クラウド 元SEママの情シスなりきりAWS奮闘記

Kiroを使った開発内製化事例~5ヶ月間のPoCで得た効果と、新たに見えた課題

2026年8月31日掲載

こんにちは、シイノキです。子どもの夏休みで悩ましい、お昼ご飯どうするか問題ですが、我が家はなぜか息子が料理をするようになりまして、お昼ご飯を担当してくれます。1食作るごとにもらえるおこづかいが目当てとはいえ、相当助かっております。

さて、AWS Summit Japan 2026のレポートも最終回となりますが、今回取り上げるのはソニービズネットワークスと、「Kiro内製化支援パッケージ」を導入いただいた東邦ガス情報システム様が登壇した事例セッションです。

開発ライフサイクルでの生成AI・AIエージェント活用が注目されているとはいえ、いざ自社の開発に導入するとなると「知識がない」「セキュリティ面に不安がある」「組織としてどう展開するか分からない」など課題も多くあります。Kiro内製化支援パッケージでは、必要な初期設定の代行や、使い方の勉強会開催、さらには定着に向けた伴走まで提供し、お客さまのKiro活用をサポートします。
実際にこのパッケージを導入いただいた東邦ガス情報システム様の取り組みや効果、新たに見えた課題など、セッションでお話しされた内容をまとめてご紹介します。

顧客向けWebサイトの運用・保守体制が限界に

東邦ガス情報システム様は、中部地方のガス・エネルギー供給を担う東邦ガス株式会社のIT領域を担うグループ企業として、システム開発から運用保守まで一貫して手掛けています。

今回のセッションに登壇した日沖裕介氏(デジタルソリューション部 デジタル第1グループ)は、会員サイト「Club TOHOGAS」を担当。これは東邦ガスの顧客向けWebサイトで、料金や契約情報を確認できるほか、独自のポイントサービスも提供するなど、顧客と東邦ガスの接点として重要な役割を担っており、日沖氏はこのサイトの開発から維持、保守・運用まで一貫して担当しています。

しかし、その体制は「限界に近付きつつあった」(日沖氏)そうで、課題として大きく2つを挙げていました。
まずは、フレームワークやミドルウェアの保守切れにともなうバージョンアップ対応の負担増加です。新しい機能を開発するわけではないので、反復的な作業にはなるものの、だからといってノーチェックというわけにもいかず、人の対応が発生し、結構な工数がかかってしまいます。

もうひとつは、問い合わせ対応で、エンドユーザーからのトラブル報告やエラーなど、問い合わせがあれば、実際なにが起きているのかログなどを調査して、状況をまとめて回答する必要があります。これも相当な負担になっていたのだとか。

そのなかで、昨年のAWS Summit Japan 2025にてKiroの実践事例を聞き、「自社でも使えるのでは」と、ソニービズネットワークスの伴走支援を活用しながらPoCを実施することを決めました。

5ヶ月間のPoCを経て「ひと通り活用できる状態」まで到達

PoCのテーマはずばり「Kiroをシステム開発のライフサイクル全般に活用できるか」。2025年11月にスタートし、まずはソニービズネットワークスによる勉強会の開催、環境整備を経て、5ヶ月間かけてKiro活用を進めていきました。その結果、「ゼロからはじめて、ひと通り活用できる状態まで到達できた」と言います。「開発だけでなく、運用や保守など全般的にKiroを活用できるとPoCを通して実感しました」とおっしゃっていたので、まさにKiroを開発ライフサイクルの各プロセスで使えるよう落とし込めたということだと思います。

5ヶ月間のPoCロードマップ
2025.11 環境構築と勉強会(基礎知識習得とKiroの利用環境整備をスタート)→2025.12 Kiroの検証開始(ソニービズネットワークス伴走支援のもとKiroを業務利用し検証)→2026.2 コンテキスト調整(精度向上のためのコンテキスト改善を繰り返し)→2026.3 PoC評価(工数削減効果の評価と業務適用への課題を整理)→2026.3末 PoC終了(予定した検証を完了)

専用AIエージェントで、問い合わせ対応時間短縮・対応力向上を実現

セッション内で具体例として紹介されていたのは、「問い合わせ対応の自動化」です。まさに課題で挙げていた、「問い合わせがあったときに、ログ調査などをする負担が大きい」というものですね。

ここではログ調査やプログラム解析をおこなう専用AIエージェントを作成し、実際どこまで調査できるかを検証しました。このときのポイントは、担当者がログを調査するときの手順をまとめたものをコンテキストとして与えたこと。そのうえで、ログ調査するよう指示することで、AWS環境やGitLab環境まで調査してサマリを作成し、不具合の起因となっている可能性のあるプログラムも特定できたそう。

AIエージェントが、問い合わせのログ調査から一次調査の報告書作成まで担うことで、調査時間を削減できただけでなく、AIエージェントを共有することで、チームメンバー全員で同じ対応が可能になったこともメリット。「調査はこの人しかできない、分からない」という属人化を解消し、対応力向上にもつながっています。

問い合わせ対応事例
<担当者>→プロンプトで指示→<カスタムエージェント>→調査・探索→<AWS(Club TOHOGAS環境)・Club TOHOGAS GitLab>わずか数分で、指定した内容でログを調査し、サマリを作成。解析結果より、不具合の起因となっている可能性が高いプログラムを特定・提示できた

Kiro活用が進んだことで、新たに見えた3つの課題

5ヶ月間のPoCを終え、いまや担当するエンジニアたちからは「日々の業務がKiroと共存しており、Kiroなしでは業務が成り立たない」「朝、出社したらKiroを立ち上げるところから仕事がはじまる」という声が出るほどだそう。

とはいえ、活用が進んだことで新たな課題も見えてきました。1つ目はAIと人間の役割分担です。「AIがすごいスピードで成果物を生成するため、人のレビューがボトルネックになりかねません。どこまでレビューするのかなどを定義・ルール化する必要があると考えています」(日沖氏)

2つ目に挙げられたのは環境の最適化ですが、これはExcelの設計書などAI利用に「向いていない」ものを、AIも人間も利用しやすいように切り替えて、体系的に管理する仕組みが必要だとのことでした。

そして3つ目は活用範囲の拡大として、急速に進化し続けるAI技術の情報を、きちんとキャッチアップするために組織的な仕組み化が不可欠だとしていました。確かに「1ヶ月前の情報がもう古いということもある」というなかで、きちんと情報を収集し、自社に活かしていくには、ここの体制も検討が必要になりそうです。

「ソニービズネットワークスの伴走支援があって、ここまでできた」という嬉しいお言葉も、最後に添えておきたいと思います。

東邦ガス情報システム様導入事例も公開中

今回のセッションではいくつか具体例が割愛されていたのですが(どれもなかなか興味深いものだったので、気になっていました)、もしかしたらそれらをお話いただく機会があるかもしれない……ということでした。

ちなみに、東邦ガス情報システム様の取り組みについて、より詳しくまとめた導入事例も公開していますので、ぜひそちらもご覧ください。

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