閉域網とは?特徴とインターネットとの違いを解説
閉域網とは、外部のインターネットと物理的または論理的に分離されたネットワークのことを指します。一般的なインターネット接続と異なり、限られたユーザーのみがアクセスできる専用のネットワーク環境です。
この分離された環境により、外部からの不正アクセスや情報漏洩リスクを大幅に低減することができます。銀行や医療機関など、高度なセキュリティが求められる組織で広く採用されています。
閉域網の主な特徴
閉域網の最も重要な特徴は、外部ネットワークからの隔離性です。物理的な専用回線や論理的な仮想プライベートネットワーク(VPN)技術を使って実現されています。
不特定多数がアクセスできるインターネットと異なり、閉域網はインターネットから分離された専用のネットワークであるため、外部からの攻撃に対する耐性が高く、内部データの保護性能に優れています。
インターネットとの主な違い
インターネットと閉域網の最大の違いは、アクセス可能な範囲にあります。インターネットは世界中の誰もがアクセスできる公開ネットワークであるのに対し、閉域網は特定の組織やユーザーのみがアクセスできる非公開ネットワークです。
そのため、セキュリティレベルも大きく異なります。インターネットは基本的にオープンな環境のため、セキュリティリスクが常に存在します。一方、閉域網は外部から物理的または論理的に分離されているため、外部からの脅威に対する耐性が格段に高いのが特徴です。
また、通信の安定性と品質保証の面でも違いがあります。インターネットは多くのユーザーで帯域を共有するため、混雑時には通信品質が低下しますが、閉域網ではアクセス許可されたユーザのみが利用するためトラフィックの混雑が起こりにくく、安定した通信品質を維持できます。
閉域網が利用される主な目的
閉域網が導入される最大の理由は、セキュリティの確保です。インターネットに接続されていないネットワークは、外部からの侵入やサイバー攻撃のリスクを大幅に減らすことができます。
特に機密情報や個人情報を扱う業界では、情報漏洩防止のための必須の対策として位置づけられていることも多いです。また、通信の安定性や速度が重要な業務システムにおいても、閉域網の採用が進んでいます。
セキュリティ対策としての閉域網
閉域網の最も重要な役割は、外部からの不正アクセスを防ぐセキュリティ対策です。外部ネットワークと物理的に分離されているため、サイバー攻撃の対象となりにくい環境を構築できます。
特に標的型攻撃やランサムウェアなど、インターネットを介した脅威に対して、物理的な分離による防御効果は非常に高いものがあります。重要なシステムやデータを保護するための最も効果的な手段の一つとして評価されています。
一方で、閉域網でも内部からの情報漏洩のリスクは排除しきれません。閉域網は外部からの不正アクセスを防ぐ点では有効ですが、内部のデバイスで不正行為が行われるリスクや、悪意のあるソフトウェアに感染した端末からのアクセスによって情報漏洩が発生するリスクは依然として残ります。そのため、アクセス制御の強化や振る舞い検知など、追加のセキュリティ対策が求められます。
データセンター間通信
閉域網は拠点間で高速で低遅延の安定した通信を実現できるので、データセンター間接続等にも利用されています。特にレガシーな基幹システムや大規模データベースをオンプレミスで運用している企業の多くは、高速・低遅延であることが非常に重要です。
クラウドサービスとの統合
クラウドサービスの普及に伴い、企業はオンプレミス環境(社内ネットワークやデータセンターなど)とクラウド環境(例えば、AWS、Microsoft Azure、Google Cloudなど)を連携させる必要性が増しています。その際に閉域網を使うことで、セキュリティや通信の安定性を確保することができます。
業種別の活用例
金融機関では、オンラインバンキングシステムやクレジットカード処理システムなど、高度なセキュリティが求められる業務に閉域網が使用されています。個人の金融情報を扱うため、厳格なセキュリティ対策が必要とされています。
医療機関では、患者の診療記録や検査結果などの機密性の高い情報を保護するために閉域網が活用されています。電子カルテシステムや医療画像共有システムなど、患者のプライバシー保護が必須の分野で広く採用されています。
公共機関や防災システムでも、重要なインフラを保護するために閉域網が使用されています。災害時の緊急通信や重要な行政サービスなど、安全性と可用性が同時に求められる場面で役立っています。
また、現在は閉域網を活用する業界は広がっており、製造業では、工場内・工場間のクローズドネットワーク環境で、生産システムの管理や機密情報の保護などに利用されています。
IT業界では、社内の情報資産保護、サーバーやネットワーク機器の管理、プロジェクト情報の共有などに活用されています。
閉域網の種類
閉域網の実装方法は大きく分けて物理的な分離と論理的な分離の2種類があります。それぞれの特性や用途に応じて、適切な方法が選択されています。
導入コストやセキュリティレベル、運用の柔軟性などを考慮して、最適な閉域網の構築方法を検討することが重要です。
物理的に分離された閉域網
物理的に分離された閉域網は、文字通りインターネットとは完全に分離された独立したネットワークです。専用の物理回線や機器を使用して構築されるため、最も高いセキュリティレベルを実現できます。
このタイプの閉域網は、特に高度なセキュリティが求められる軍事施設や重要インフラ、研究機関などでも多く採用されています。また身近な例を挙げると、企業の本社と支社間の通信や、データセンター間の接続にも活用されており、安定した専用回線を利用することで高いセキュリティと通信品質を確保できます。完全な物理的隔離によって、外部からの侵入経路が存在しない環境を構築できるのが最大の特徴です。
ただし、構築・運用コストが高く、拡張性にも制限があるため、導入には慎重な検討が必要です。また、遠隔地とのデータ連携にも制約が生じるケースがあります。
論理的に分離された閉域網(VPN技術)
論理的に分離された閉域網は、物理的なインフラを共有しながらも、暗号化や認証技術を用いて論理的に分離されたネットワークです。IP-VPNやMPLS-VPNなどの技術を用いて実現されます。
通信事業者が提供するIP-VPNサービスは、MPLS技術を利用して通信事業者の専用ネットワーク内に仮想的な閉域網を構築します。インターネットを経由せずに通信できるため、セキュリティと通信品質の両方を確保できます。
物理的な閉域網に比べて導入コストが抑えられ、拡張性や柔軟性に優れているのが特徴です。多拠点間の接続や、クラウドサービスとの連携にも適しています。
閉域網のメリット
閉域網は、高度なセキュリティと安定した通信環境という大きな利点を提供します。特に重要なビジネスシステムや機密データを扱う組織にとって、閉域網のメリットは非常に大きいものです。
適切に設計・運用された閉域網は、組織のセキュリティ対策の要となり、安全なビジネス環境の構築に貢献します。
高度なセキュリティの確保
閉域網の最大のメリットは、外部からの不正アクセスのリスクを大幅に低減できる点です。専用線やVPN等を用いて閉域網を構築することで、インターネットとは物理的あるいは論理的に隔離されるため、マルウェアやハッキング、DDoS攻撃などの一般的なサイバー攻撃の影響を受けにくくなります。
内部データの保護性能に優れているため、機密情報や個人情報を安全に取り扱うことが可能です。特にサイバーセキュリティリスクが高まっている現代において、この物理的な分離によるセキュリティ対策の価値は非常に高いものがあります。
また、外部との接点が限定されているため、セキュリティ管理が容易になるという副次的なメリットもあります。保護すべきポイントが明確なため、効率的なセキュリティ対策を実施できます。
通信品質と安定性の向上
閉域網では、一般のインターネット回線とは異なり、外部のネットワークトラフィックの影響を受けにくいため、通信品質が安定しやすい点も特長です。これにより、遅延や通信速度の変動が少ない、高品質な通信環境を実現することが可能です。
特に重要なビジネスシステムや、リアルタイム性が求められるアプリケーションにとって、通信の安定性と品質保証は大きなメリットです。金融取引や医療データのやり取りなど、遅延が許されない業務に最適な環境を提供します。
また、外部のネットワークトラフィックの影響を受けにくいため、大容量データの転送や、多数のユーザーが同時にアクセスする環境でも、パフォーマンスの低下を抑えることができます。
閉域網のデメリット
閉域網はセキュリティ面で大きな利点がある一方で、いくつかの重要な制約やデメリットも存在します。導入を検討する際には、これらのデメリットも十分に考慮する必要があります。
組織の規模やセキュリティ要件、コスト許容度などを総合的に判断し、最適な選択をすることが重要です。
導入・運用コストの高さ
閉域網の最大のデメリットは、導入および維持にかかるコストの高さです。専用線の敷設や専用機器の導入には、一般的なインターネット接続に比べて高額な初期投資が必要となります。
専用回線のコスト負担は、特に中小企業にとっては大きな障壁となることがあります。また、定期的な保守や管理にも継続的なコストがかかるため、長期的な予算計画が必要です。
IP-VPNなどの論理的な閉域網サービスでは、物理的な専用線に比べてコストを抑えられる場合もありますが、それでも一般的なインターネット接続に比べれば高コストとなります。
柔軟性と拡張性の制約
閉域網は、その閉じた性質から、ネットワークの変更や拡張に制約が生じることがあります。新しい拠点の追加や、ネットワーク構成の変更には、物理的な工事や設定変更が必要となり、時間とコストがかかります。
特に専用線を用いて物理的に分離された閉域網では、ネットワーク構成の柔軟な変更が難しいことがあります。ビジネス環境の急速な変化に対応するためには、事前の綿密な計画と設計が必要です。
また、クラウドサービスの利用や、外部パートナーとの連携など、外部リソースとの接続にも制約があり、ビジネスの俊敏性を損なう可能性があります。
セキュリティ上のリスク
閉域網は外部からの不正アクセスを防ぐことに優れていますが、その一方で内部脅威に対しては十分な対策が必要です。内部の従業員や管理者が意図的または偶発的に不正アクセスを行ったり、内部のPCがマルウェアに感染したりした場合、外部と隔離されているために監視が行き届かず、セキュリティ上のリスクが高まります。
さらに、セキュリティパッチやアップデートの適用が遅れると、閉域網内で脆弱性が放置され、悪意のある攻撃者による内部侵入が容易になる可能性があります。そのため、定期的なシステム監査と更新が不可欠です。
閉域網導入時に検討しておくべきポイント
閉域網の導入を検討する際には、組織のセキュリティ要件やビジネスニーズ、予算などを総合的に考慮することが重要です。適切な計画と準備により、効果的な閉域網環境を構築することができます。
導入の目的を明確にし、必要なセキュリティレベルと運用負荷のバランスを考慮した選択が求められます。
自社に適した閉域網の選定方法
閉域網の選定では、まず組織のセキュリティ要件と保護すべき情報資産の重要度を評価することが必要です。取り扱うデータの機密性や、法規制の要件などによって、必要なセキュリティレベルは異なります。
リスク分析に基づく選定を行うことで、過剰投資や不十分な対策を避けることができます。すべてのシステムに同じレベルの閉域網対策が必要とは限らず、重要度に応じた段階的な対策が効果的です。
また、将来の拡張性や、他システムとの連携も考慮した選定が重要です。ビジネスの成長や変化に対応できる柔軟性を持った閉域網構成を検討しましょう。
コスト対効果の最適化
閉域網導入のコスト対効果を最大化するためには、初期投資だけでなく、運用・保守コストも含めた総所有コスト(TCO)の観点から評価することが重要です。セキュリティリスクの低減効果と、投資コストのバランスを考慮しましょう。
段階的な導入アプローチも効果的です。最も重要なシステムから優先的に閉域網化し、徐々に対象を拡大していくことで、コストの分散と効果の検証を同時に行うことができます。
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まとめ
閉域網は、外部のインターネットと分離された安全なネットワーク環境を提供する重要な技術です。高度なセキュリティと安定した通信品質を実現できる一方で、コストや柔軟性の面で制約があることも理解しておく必要があります。
自社のセキュリティ要件やビジネスニーズを総合的に検討し、適切な閉域網の選択と導入計画を立てることが重要です。クラウドサービスとの連携やSD-WANなどの新技術も活用しながら、セキュリティと利便性のバランスが取れた閉域網環境を構築していきましょう。
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