VPNとは?
VPN(インターネットVPN)とは、開かれたネットワークであるインターネット上に仮想の専用線を構築し、通信の傍受や改ざんを防ぎ、セキュアな通信を行う技術です。
これにより通信内容を悪意のある第三者から守り、インターネットを利用して高セキュアな通信を行うことができます。
インターネットVPNと専用線の違い
インターネットVPNと専用線は、どちらも離れた拠点間で安全な通信環境を実現するという点で共通しています。しかし、その構築方法とコストには大きな違いがあります。
専用線は、物理的な通信回線を確保することで高いセキュリティを実現します。ただし、専用線の設置や維持には高いコストがかかります。一方、インターネットVPNは既存のインターネット環境を利用して仮想的な通信回線を構築するため、比較的コストを抑えながら運用できるメリットがあります。
ただし、インターネットVPNはインターネットを介するため、セキュリティを担保するのに専用の機器やソフトウェアが必要になる側面もあります。
インターネットVPNで安全な通信を実現できる仕組み
インターネットVPNは、インターネット上でセキュアな通信を実現するために、トンネリング、カプセル化、暗号化、認証という4つの技術を用います。これらは相互に補完しあいながら、データの秘匿性、完全性、そして送信元と送信先の認証を保証します。
インターネットVPNが安全な通信を実現する仕組みについて、それぞれの技術を詳しく解説します。
トンネリング|クローズドな通信をおこなう
トンネリング技術は、インターネットという公開されたネットワーク上で、仮想の専用線を作り出します。この技術により、VPNはデータパケットを専用の「トンネル」を通じて送信することができます。
トンネリングのメリットは、トンネル内での通信を、悪意のある第三者からの盗聴・改ざんから守ることです。
データに追加のヘッダー情報を付与することで、適切な経路を通り、最終的な受取人のみによる内容の解読が可能になります。
カプセル化|正しい宛先に届ける「カプセル化」
カプセル化は、送信するデータパケットに「カプセル」を被せることとです。
カプセルは郵便の封筒のような働きをし、宛先を記載することで、その宛先へ正しく届ける機能を果たします。
暗号化|機密情報の漏洩を防ぐ
暗号化は、VPN通信の安全性を保証する最も重要な要素の一つです。この技術により、送信される情報は読み取り不可能な形式に変換され、受信者だけが解読する鍵を持つ形となります。
暗号化されたデータは、もし途中で傍受されたとしても、無関係な第三者には内容を理解されることがありません。
暗号化技術の進化は、インターネット上でのデータ交換をより安全にし、企業の重要な情報が外部に漏れるリスクを最小限に抑えます。暗号化をするためには、IPsecやSSLなどの暗号化プロトコルが必要になり、それぞれセキュリティレベルが異なるため、企業は自社に合ったものを選定します。
認証|不正にアクセスさせない
認証は、VPN接続を通じて通信を行う個人またはデバイスが、正当な利用者であることを確認するためのプロセスです。このプロセスにより、第三者が不正に割り込んでデータを盗み取る盗聴などを防ぎます。
VPNを利用するメリット
VPNの導入には、特定の人だけが利用できる排他性や、離れた拠点間での安全なデータ交換が可能になるなど、多くのメリットがあります。これらの特性は、ビジネス環境において重要性が高く、企業のセキュリティ強化と運用効率の向上に寄与します。
VPNを利用することで、拠点間や社内ネットワーク外のデバイスとセキュアな通信を実現し、企業が持つ機密情報を安全に通信することができます。
ここからは、VPNがもたらすこれらの主要なメリットに焦点を当て、その利点と実用例を具体的に解説します。
社外から社内ネットワークにアクセスできる
インターネットVPNは通信を暗号化し、社外ネットワークからの通信の安全性も確保します。
そのため従業員の自宅や、外出先などからも安全に社内の情報資産や基幹システムにアクセスを可能にします。
インターネットVPNを通じて、これらの個人はどこからでも安全に作業を行うことができ、働き方の柔軟性が高まります。これにより、企業は優秀な人材を確保しつつ、情報セキュリティを担保できるのです。
拠点間同士で機密情報の通信ができる
拠点間での安全なデータ通信を可能にするのは、VPNのもう1つの重要なメリットです。
VPNを使用することで、企業は日本国内または世界中にある自社オフィスや工場、データセンターが安全に通信をすることが可能で、ネットワーク内の1箇所に情報資産やシステムを集約することなどもできます。
インターネットVPNを利用するデメリット
インターネットVPNの利用には多くのメリットがありますが、一方で暗号化処理による通信速度の低下、機能に応じて高くなるコスト、情報漏洩のリスクなどのデメリットも存在します。
これらのデメリットは、インターネットVPNの導入と運用において慎重な検討が求められます。企業は自社のニーズに合ったVPNサービスを選択し、適切な設定とセキュリティ対策を行う必要があります。
暗号化の処理に時間がかかる傾向がある
インターネットVPNはデータを暗号化して安全な通信を確保しますが、この暗号化処理には時間がかかることがあり、通信速度が低下する可能性があります。特に、大量のデータを扱う場合や、高度な暗号化用いる場合には、この傾向が表れやすいでしょう。
通信速度の低下は、遠隔地からのビデオ会議や大容量データの転送など、リアルタイム性が求められる業務において、効率を落とす原因となり得ます。
この問題に対処するには、VPNルーターやVPNサービスの選定時に通信速度を考慮することや、必要な場合にはより高速な回線への投資が効果的です。
また、インターネットVPNの設定を最適化することで、通信速度の低下を最小限に抑えることも可能です。
例えば、必要のないプロトコルを無効にしたり、圧縮率を調整したりすることで、パフォーマンスを向上させることができます。
搭載されている機能によっては高コストになりやすい
VPNサービスにはさまざまな機能がありますが、それらの機能が充実するほど、コストも高くなる傾向があります。例えば、高度な暗号化オプション、複数の国にサーバーを持つプロバイダ、専用のカスタマーサポートが含まれるプランなどは、サービス価格も高くなりやすいでしょう。
特に、小規模な企業やスタートアップにとっては、高価なVPNサービスの維持費用が負担となることがあります。コストを抑えるためには、実際の業務に必要な機能に絞り込み、複数のVPNサービスを比較検討することが重要です。また、オープンソースのVPNソリューションを活用することも一つの方法です。
企業は自社のセキュリティ要件とコストのバランスを考慮し、最適なVPNサービスを選択する必要があります。長期的な視点で見ると、適切なVPNサービスへの投資は、情報漏洩による損失を防ぐために必要不可欠です。
情報漏洩の可能性のリスクも考えられる
VPNは、100%の安全性を保証するものではありません。
VPNプロバイダ自体のセキュリティが甘い場合や、利用者側の設定ミスなどにより、情報漏洩のリスクが生じることもあります。
具体的には、VPN接続が不正に解除された場合や、マルウェアに感染しているデバイスを使用してVPNにアクセスした場合などが想定されます。このようなリスクを軽減するためには、信頼できるVPNプロバイダを選択し、常に最新のセキュリティ対策を講じることが重要です。
また、従業員に対するセキュリティ教育を定期的に行い、安全な利用方法を周知することも効果的です。
自社に合うVPNを選ぶときに確認したいポイント
企業がVPNを選択する際には、自社のニーズに合致したものを選ぶことが重要です。VPNの種類の選択からセキュリティの強度まで、慎重に検討すべきポイントがいくつかあります。
最適なVPNサービスを選択するためには、自社のセキュリティ要件、予算、通信速度のニーズなどを総合的に考慮する必要があります。また、VPNプロバイダの信頼性や、カスタマーサポートの質も重要な選択基準となります。このセクションでは、これらの主要な要素について詳しく説明し、企業が適切なVPNを選択するためのガイドラインを提供します。
VPNの種類
表はスライドできます
インターネットVPN | IPsec-VPN | セキュリティプロトコルにIPsecを採用 |
SSL-VPN | セキュリティプロトコルにSSLを採用 | |
IP-VPN | MPLS-VPN | 通信事業者のプライベートIP網を利用し、経路情報の探索にMPLS技術を採用 |
代表的なVPNはインターネットVPNとIP-VPNです。インターネットVPNは、公衆網を使用し、セキュリティプロトコルにIPsecを採用したIPsec-VPNと、SSLを使用したSSL-VPNがあります。これらは安価で導入しやすいメリットがある一方で、公衆網を経由するため、セキュリティの懸念があります。
一方、IP-VPNは、通信事業者の閉域網を利用します。通信事業者が管理する閉域網は悪意ある第三者がアクセスすることができないため、インターネットVPNよりもセキュリティが高く、安定した通信が可能ですが、コストが高くなる傾向があります。
自社のセキュリティ要求と予算を考慮し、適切なVPNタイプを選択することが重要です。機密情報を頻繁にやり取りする企業や、高度なセキュリティが求められる業界では、IP-VPNを選択することが賢明かもしれません。一方、コストを抑えつつ、ある程度のセキュリティを確保したい企業には、インターネットVPNが適しているでしょう。
セキュリティ強度
VPNを選択する際、最も重要な要素の1つがセキュリティの強度です。データの暗号化レベル、認証方法、セキュリティプロトコルの種類など、複数の側面からセキュリティを評価する必要があります。
企業の機密情報を保護するためには、強力な暗号化技術を備え、安全な認証方法を提供するVPNサービスを選ぶことが重要です。
セキュリティ強度を確認する際には、これらの要素を総合的に検討し、自社にとって最適なセキュリティレベルを提供するVPNを選択することが必要です。
VPNサービスを選ぶときに確認したいポイント
VPNサービスを選択する際には、主要なポイントを押さえて検討することが重要です。サービスのパフォーマンスや利便性は、結果として企業の生産性に影響を与える可能性があります。
最適なVPNサービスを選択するためには、自社のニーズを明確に把握し、通信速度や運用にかかる工数、サービスの品質や料金ついて慎重に評価することが求められます。
運用管理にかかる工数
VPNの運用管理は、設定の複雑さやメンテナンスの必要性によって、社内のリソースに負担をかけることがあります。ユーザーフレンドリーなVPNサービスを選ぶことで、運用管理の手間を軽減し、従業員の作業負担を減らすことができます。
また、優れたカスタマーサポートを提供するプロバイダを選択することも、運用上の問題が発生した際の事業影響を最小限に抑えることにつながります。
24時間365日のサポート体制や、多言語対応のサポートを提供するプロバイダは、特にグローバルに事業を展開する企業にとって導入しやすいといえるでしょう。
利用料金
VPNサービスのコストは、提供される機能やサービスレベルによって大きく異なります。予算内で最適なサービスを選択するためには、必要な機能を事前に特定し、複数のプロバイダの料金プランを比較検討することが必要です。
また、長期契約の割引や企業向けのカスタムプランなど、コスト削減の機会を見逃さないようにすることも重要です。自社のニーズに合わせて最適なプランを選択することで、コストを最適化できます。
ただし、価格だけでなく、サービスの品質や信頼性も考慮する必要があります。安価なサービスが必ずしも長期的なコスト削減につながるとは限りません。セキュリティ侵害や接続の中断によるビジネスへの影響を考慮すると、信頼できる高品質のサービスに投資することが賢明な選択となるでしょう。
インターネットVPNを導入する際の手順
インターネットVPNの導入は、セキュリティを強化しつつ、離れた拠点をつないだりリモートワークを推進したりするために重要です。
VPNルーターの準備、設置、そして端末のVPN設定について適切な手順を踏むことで、安全かつ効率的な通信環境を構築することができます。各ステップでは、自社のニーズに合わせて最適な選択を行い、セキュリティと利便性のバランスを取ることが重要です。
要件の定義と計画
まずは、VPN導入の目的を明確にし、どのようなデータを保護する必要があるか、どの程度の帯域幅が必要かなどを評価します。
また、既存のセキュリティポリシーとの整合性を確認し、VPNが満たすべきセキュリティ基準を定めます。
VPNタイプの選択
インターネットVPNの中でもIPsec-VPN、SSL-VPNなど、使用するVPNのタイプを選定します。VPNのタイプは、目的や必要なセキュリティレベルに応じて選択します。
VPNのタイプが決まらなければ、VPNルーターの準備を進めることもできないため注意しましょう。
VPNルーターを準備する
インターネットVPNを導入する最初のステップは、適切なVPNルーターを選択し、準備することです。VPNルーターは、インターネット経由でのデータの暗号化と転送を行うための装置であり、企業のセキュリティ要件に合致したものを選ぶことが重要です。
ルーター選びにおいては、通信速度、同時接続数、サポートするVPNプロトコルなど、必要な機能を綿密に検討する必要があります。また、ルーターのセキュリティ機能も重要な考慮点です。
強力な暗号化アルゴリズム、不正アクセス防止機能、定期的なアップデートなどに対応したルーターを選ぶことで、より高いセキュリティを確保できます。
VPN通信をおこなう拠点にVPNルーターを設置する
VPNルーターを準備した後は、VPN通信を行う各拠点にそのルーターを設置します。
これには、ルーターをインターネット接続が可能な場所に配置し、必要に応じてネットワーク設定を行う作業が含まれます。
設置の際は、セキュリティを考慮して物理的な安全性も確保し、不正アクセスや物理的な損傷から保護する措置を講じることが望ましいです。具体的には、ルーターを施錠可能なラックやキャビネットに収納し、アクセス制御を行うことが推奨されます。
また、ルーターの設置環境も重要です。適切な温度管理や、無停電電源装置(UPS)の使用により、ルーターの安定動作を確保しましょう。
端末のVPN設定をおこなう
VPNルーターの設置が完了したら、次にVPN通信を行う各端末の設定を行います。各端末にVPNクライアントソフトウェアをインストールし、企業のVPNサーバーへの接続設定をします。
この際、強力なパスワードポリシーを適用し、定期的なパスワード変更を義務付けることが重要です。また、可能であれば、二段階認証を導入することで、セキュリティをさらに強化できます。
VPNのリプレイスで通信環境の改善に成功した事例
57年の歴史を持ち、1万点のオフィス什器・イベント用品のレンタル・販売をおこなうエイトレント株式会社様では、以前から抱えていたネットワークインフラの問題を、「NUROアクセス スタンダード」と「NUROセキュリティ UTM typeW」を用いたインターネットVPNへのリプレイスにより解消しました。
Windows Updateやデータバックアップ時の帯域不足、インターネット通信のボトルネック問題を解消しました。また、全拠点をインターネットVPNで結ぶことで、それまでに経験したことがないほどスムーズな通信を実現し、業務効率の向上に直結させています。同時に、通信コストも従来の約2/3に抑え、業務効率の向上とコスト削減の両方を実現しました。
VPNの仕組みに関してよくあるQ&A
インターネットのセキュリティに対する意識が高まる中、VPNの導入にあたってはさまざまな疑問が生じることもあります。
ここからは、VPNの仕組みや導入に伴って生じやすい質問とその回答を紹介します。
VPNはウイルス感染しますか?
VPNはデータを暗号化し、安全な通信を実現するための技術であり、それ自体にウイルスが感染する可能性はほとんどありません。
しかし、VPNを介して接続するデバイスがウイルスに感染している場合、そのデバイスから他のネットワーク内のデバイスへウイルスが拡散する可能性があります。感染したデバイスがVPN経由で社内ネットワークに接続すると、ウイルスが社内の他のデバイスに広がる危険性があるのです。
そのため、VPNを使用する際にも、常にアンチウイルスソフトウェアを最新の状態に保ち、定期的なセキュリティチェックを行うことが重要です。
VPNの導入時に起こりやすい問題はありますか?
VPNを使用する際、トンネリングと暗号化によってデータ量が増加するため、通信速度が低下することがあります。この問題は、特に大容量のデータを扱う際に顕著になります。
通信速度の低下は、業務効率に影響を与える可能性があるため、適切なVPNプロトコルの選択や、帯域幅の管理が重要です。
また、インターネットVPNの場合、センター拠点への通信が集中するため、利用帯域が大幅に増加し、ネットワークのボトルネックが発生することもあります。この問題を解消するためには、複数のVPNサーバーを設置し、負荷を分散させることが有効です。
その他にも、VPNソリューションは設定が複雑なことが多く、特に大規模な環境や複数の拠点を持つ企業では、適切な設定と管理が難しくなる問題もあります。対策として、ユーザーフレンドリーな管理インターフェイスを持つVPNソリューションの選択や、専門知識を持つITスタッフによる管理、外部の専門家による支援などの必要が生じます。
- NUROアクセス 2G
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クラウド時代を支えるインフラのスタンダート回線
- NUROアクセス 10G
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高コスパの帯域確保型上下最大10Gbpsサービス
- マネージドイントラネット マネージドルータ"Cisco series"
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インターネットVPNの新基準、ローカルブレイクアウト、IPv6 IPoEに対応。高可用性と容易な運用管理性を兼ね備えたマネージド型インターネットVPNサービス
- UTM typeW
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多彩なセキュリティ機能を持つ WatchGuard Technologies社のUTM機器が ネットワーク保護の運用管理を一元化
- マネージドサービス typeV
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ネットワークセキュリティ対策を 一括アウトソーシング
- マネージドL2VPN
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高セキュアな拠点間インターネットVPN (レイヤー2VPN)接続を安価に実現
- マネージドL3VPN
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高セキュアな拠点間インターネットVPN (レイヤー3VPN)接続を安価に実現
- マネージドサービス typeY
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Yamahaルーターをレンタルでご提供 ギガ対応VPNルーターの多拠点接続を低価格に
まとめ
VPNは、インターネット上での安全性とプライバシーを確保するための重要なツールです。
その仕組みは、トンネリング、カプセル化、暗号化、認証の技術を組み合わせることで実現されています。
VPNの導入には、セキュリティの強化や拠点間通信の実現など、多くのメリットがありますが、通信速度の低下やコストの増加といったデメリットも考慮する必要があります。
適切なVPNサービスを選択し、導入手順を踏まえることで、安全かつ効率的なネットワーク環境を構築することができるでしょう。
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「多忙な情シス部門がもっとも手放すべき業務とは?」アウトソーシングすべき情シス業務とポイントを解説
【パンフレット概要】
- アウトソーシングすべき業務とは?
- アウトソーシングのメリット
- アウトソーシング先の選定方法は?