AI 元SEママの情シスなりきりAWS奮闘記

生成AIユースケース●効果が出る活用法を考える

2024年7月31日掲載

こんにちは。シイノキです。前回のコラムから気づけば結構な時間が経っていました。私事ですが、この間に引っ越しをしまして、いろいろな手続きの面倒さにゲンナリしたところです。なんかこう、もうちょっと楽になるんじゃなかったんでしたっけ……?

さて、今年も6月20日~21日の2日間、幕張メッセでAWS Summit Tokyo 2024が開催されました。初日に朝から頑張った結果、基調講演の指定席券と無料のお弁当引換券、そしてクッションを無事入手。カツサンド、美味しくいただきましたー!!

そして、今年注目のテーマはやっぱり生成AI。いろいろとセッションを受けたので、そこで学んだことをベースに、コラムとしてまとめていきたいと思います。

初回は、生成AIを企業で活用するなら、どう使えるのか……といったところから。汎用的な生成AIのチャットアプリで業務効率化する方法なども多く見かけますが、そこから一歩踏み込んで、自社データと組み合わせて活用することで、自社のビジネスや業務によりフィットした使い方ができて、もっと大きな効果も期待できるはず。生成AIの用途としては、テキスト生成・要約・翻訳・画像生成・コード生成……といろいろな分野がありますが、今回AWS Summitセッションで聞いたユースケースのなかから、おもしろそうだなと思ったものをシイノキの独断と偏見で5つ選んで紹介したいと思います!

ユースケース1:社内用問い合わせチャットボット

まずは、生成AIで作るチャットボットですが、ここでポイントになるのは社内のデータを参照させて、社内ルールや規定、自社の商材などを踏まえた回答をさせよう、というところ。一般的な生成AIでは、当然なにを聞いても一般論しか返ってきません。たとえば「育児休業はいつまで取得できますか?」という質問があったとして、社内で問い合わせするときは「一般的に1年です」みたいな回答ではなく、自社の規定を踏まえて何年取れるか聞きたいわけですよね。

そこで、鍵となるのが、RAG(検索拡張生成、Retrieval-Augmented Generation)。問い合わせに対してまずは該当する文書などを検索、それをベースに生成AIに回答を生成させる手法です。これにより、上記のような質問にも、「男性は6か月、ただし、主となり育児するケースでは最大1年」など社内規定を踏まえた回答が可能になります。

もちろん社内規定の問い合わせへの対応だけでなく、「作業マニュアルなどを参照させ、パートスタッフが作業すべき内容を聞くためのチャットボット」なども作れます。

生成AIと自社データを組み合わせて活用する際のファーストステップとして検討する企業も増えており、ソニービズネットワークスでも社内FAQボット構築サービスをメニュー化しております。詳しくはこちらをご覧ください!

ユースケース2:日報分析補助

続いては、ざっくりいうと「要約」系のユースケースです。業務の状況を把握するために日報を作成している、という企業は多く、日報をリーダーや上長が確認してアドバイスしたり、次の手を考えたりしていく、というのはよくある形でしょう。ただ、日報には企業のビジネスとしてもかなり貴重な情報が集まっているはずで、全体の日報から顧客のトレンドが分かったりしたら、かなり役立つことは間違いない。が!「全社分の日報に目を通し、共通点などを分析する」となると、現実的ではなかった……というところで、生成AIの出番です。日報のデータを生成AIに連携して、重要なキーワードを抽出したり、全体的な傾向を要約させたりできるということ。

人がひとつずつやるのは無理があることを生成AIにやってもらうことで、これまでにない発見・気づきにつながる。もしかしたら、優秀な人ならパパっと日報を見ただけで、傾向やトレンドに気づけるかもしれないけれども、そのあたりをデータをもとに抽出できるというのはなかなかおもしろそうだなと感じました。

ユースケース3:ヘルプデスク会話記録作成

もうひとつ要約系としては、ヘルプデスクやコンタクトセンターの会話記録の要約があります。こちらはもう少し分かりやすく、音声認識と組み合わせて会話内容をテキスト化し、それを生成AIで要約する、という流れです。

「通話後に内容を記録に残す」手間を省けるうえ、記録の品質も均一化できる、とメリットも多いもの。

音声のテキスト化について、私自身もいろいろ使ってはいますが、「1字1句間違いなくテキスト化できるか」というとそんなことはなく、品質的にどうなの?と思うところはあったりしますが、それをさらに要約する、となると、割といけそう、ということなのかもしれません。実際に、「9割は基準を満たすレベルのものが生成された」という事例もあるようで、最終的には人が内容をチェックするとしても、ある程度の下書きまでやってくれるところには価値がありそうです。

ユースケース4:テキスト to SQLでデータ検索を支援

続いてはここまでとは違ってちょっと高度な使い方です。

DWHなどにデータはたくさん溜まっている、「データドリブン」もずっと言われているし活用したい、けれどもそのたくさんのデータから必要な情報を取ってくるハードルがかなり高い、というのはなんとなくよく言われている気がします。

たとえば「自社ECサイトによく訪問しているユーザが、気にしている商品はどれ?」とか「このキーワードで検索したユーザは、どれくらい購入に至っているか?」とか、きっとどこかにデータはあるのに、「SQL文が分からなければ検索はできない」「毎回情シスに頼まなければデータを取得できない」とか、データ取得の部分が課題になっていることはあるはず。

そこで、「テキスト to SQL」を生成AIにやらせて、データを検索しやすくしよう、という活用法です。聞いた事例では、最初からSQL文を生成させるのではなく、まず欲しいデータがありそうなテーブルを検索・特定し(ここも生成AIで支援する)、そこからSQLを生成させることでかなりの精度が出る、ということのようでした。

生成AIはコード生成もできるとはいえ、それはエンジニアサイドだよなぁ、となんとなく思っていましたが、こういうデータ活用の橋渡し的にも使えるんだ、と気づいたユースケースです。

ユースケース5:セキュリティ通知

最後は、生成AIをセキュリティ対策にも活かしましょう、という話です。

AWSではセキュリティ系サービスもいろいろと提供されていますが、アラート通知がJSONで届いたりします。そのまま人が読み解くのはちょっと厳しいですよね。というわけで、生成AIを使って自然言語に変えてもらいましょう!と。

ちなみにこちら、Amazon GuardDutyのアラート通知を生成AI(Amazon Bedrock)で分かりやすく変えるところは、ソニービズネットワークスでサービス化しております!こちらも気になる方はぜひお問い合わせください。

効果を出すためのポイント

ここまで5つのユースケースを紹介してきましたが、どちらかというと構築するのがすごく大変、というよりは、「自社業務のどこで使えるのか気づくところが大事」と感じています。

生成AIを活用したい、使いはじめよう!という企業はおそらく今すごく増えていると思うのですが、ちょっと試して、なんとなく効果が出たのか出ないのか分からないままフェイドアウトしてしまう……という未来もうっすらと見える気がします。そのなかで、それでもちゃんと効果を出すにはどうすれば?というところで、AWS Summitのセッションでも解説されていたポイントは「ユーザ(顧客や実際に使う社員)起点で考えること」「小規模からスタートすること」「頻繁に実験を繰り返すこと」の3つ。当たり前じゃん、と言いたい気持ちもありますが、逆に言えばそれだけ大切ということですよね。「生成AIでできそうなこと」ベースではなく、あくまで社内で困っていること、大変なことを基準に、それを解決する方法として生成AIを活用する、と考える。スモールスタートについても、AWSならAmazon Bedrockをはじめ、生成AIで必要になるサービスも一式揃っているので、少人数・短期間で実装できるのだとか。どんどん進化を続けている生成AI、どう使えばいいのか試行錯誤ははじまっているなか、ここに早めに乗っかっておくに越したことはないのかもしれません。

さて、次回以降、生成AI活用の基本的なところも含めて、引き続き解説していきたいと思います。以上、シイノキでした!

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