クラウド 元SEママの情シスなりきりAWS奮闘記

「Frontier Agents」で“開発はAIにお任せ”は実現するのか?

2026年3月17日掲載

こんにちは、シイノキです。今年、息子が中学を卒業します。「中学の3年間は早いよ」とは聞いていましたが、想像以上に早くて、この間入学したじゃん……という気持ちがいつまで経っても拭えません。「高校はさらに早い」と聞いて、慄いています。

AWS re:Invent 2025において、AIエージェント関連でもうひとつ注目を集めていたのが「Frontier Agents」です。これは新しいクラスのAIエージェントとされていますが、「介入を必要とせずに何時間も動作する、大規模にスケーラブルな自律型AIエージェント」(AWSサイトより引用https://aws.amazon.com/jp/ai/frontier-agents/)と言われても、今ひとつピンときません。前回紹介したAmazon Bedrock AgentCoreは、AIエージェントを開発・運用する際に利用するプラットフォームのようなものでしたが、こちらは、用途ごとに実際に使えるAIエージェントとしてAWSが実装し、提供しているもの……ということかなと理解しました。AWS re:Invent 2025では、Frontier Agentsとして「Kiro Autonomous Agent」「AWS Security Agent」「AWS DevOps Agent」の3つが発表されており、いずれもソフトウェア開発をサポートするものですが、具体的になにができるのでしょうか?概要をご紹介しつつ、なかでも運用管理で効果が期待されるAWS DevOps Agentにフォーカスして詳しく解説します。

開発ライフサイクル全体をカバーする3つの「Frontier Agents」

繰り返しになりますが、前回は「AIエージェントを構築・運用する基盤をAWSで用意したよ」という話だったのに対して、今回は「もう使えるエージェントを用意したよ」という話です。強調されているのは、これまでのようなAIアシスタント(生成AIチャット的なイメージをしてください)ではない、ということ。自律的に、長時間、大規模に動けることが特長であり、「同僚のように動いてくれる」のだとか。
今回発表された3つは、それぞれソフトウェア開発における開発・セキュリティ・運用管理の領域を担います。

Kiro Autonomous Agent

自律的なソフトウェア開発やテスト検証をおこなうAIエージェント。これも“自律的”というところがポイントで、たとえば、指示したテストをただおこなうだけではなく、AIエージェント自身の思考に基づいて、さまざまなパターンを検証してくれます。しかも、人間がおこなったフィードバックを学習し続けてくれて、作業全体でコンテキストを維持できる……つまり、使えば使うほど性能が上がる、とされています。

AWS Security Agent

こちらは、開発のライフサイクル全体でセキュリティに関する部分をカバーするAIエージェントです。ソースコードのセキュリティレビューや、ペネトレーションテスト(※)などに活用できます。

侵入テスト。システムに対して疑似的に攻撃をおこなう(外部から侵入する)ことで、セキュリティ対策がどこまで耐えられるか、脆弱性がないかを検証する手法

AWS DevOps Agent

最後に、デプロイ後の監視と運用、インシデント対応を担うAIエージェントです。リソース全体を理解したうえで、原因や改善策を提示し、根本的な解決を支援します。

なんとなく、「ソフトウェア開発の全体をカバーしたんだな」という印象のラインナップですが、AWSがこれで実現しようとしているのが「AI駆動型開発(AI-Driven Development Life Cycle、AI-DLC)」です。ソフトウェア開発は、すでにかなり生成AIなどの活用が進んでいるイメージがありますが、それでも今まではあくまで「開発者が主導権を持ち、AIが補助する」スタイルでした。人がAIに指示し、AIが回答を生成し、人が確認し、なんならソースコードなどをコピー&ペーストして実行する……といった流れです。AI駆動型開発では、主導権を持つのはAIになります。つまり、最終的なゴールなどを提示したら、あとはAIが提案・推奨するものを人が承認・監視するだけで開発が進んでいきます。人間とAIの役割が根本的に逆転することになります。
ということは!「指示だけして、寝て起きたら、ほとんど完成していて、最終確認と承認するだけで開発が完了する」未来がやってくるかもしれない。さすがにいきなりそこまでは……という気がしますが、AWS自身で実践した結果、30人規模で18カ月かかる想定だったプロジェクトが、6人76日で完了したのだとか。
もちろん、エージェントが暴走しないようにどうチェックするか、品質をどう担保するのか、権限の制御はどうするのかなど懸念もありますが、そのあたりは前回も触れたAmazon Bedrock AgentCore PolicyやAmazon Bedrock AgentCore Evaluationなどをうまく活用するのかなと。こういった開発手法がいよいよ現実のものになりそうです。

AI主導開発と、従来のスタイルの違い
【Frontier Agents(AI主導)】ユーザーの介入なしに、数時間から数日間動作・複数の平行タスクと複数のエージェントインスタンスで作業を分散・開発、セキュリティ、運用に特化したエージェント・永続的メモリ、学習機能など 【従来のAIエージェント(人間手動)】目標達成のために自律的に動作・短期的なタスク、単一タスク、単一インスタンス・メモリ:セッション限定、ルールベースで意思決定・幅広いタスクを遂行し、人間をサポート

運用管理をおこなう「AWS DevOps Agent」は具体的にどう使えるか?

3つのFrontier Agentsのなかでも、ソニービズネットワークスのエンジニアのみなさんが「これはすぐにでも活用できるのでは」と特に注目していたのが、AWS DevOps Agentです。運用管理系のAIエージェントですね。
インシデント対応もカバーするということで、要するにインシデントが発生したら、自動で調査して、根本的な原因を分析し、対策案や再発防止の改善提案まで提示してくれるそう。
今回は、AWS re:Invent 2025で開催されたAWS DevOps Agentのワークショップに参加した方がいたので、その内容をここでも少しご紹介したいと思います。
ワークショップは、下記の流れで意図的にトラブルを発生させ、AWS DevOps Agentで調査するところまでを体験する内容でした。

  1. ① Amazon DynamoDBテーブルのWrite Capacityを小さく設定
  2. ② アプリケーションが通常どおり書き込みを実行しようとする
  3. ③ 処理しきれず障害発生
  4. ④ アプリケーション側でエラーが発生
  5. ⑤ Amazon CloudWatchでエラーを検知・通知

この状態で、AWS DevOps Agentに「なにが起きたのか」と聞くと、20秒ほどで調査結果として原因や対策までまとめた内容が返ってきたのだそう。でてきた対策を確認して、実行すれば完了です。感想を聞いたところ、「障害発生時に人がやっていたことを全部AIエージェントがやってくれる。これがあればAWSの運用をAIが助けてくれる土台が整うと感じた」とのこと。確かにこのAWS DevOps Agentはすぐにでも取り入れやすそうですし、運用面では相当な効果がありそうです。

AWS DevOps Agentの処理の流れ
自動調査/分析(アラート発生直後に根本原因分析を開始)→運用パターン分析(過去のインシデントデータを学習し、傾向を把握)→外部ツール連携(PagerDuty / Slack / GitHub などとの連携)→トポロジ認識(AWSリソース依存関係を理解して調査精度を向上)→改善提案の質重視(多くの推奨はノイズになるため“本当に効く数個”だけを提示)→報告・計画生成(緩和計画と次の改善アクションの提示)※トポロジ認識とは、「システムの部品を“点”ではなく“つながりのある地図”として理解すること」

「AIエージェントにどの業務を任せるか」を考えるべき時代がきたのかも

「AIの業務利用」という観点で、ソフトウェア開発関連はほかと比べて進んでいるのではと思っていましたが、AIエージェントでさらにそれが大きく進んだ印象があります。「AIと一緒に働く」ということが、一気に現実に近づいてきたとも言えそうです。
今回はソフトウェア開発やシステム運用管理の領域でしたが、今後はきっとほかの領域でもAIエージェントが出てくるでしょうし、企業はそれぞれ自社業務でどこをAIエージェントに任せられるのかを本格的に考えていくときがきたのかもしれません。以上、シイノキでした!

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