左右します。
特にVPN機能を含むUTMを選択する際には、その性能、サポート体制、そしてコストが企業の要件と予算に合致しているかを慎重に評価する必要があります。
自社に合う性能か
UTM機器を選択する際、最も重要なのは、その性能が自社のネットワーク環境とセキュリティ要件に適合しているかを確認することです。
現在の負荷だけでなく、将来の拡張も見据えた上で、処理速度や同時接続数、VPN性能など仕様を総合的に評価しましょう。また、成長に合わせてアップグレードできるなどの選択肢がある方が望ましいでしょう。
サポート体制が充実しているか
UTMには複数のセキュリティ機能が統合されているため、トラブル発生時の迅速かつ適切なサポート体制が不可欠です。
ベンダーの技術サポートの内容や対応時間、定期的なアップデートサポートなどを細かく確認し、緊急時にも安心できるかどうかを見極める必要があります。
コストが自社の予算に合うか
UTMの導入コストは高くなりがちです。初期投資のみならず、ライセンス更新費用やメンテナンス費用、将来的なアップグレードコストなども含めて総合的にコストを検証する必要があります。
機能とコストのバランスが取れた最適なソリューションを選ぶためには、複数のベンダーを比較検討することが賢明です。
UTM製品の選定では、性能面、サポート面、コスト面の三点を総合的に判断し、企業の要件とニーズを最も的確に満たせる製品を見つける必要があります。細かな検証作業が欠かせません。
UTMとVPNについてよくあるQ&A
UTMとVPNの導入を検討する企業には、さまざまな疑問が生じます。
ここでは頻繁に上がる質問に対する回答について紹介します。
UTMとVPNは企業のセキュリティ強化に不可欠なツールですので、その特徴と利点を理解することが重要です。
UTMの導入は義務付けられていますか?
UTM導入は法的義務ではありませんが、近年サイバー攻撃がますます巧妙化し、個人情報漏洩などの被害が深刻化していることから、企業にとってUTM導入は必須と言えるでしょう。
UTMは複数のセキュリティ機能を統合的に管理できるため、効率的かつ効果的なセキュリティ体制の構築に有効です。
UTMにはVPN以外にどのような機能がありますか?
一般的にUTMには、ファイアウォール、アンチウイルス、アンチスパム、侵入検知・防御システム(IDS/IPS)、コンテンツフィルタリング、DLPなど様々なセキュリティ機能が搭載されています。これらを統合的に管理することで、外部からの攻撃や内部からの情報漏洩を防ぎ、ネットワークの安全性を高めます。
また、ウェブフィルタリングによる利用制限や監視・管理も可能です。
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まとめ
本記事ではVPNとUTMの基本概念、それぞれの特徴、ビジネスにおける役割やメリットを解説しました。また、UTM機器のVPN機能の利点と注意点、選定のポイントについても触れました。
UTMとVPNはセキュリティ強化に不可欠な対策です。適切な導入と管理により、企業はリスクを軽減し、セキュリティを確保できるだけでなく、リモートワークなど柔軟な働き方の実現できます。
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