クラウド CS課コラム 2026.08.28

WorkSpaces PCoIPが終了!DCV移行の進め方と注意点を解説

こんにちは!CS部の岸です。
(組織変更があり、CS部になりました)

さて今回はAmazon WorkSpacesを利用されている方に向けて、
PCoIPプロトコルのサポート終了とDCVへの移行についてお伝えします。

2026年7月31日をもって、PCoIPベースのWorkSpaces Personalは新規受付を停止しました。
そして2027年10月31日には完全に利用できなくなります。

「まだ1年以上あるから大丈夫」と思われるかもしれませんが、
全台のプロトコル切り替え、クライアントソフトの入替、ユーザーへの周知、ゼロクライアント端末の置き換えなど、やるべきことは多岐にわたります。

本コラムでは、タイムラインの整理から移行手順、ハマりどころまでをまとめました。
WorkSpacesを運用中の方は、ぜひ自社環境の対応計画にお役立てください。

何が起きている? ― PCoIP廃止の背景とタイムライン

PCoIPプロトコル終了の経緯

PCoIP(PC over IP)は、Teradici社(現HP)が開発した高性能リモートデスクトップストリーミングプロトコルです。
Amazon WorkSpacesは長らくPCoIPを標準プロトコルとして採用してきましたが、
HPがPCoIPを含む「HP Anyware」製品のEOLを発表したことを受け、AWSもPCoIPベースWorkSpacesのサポート終了を決定しました。
AWSの公式発表では以下のように述べられています。
AWSがPCoIPベースのWorkSpacesのサポートを終了する理由は何ですか?
” PCoIP技術の所有者であるHPは、PCoIPプロトコルを含むHP Anywareのサポート終了を発表しました。ベンダーによる基盤技術のサポートが終了するため、AWSはPCoIPベースのWorkSpaces Personalのサポートを終了し、他のすべてのAmazon WorkSpacesサービスで既に利用されているAWS独自のストリーミングプロトコルであるAmazon DCVに統合します。”

参考:PCoIPベースのWorkSpaces Personalのサポート終了

つまり、AWS側の判断というよりもプロトコルの開発元がサポートを打ち切ることが根本的な理由です。

タイムラインの整理

対応スケジュールは以下のとおりです。

表はスライドできます

固定IPアドレスオプション 逆引き権限委譲設定
日付 イベント
2026年7月31日 PCoIPベースWorkSpaces Personal:新規顧客の受付停止(済み)
WorkSpaces Pools:新規顧客の受付停止(済み)
2027年10月31日 PCoIPベースWorkSpaces Personal:提供終了
2027年12月31日 WorkSpaces Pools:提供終了

 

2027年10月31日以降は、PCoIPプロトコルでWorkSpacesに接続することができなくなります。

 

それまでの間、AWSは以下を継続すると明言しています。
  • PCoIPベースWorkSpacesの通常利用を維持する
  • HPと連携してセキュリティパッチ・重大なバグ修正を適用する
  • AWS Supportでの問い合わせ対応を継続する
  • AWS Health通知で移行進捗の追跡を支援する(残存PCoIP WorkSpaces台数の通知)


AWSが2027年10月31日まで継続して行うこと

 

PCoIPプロトコルへの新機能追加や新しいOS対応は一切行われず、すべての新機能開発などはDCVを対象に実施されます。

WorkSpaces Poolsも同時に終了

PCoIPの終了と同時に、WorkSpaces Pools(旧WorkSpaces Pool)のサービス自体も2027年12月31日に完全終了します。
Poolsを利用中の方は、AWSが推奨するWorkSpaces Applications(旧AppStream 2.0)への移行を別途検討する必要があります。既存のカスタムイメージはWorkSpaces Applicationsにインポートできます。
本コラムでは、PCoIP→DCV移行に焦点を当てて解説します。

DCV(Amazon DCV)とは

概要

Amazon DCVは、AWS自身が開発した高性能リモートデスクトップストリーミングプロトコルです。
もともとHPC(ハイパフォーマンスコンピューティング)分野で利用されていた技術がベースになっており、グラフィックス負荷の高い処理にも対応できる設計です。
PCoIPからDCVに移行することで得られるメリットは以下です。
  • Windows 11やWindows Server 2025など最新OSのサポート
  • 証明書ベース認証(Certificate-based Authentication)やWebAuthnへの対応
  • Web Accessでの性能向上とSAML認証対応
  • ネットワーク帯域の使用効率向上(可変レート圧縮)
  • WorkSpaces全サービスでプロトコルが統一され、管理・トラブルシューティングが簡素化

Amazon DCVへの移行

なお、DCVへの移行による追加料金は発生しません。WorkSpacesの料金体系は変わりません。

PCoIPとDCVのプロトコル比較

運用に影響のある主な違いを整理します。

表はスライドできます

PCoIP と DCV の比較
項目 PCoIP DCV
推奨レイテンシ RTT 100ms以下(375ms超で切断) RTT 250ms以下(250〜400msは利用可能だが性能低下)
使用ポート UDP/TCP 4172、TCP 443 TCP/UDP 4195、TCP 443
Web Access 限定的(EOS予定) フル対応(SAML認証・PWA対応)
対応OS Windows Server 2016/2019/2022、Amazon Linux 2 Windows Server 2019/2022/2025、Windows 10/11、Ubuntu、RHEL、Rocky Linux
ゼロクライアント 対応 非対応(ソフトウェアクライアントが必要)
新機能追加 終了(なし) 継続的に追加中

 

RTTとは、リクエストがネットワーク上を移動し、レスポンスが戻ってくるまでにかかる合計時間を示したもの

ネットワークにおける RTT とは何ですか?

特に注意すべきは使用ポートの違いです。
PCoIPはUDP/TCP 4172を使用しますが、DCVはTCP/UDP 4195を使用します。
移行時はファイアウォールやセキュリティグループの設定変更が必要です。

影響範囲の確認方法

プロトコルを確認する

【マネジメントコンソールでの確認方法】
  1.  Amazon WorkSpacesコンソールを開く
  2. 左メニューから [WorkSpaces > 個人] を選択
  3. WorkSpaces一覧の [プロトコル] 列を確認
    1.  [PCoIP] と表示されているもの → 移行対象
    2.  [WSP] (= DCV)と表示されているもの → 対応不要

 

※[プロトコル]列が表示されていない場合は、歯車アイコンから [プロトコル] を追加してください。

AWS Health通知の活用

AWSはPCoIP WorkSpacesの残存台数をAWS Health Dashboard経由で定期的に通知しています。
この通知を確認すれば、アカウント内で移行が必要なWorkSpacesの台数を把握できます。
AWS Health Dashboardの確認方法:
  1.  AWSマネジメントコンソール右上の鈴アイコン→ [イベントログ] を開く
  2. または直接 https://health.aws.amazon.com/health/home にアクセス
  3. [WorkSpaces] 関連の通知を確認
EventBridgeルールを設定してメールやSlackに転送しておくと、見逃しを防げます。
※MC with AWS をご契約のお客様はメール通知が設定されております

影響の棚卸しチェックリスト

移行計画を立てる前に、以下を整理しましょう。

  • PCoIPで稼働中のWorkSpaces台数(全リージョン)
  • 各WorkSpacesのOS(Windows Server 2016以前の場合はOS移行も必要)
  • ゼロクライアント端末の有無と台数
  • 社内ファイアウォール/プロキシでのポート制限の有無
  • WorkSpaces Poolsの利用有無
  • BYOLライセンスの有無

DCV移行の具体的な進め方

3つの移行パターン

AWSが公式に案内している移行パスは3つあります。

 

◆パターン1:Modify Protocol(プロトコル変更のみ)

    • 対象:サポート対象OSで稼働中のWorkSpaces(Windows Server 2019/2022/2025など)
    • 内容:OSもルートボリュームもそのまま、ストリーミングプロトコルだけをDCVに変更
    • 所要時間:1台あたり最大40分
    • データ:ルートボリューム・ユーザーボリュームとも保持される

◆パターン2:Migrate WorkSpace(バンドル移行)

    • 対象:EOL間近のOSで稼働中のWorkSpaces(Windows Server 2016、Amazon Linux 2など)
    • 内容:新しいDCVバンドルでWorkSpaceを再作成し、ユーザーボリュームを引き継ぐ
    • 所要時間:1台あたり最大1時間
    • データ:ユーザーボリューム(Dドライブ / /home)は保持。ルートボリューム(Cドライブ / /home以外)は新規作成

 

◆パターン3:一括移行(バルク移行)
    • 対象:大量のPCoIP WorkSpacesを効率的に移行したい場合
    • 内容:AWS CLIやAPIを使って複数台のプロトコル変更を一括実行
    • 特徴:停止状態のWorkSpacesも移行対象に含められる、自動ロールバック機能標準搭載、移行前チェックポイントスナップショットの自動作成

 

少数台であればパターン1が推奨です
OSが古い場合はパターン2、台数が多い環境ではパターン3の一括移行で効率的に進めましょう。

パターン1:プロトコル変更

プロトコルのみを変更する場合の手順です。
◆事前準備
  1. DCVで使用するポート(TCP/UDP 4195、TCP 443)がセキュリティグループ・ファイアウォールで許可されていることを確認する
  2. エンドユーザーのPCにDCV対応のWorkSpacesクライアント(Windows/macOS 5.22.1以降)をインストールしておく
  3. パイロット(5台~10台)で事前検証を実施する(台数は環境に合わせて調整)
◆コンソールでの実行手順
  1. Amazon WorkSpacesコンソールを開く
  2. [WorkSpaces] から対象のWorkSpaceを選択
  3. [アクション] → [プロトコルの変更(Modify Protocol)] を選択

  1. 確認して [開始] を選択

  1. [変更] と入力して [開始] を選択

  1. ステータスが  [プロトコルを変更中(Modifying Protocol)] になる(最大40分)

  1. 完了後、プロトコル列が [WSP] に変わったことを確認
自動ロールバック機能で移行中にエラーが発生した場合、自動的にリトライが実行されます。
またリトライも失敗した場合は、移行前に作成されるスナップショットから自動復元され、PCoIPの状態に戻ります。
データ消失のリスクはありません。

パターン2:バンドル移行

OSのアップグレードも同時に行う場合の手順です。
◆事前準備
  1. BYOLの場合:移行先のDCVバンドルを事前に作成しておく
  2. ユーザーに対し、Cドライブ(Windowsの場合)や/home以外(Linuxの場合)にあるデータのバックアップを依頼する
  3. 移行先のバンドルイメージに必要なアプリケーションがインストールされていることを確認する

 

◆コンソールでの実行手順
  1. Amazon WorkSpacesコンソールを開く
  2. 対象のWorkSpaceを選択
  3. [アクション] → [WorkSpaceの移行(Migrate WorkSpace)] を選択
  4. 移行先のDCVバンドルを選択して確認
  5. ステータスが変化し、最大1時間で完了
【注意点】
  • ルートボリューム(Cドライブ)は新規作成されるため、インストール済みアプリは引き継がれない
  • ユーザーボリューム(Dドライブ)は最新のスナップショットから復元される
  • 移行に失敗した場合は、元のWorkSpaceが自動復元される
  • リージョンをまたいだ移行は不可

パターン3:一括移行(バルク移行)

台数が多い環境向けに、AWS CLIやAPIを使った一括移行の方法を説明します。

2026年7月のアップデートで、PCoIP→DCVの一括移行がさらに簡素化されました。

主な改善点は以下です。

  • 停止状態のWorkSpacesも移行対象に含められるようになった
  • 自動ロールバック機能が標準搭載(失敗時は自動でPCoIPに戻る)
  • 移行前チェックポイントスナップショットの自動作成
◆実行の流れ
  1. 移行対象のWorkSpace IDをリストアップする
    1. AWS CLIの describe-workspaces でプロトコル=PCoIPのものを抽出
  2. ネットワーク要件(TCP/UDP 4195)が事前に満たされていることを確認する
  3. AWS CLIの modify-workspace-properties コマンドでプロトコルをDCVに変更する
  4. ステータスを監視し、全台が完了するまで確認する
コマンド例
aws workspaces modify-workspace-properties \
--workspace-id <value> \
--workspace-properties "Protocols=[WSP]"

参考:プロトコルを変更する

 

◆運用上のポイント
  • 一度に大量に実行するとAPIスロットリングが発生する可能性があるため、バッチサイズを調整する(50〜100台/バッチ程度が目安)
  • 業務時間外にバッチ処理で段階的に移行する計画を立てる
  • 失敗した場合は自動ロールバックされるが、失敗理由を確認してから再実行する
  • 移行完了後、describe-workspaces で全台のプロトコルがWSP(DCV)になっていることを最終確認する
台数が少ない環境(〜50台)であればコンソールから手動で十分ですが、100台以上の環境ではこの一括移行の仕組みを活用しましょう。

移行時のハマりどころと対策

ポイント①:ポート・ネットワーク設定の更新漏れ

最もよくある問題が「移行したのに接続できない」というケースです。
原因のほとんどはネットワーク設定の更新漏れです。
PCoIPとDCVでは使用するポートが異なります。

表はスライドできます

PCoIP / DCV 使用ポート比較
プロトコル ポート
PCoIP TCP/UDP 4172、TCP 443
DCV TCP/UDP 4195、TCP 443
◆確認すべき箇所
  • WorkSpacesに紐づくセキュリティグループのアウトバウンドルール
  • 社内ファイアウォール(オンプレ→AWS方向)
  • プロキシサーバーの除外設定
  • クライアントPC側のパーソナルファイアウォール
移行前にDCVのIP範囲とポート要件を確認し、事前にルールを追加しておきましょう。
参考:WorkSpaces PersonalのIPアドレスとポート要件

ポイント②:クライアントソフトの入替漏れ

DCV接続にはDCV対応版のWorkSpacesクライアントアプリケーションが必要です。

 

推奨バージョン:
  • Windows / macOS:バージョン5.22.1以降
  • Linux(Ubuntu 24.04):バージョン2025.1以降
  • Linux(Ubuntu 22.04/20.04):バージョン2025.0以降
  • Web Access:Chrome、Firefox、Edge の最新版(デスクトップOS / Chromebook)
古いクライアントのままだとDCV接続に失敗します。
特に全社展開している環境では、IT資産管理ツール(WSUS、Intune、SCCM等)を使ったクライアントの事前配布を計画しましょう。
ダウンロードページ:https://clients.amazonworkspaces.com/

 

【注意】
Android / iPad / iPhoneのネイティブクライアントはDCV WorkSpacesに対応していません。
モバイル端末からのアクセスが必要な場合は、ブラウザ経由のWeb AccessまたはWorkSpaces PWA(Progressive Web App)を利用してください。

PCoIPではモバイルクライアントで接続できていた方は、DCV移行後の接続方法が変わる点に注意が必要です。

WorkSpacesでサポートされているDCV機能

ポイント③:PCoIPゼロクライアント端末の利用

これが最も対応コストの大きい問題です。

PCoIPゼロクライアント(Teradici製のシンクライアント端末)は、ハードウェアレベルでPCoIPプロトコルに統合されているため、DCVには対応できません。
ゼロクライアント端末を利用中の場合:
  • 2027年10月31日までに端末のリプレースが必要
  • AWS公式ページで認定済みのシンクライアントデバイス一覧が公開されている
  • 大量導入前にPoC(概念実証)でパフォーマンス・周辺機器・セキュリティ要件を検証すること

PCoIPゼロクライアントハードウェアを交換する

 

端末の調達・キッティング・展開にはリードタイムがかかるため、早期の計画策定が重要です。

まとめ

WorkSpaces PCoIPプロトコルの終了について、背景・影響・移行手順をまとめました。

ポイントを整理します。

  • PCoIPは2027年10月31日に完全終了(新規受付は2026年7月31日に停止済み)
  • 原因はHP(Teradici)のPCoIP技術サポート終了
  • 移行先はAWS製のDCVプロトコル(追加費用なし)
  • ほとんどの環境では「Modify Protocol」で簡単に切り替え可能(最大40分/台)
  • OSが古い場合は「Migrate WorkSpace」でOS更新と同時に移行
  • ネットワーク設定(ポート4195)とクライアントソフト更新を忘れずに

「まだ1年あるから大丈夫」ではなく、今の時期に現状把握とパイロットを始めておくのがベストです。
まずはコンソールでPCoIP台数を確認するところから始めてみてください。

AWSについてお困りごとやご相談がある方は、ぜひ弊社クラウドCS部へご相談ください。

今回は以上です。

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