ネットワーク

IPv4とIPv6の違いは?それぞれの特徴と移行の際の注意点を解説

IPv4とIPv6は、インターネット通信において使用される基本的なプロトコルですが、両者には技術的な仕様から運用面まで多くの違いがあります。特に企業の情報システム部門や総務担当者にとって、これらの違いを理解することは、適切なネットワーク運用や移行計画を立てる上で不可欠です。

本記事では、IPv4とIPv6の基本的な違いから、通信速度の違い、移行方法、注意点まで詳しく解説します。また、IPv4 over IPv6技術についても触れ、企業がスムーズにIPv6環境へ移行するための実践的な情報をお伝えします。

事例の課題やよくいただくご相談を基に、サービスの活用方法をご紹介します。

お電話でのお問い合わせ フリーダイヤル 0120-963-350 9:30〜18:00
(土日祝、年末年始を除く)

IPv4とIPv6の概要

IPv4とIPv6は、インターネットプロトコルの世代が異なり、根本的な設計や仕様に大きな違いがあります。まずは両者の基本的な特徴を理解することが重要です。

IPv4とIPv6それぞれの特徴

IPv4(Internet Protocol version 4)は、1981年に標準化されたインターネットプロトコルです。現在でも広く使用されているプロトコルであり、多くのWebサイトや社内システムで利用されています。

IPv6(Internet Protocol version 6)は、1998年に標準化されたIPv4の後継プロトコルです。IPv4の課題を解決するために開発され、より多くのIPアドレスが提供可能となりました。

IPv4は32ビットアドレス構造を採用しているのに対し、IPv6は128ビットアドレス構造を採用しています。この違いにより、割り当て可能なIPアドレス数に圧倒的な差が生まれています。

アドレスビット数と形式の違い

IPv4とIPv6の最も顕著な違いは、アドレスビット数と表記形式です。これらの違いは、利用可能なIPアドレス数や管理方法に直接影響を与えます。

IPv4アドレス形式は、32ビットを8ビットずつ4つのオクテットに分割し、各オクテットを10進数で表現します。例えば「192.168.1.1」のように、0から255の数値を4つ組み合わせた形式です。

IPv6アドレス形式は、128ビットを16ビットずつ8つのグループに分割し、各グループを16進数で表現します。例えば「2001:0db8:85a3:0000:0000:8a2e:0370:7334」のように、16進数を8つ組み合わせた形式です。

 
項目 IPv4 IPv6
アドレスビット数 32ビット 128ビット
表記形式 10進数(192.168.1.1) 16進数(2001:0db8:85a3::8a2e:0370:7334)
利用可能アドレス数 約43億個 約3.4×10^38個

表はスライドできます

IPアドレス枯渇問題とIPv6の背景

IPv6が開発された主な背景には、IPv4のIPアドレス枯渇問題があります。IPv4では約43億個のIPアドレスしか利用できないため、インターネット利用者の増加に伴い、アドレスの不足が深刻化しました。

特に企業ネットワークでは、プライベートIPアドレスとグローバルIPアドレスを組み合わせて使用し、NAT(ネットワークアドレス変換)/NAPT(IPマスカレード/PTA)技術によってアドレス不足を補ってきました。しかし、この方法では通信の複雑化や性能低下が発生する可能性があります。

IPv6では約340澗個という膨大な数のIPアドレスが利用可能になり、実質的にIPアドレス枯渇問題が解決されます。これにより、全ての機器に固有のグローバルIPアドレスを割り当てることが可能になります。

IPv4とIPv6の技術的な違い

IPv4とIPv6では、パケット構造やセキュリティ機能、通信方式などの技術的な仕様が大きく異なります。これらの違いを理解することで、適切なネットワーク設計や運用が可能になります。

ヘッダーフィールド数と構造の違い

IPv4とIPv6では、パケットのヘッダーフィールド数と構造が大きく異なります。IPv4ヘッダーは12個のフィールドを持ち、可変長のオプションフィールドも含まれています。加えて、チェックサムフィールドが存在するため、ルーターはパケット転送時に再計算が必要です。

IPv6ヘッダーは8個のフィールドのみで構成され、固定長40バイトのシンプルな構造です。オプション情報は拡張ヘッダーとして分離されており、またチェックサムフィールドがないため再計算の処理がなく、基本ヘッダーの処理が高速化されています。

IPv6のシンプルなヘッダー構造により、ルーターでの処理負荷が軽減され、通信効率が向上します。これは特に大規模なネットワークにおいて、パフォーマンス向上につながります。

 
比較項目 IPv4 IPv6
ヘッダーフィールド数 12個 8個
ヘッダー長 可変長(20-60バイト) 固定長(40バイト)
オプション処理 ヘッダー内 拡張ヘッダー

表はスライドできます

通信方式の違い(ユニキャスト・マルチキャスト・エニーキャスト)

IPv4とIPv6では、サポートする通信方式に違いがあります。IPv4では主にユニキャスト、マルチキャスト、ブロードキャストの3つの通信方式が使用されています。

IPv6では、ユニキャスト、マルチキャスト、エニーキャストの3つの通信方式をサポートしています。注目すべきは、IPv6ではブロードキャストが廃止され、代わりにエニーキャストが導入されている点です。

エニーキャストは、同じアドレスを持つ複数のサーバーのうち、最も近いサーバーに自動的に接続する通信方式です。エニーキャストにより、負荷分散や冗長化が容易になり、サービスの可用性向上が期待できます

セキュリティ機能の違い

IPv4とIPv6では、セキュリティ機能の実装方法に大きな違いがあります。IPv4では、IPsec(IP Security)はオプション機能として提供されており、必要に応じて実装します。

一方IPv6では、IPsecが標準仕様として組み込まれており、認証ヘッダー(AH)と暗号化セキュリティペイロード(ESP)が標準でサポートされています。これにより、VPNや拠点間通信などで暗号化や認証の仕組みを構築しやすく、企業ネットワークの安全性向上に寄与します。

ただし、IPv6に移行したからといって、IPv4に比べて自動的にセキュリティが強化されるわけではありません。IPsecの活用や各種設定はあくまでオプションであり、適切な設計と運用を行わなければ、その恩恵を十分に受けることはできません。

また、IPv6では、従来のIPv4環境で一般的だったNAT(Network Address Translation)による内部アドレスの非公開化といった副次的なセキュリティ効果が得られません。そのため、代替手段としてファイアウォールやアクセス制御の強化が必須となります。

IPv6環境で強固なセキュリティ体制を構築するためには、ネットワークの専門知識を持った人材による設計・運用が不可欠です。つまるところ、単なるプロトコルの変更にとどまらず、全体的なセキュリティ戦略の見直しが求められるということです。

IPv4とIPv6の通信方式の違い

IPv4とIPv6の通信速度の違いは、接続方式や経路制御の違いによって大きく影響を受けます。特に企業ネットワークでは、これらの違いを理解した上で最適な接続方式を選択することが重要です。

PPPoE方式とIPoE方式の違い

IPv4とIPv6では、インターネットへの接続方式に違いがあります。IPv4では主にPPPoE(Point-to-Point Protocol over Ethernet)方式が使用されており、ユーザー認証やセッション管理が行われます。

IPv6では、IPoE(IP over Ethernet)方式が標準的に使用されています。IPoE方式では、PPPoE方式でボトルネックとなっていた『ネットワーク終端装置』を経由しない構成のため、混雑しにくく通信速度が安定しやすいというメリットがあります。

IPoE方式の採用により、セッション確立の処理が不要になり、通信遅延の短縮と通信量の向上が期待できます。これは特に大量のデータ通信を行う企業にとって重要な利点です。

NAT/NAPT処理の有無

IPv4環境では、IPアドレス不足を解決するためにNAT(ネットワークアドレス変換)/NAPT(IPマスカレード/PAT)技術が広く使用されています。NATは、プライベートIPアドレスとグローバルIPアドレスを相互変換する仕組みです。

一方、NAPTはNATの一種で、1つのグローバルIPアドレスに対して複数のプライベートIPアドレスを、ポート番号を使って同時に割り当てる技術です。NAPTは「IPマスカレード」や「PAT(Port Address Translation)」とも呼ばれ、実際のインターネット接続ではこちらが一般的に利用されています。

NAT/NAPT処理では、パケットの送受信ごとにアドレス変換テーブルの検索と更新が必要になり、これが通信速度に影響を与える可能性があります。特に大量の同時接続が発生する環境では、NAT/NAPT処理がボトルネックになる場合があります。

IPv6環境では、十分な数のIPアドレスが利用可能なため、NAT/NAPTが不要になります。NAT/NAPT処理の省略により、通信の直接性が向上し、レイテンシの削減とスループットの改善が期待できます

ただし、セキュリティ観点ではNAT/NAPTによる非公開化の副次的効果が失われるため、代わりにファイアウォール等の適切なアクセス制御が必要です。

実際の通信速度の比較

実際の通信速度は、回線品質やネットワーク設備の対応状況によって大きく左右されます。一般的に、IPv6とIPoE方式を組み合わせることで理論的には高速通信が可能とされています。

IPv6では、ヘッダー処理の簡素化やNAT/NAPT処理の省略により、通信効率が向上します。また、IPoE方式の採用により、接続時の認証処理が軽減され、通信開始までの時間も短縮されます。

ただし、実際の速度向上は、プロバイダーの設備やネットワーク経路の混雑状況によって変化します。IPv6への移行を検討する際は、現在の通信環境を詳しく分析し、期待できる速度向上効果を事前に評価することが重要です

 
項目 IPv4 IPv6
接続方式 PPPoE方式 IPoE方式
NAT/NAPT処理 必要 不要
ヘッダー処理 複雑 簡素
通信効率 標準 向上

表はスライドできます

IPv4からIPv6への移行方法

IPv4からIPv6への移行は、企業にとって重要な課題です。移行には複数の方法があり、それぞれに特徴とメリット・デメリットがあります。企業の規模や要件に応じて、適切な移行方法を選択することが成功の鍵となります。

デュアルスタック方式

デュアルスタック方式は、IPv4とIPv6の両方のプロトコルを同時に動作させる移行方法です。ネットワーク機器やサーバーがIPv4とIPv6の両方のアドレスを持ち、通信相手に応じて適切なプロトコルを選択します。

この方式の利点は、既存のIPv4環境を維持しながら、段階的にIPv6環境を構築できることです。急激な変更が不要なため、業務への影響を最小限に抑えながら移行を進められます。

デュアルスタック方式では、IPv4とIPv6の両方のメンテナンスが必要になるため、管理負荷が増加する点に注意が必要です。また、IPアドレスの設定や経路制御の複雑化も考慮する必要があります。

トンネリング技術

トンネリング技術(カプセル化)は、IPv6パケットをIPv4パケットの中に格納して送信する技術です。IPv4ネットワークを経由してIPv6通信を行うことができるため、IPv4インフラを活用しながらIPv6サービスを提供できます。

代表的なトンネリング技術には、6to4、6in4、Teredo、ISATAPなどがあります。これらの技術により、IPv4環境を維持しながら、IPv6サービスへの接続が可能になります。

トンネリング技術は一時的な移行手段として有効ですが、パケットのカプセル化により通信オーバーヘッドが発生し、性能低下の可能性があります。長期的には、ネイティブIPv6環境への移行が推奨されます。

IPv4 over IPv6

IPv4 over IPv6は、IPv6ネットワーク上でIPv4通信を実現する技術です。この技術により、IPv6環境への移行を進めながら、既存のIPv4サービスとの互換性を維持できます。

具体的な技術としては、DS-Lite(Dual-Stack Lite)やMAP-E(Mapping of Address and Port using Encapsulation)などがあります。これらの技術により、IPv6インフラを活用しながら、IPv4サービスへのアクセスが可能になります。

IPv4 over IPv6の導入により、プロバイダー側でのIPv4アドレス管理が効率化され、企業ユーザーも高速なIPv6接続の恩恵を受けながら、既存のIPv4サービスを継続利用できます。この技術は、IPv6移行期における現実的な解決策として、多くの企業で採用されています

IPv6移行の際の注意点

IPv6への移行は多くの利点をもたらしますが、同時に様々な課題や注意点も存在します。特に企業環境では、業務継続性を確保しながら移行を進める必要があるため、事前の十分な検討と計画が重要です。

既存機器との互換性の問題

IPv6移行における最大の課題の一つは、既存機器との互換性問題です。古いネットワーク機器やサーバー、アプリケーションがIPv6に対応していない場合、移行時に通信障害が発生する可能性があります。

特に、産業用機器や組み込みシステムなど、長期間運用されている機器では、IPv6サポートが限定的である場合が多くあります。また、セキュリティ機器やファイアウォールでも、IPv6に対応していない製品が存在します。

移行前に、全ての機器やアプリケーションのIPv6対応状況を詳しく調査し、必要に応じて機器の更新や設定変更を計画することが重要です。この調査には時間がかかるため、移行スケジュールに十分な余裕を持たせる必要があります。

DNSサポートの違い

IPv4とIPv6では、DNSレコードの種類が異なります。IPv4では主にAレコードが使用されますが、IPv6ではAAAAレコード(クワッドエーレコード)が使用されます。

既存のDNSサーバーがAAAAレコードをサポートしていない場合、IPv6アドレスの名前解決ができません。また、DNSサーバー自体がIPv6通信に対応していない場合もあります。

企業内でDNSサーバーを運用している場合は、IPv6対応のためのアップデートや設定変更が必要になります。DNS設定の変更は、全社的な通信に影響を与える可能性があるため、慎重な計画と十分なテストが必要です

運用面の課題

IPv6移行時には、技術的な課題以外にも、運用面での様々な課題が発生する可能性があります。まず、システム管理者やネットワーク担当者のIPv6に関する知識習得が必要です。

IPv6では、アドレス体系や設定方法がIPv4と大きく異なるため、従来の運用手順やトラブルシューティング方法の見直しが必要になります。また、ネットワーク監視システムやログ解析ツールも、IPv6に対応したものに更新する必要があります。

セキュリティ面では、IPv6環境に対応したセキュリティポリシーの策定と、セキュリティ機器の設定変更が必要です。IPv6移行を成功させるためには、技術的な準備だけでなく、人材育成と運用体制の整備が不可欠です

 
課題カテゴリ 主な問題点 対策
機器対応 古い機器のIPv6非対応 機器更新計画の策定
DNS対応 AAAAレコード未対応 DNSサーバーの更新
運用体制 担当者の知識不足 教育・研修の実施
セキュリティ IPv6対応の遅れ セキュリティポリシーの見直し

表はスライドできます

NUROアクセス 2G

クラウド時代を支えるインフラのスタンダート回線

NUROアクセス 10G

高コスパの帯域確保型上下最大10Gbpsサービス

まとめ

IPv4とIPv6の違いは、アドレス体系、セキュリティ機能、通信効率など多岐にわたります。IPv6は、IPv4の課題を解決し、将来のインターネット環境に対応するための重要な技術です。

企業がIPv6移行を検討する際は、既存システムとの互換性、移行方法の選択、運用体制の整備など、様々な要素を総合的に検討する必要があります。特に、デュアルスタック方式やIPv4 over IPv6技術を活用することで、段階的で安全な移行が可能になります。

IPv6移行は一朝一夕で完了するものではありませんが、適切な計画と準備により、企業ネットワークの性能向上とセキュリティ強化を実現できます。今後のネットワーク環境を見据えて、IPv6移行の検討を始めることをお勧めします。

お役立ち資料をダウンロード

NUROアクセスパンフレット

「NUROアクセスパンフレット」のダウンロードをご希望のお客様は、
以下必要事項をご入力ください。

このコラムに関連する製品

関連コラム

このコラムに関連する
導入事例

このコラムに関連する
セミナー・イベント

このコラムに関連する
セミナーアーカイブ動画

このコラムに関連する
キャンペーン

お知り合いの他社ご担当者様をご紹介ください!NUROアクセス紹介キャンペーン

お知り合いの他社ご担当者様をご紹介ください! 対象サービスをご契約いただけた場合、ご紹介者様にソニーポイントをプレゼント!

詳しく見る

オフィス移転 & オフィス新設支援キャンペーン

「オフィス移転」または「オフィス新設」に伴うご導入をご検討中のお客様に向けて、基本工事費が50%OFFとなるお得なキャンペーンを実施中!

詳しく見る

【セミナーアーカイブ動画】
オフィス移転の“後悔事例”に学ぶ!実は重要な「見えない」落とし穴とは?

SHARE
シェアシェア ポストポスト
【セミナーアーカイブ動画】<br>オフィス移転の“後悔事例”に学ぶ!実は重要な「見えない」落とし穴とは?
SHARE
ポスト シェア