クラウド AI 元SEママの情シスなりきりAWS奮闘記

ユースケース●AWSの生成系AI「Amazon Bedrock」はなにに使う?

2023年11月30日掲載

こんにちは、シイノキです。急に寒くなり、子どもの秋冬モノを引っ張り出したら、ことごとくサイズアウトしていて、あわてていろいろ買う羽目になりました。ひと通り買い終わったと思ったのに、「やっぱりこれも足りない」が次々出てきて、出費が止まりません。まぁ、自分の服も買ってるんですけど。

さて、前回はAWSの生成系AIサービス「Amazon Bedrock」について基本を学びました。生成系AIで用いる基盤モデルが複数用意されていて、APIで簡単に使えるサービスだ、というところまで理解したところで、今回は「なんだか便利そうなのは分かったけれど、実際どう使うの?」問題です。要するにユースケースですね。使い方は無限大!すべてはあなたのアイデア次第♪ということは重々承知ですが、せめてヒントがほしい。というわけで、「AWS AI Week for Developers」のビギナー向けセッションで紹介されていたユースケースをベースに、初心者シイノキが自分の理解に基づいて、分かりやすくシンプルにまとめてみました。本家のセッションも動画が公開されているようですので、もうちょっと詳しく!という方はそちらを参照ください。
「AWS AI Week for Developers(https://pages.awscloud.com/AIW4Dev.html

生成系AIの使い道は、大きく2パターン

そもそも生成系AIのユースケースって、どんなものがあるのでしょうか?なんとなく、新しく“コンテンツ”を作りだすもの、という印象が強いですが、ユースケースは大きく「生成系AIによって実現可能になった新しいユースケース」と「既存の機械学習などと生成系AIを組み合わせて、改善につなげるユースケース」の2パターンに分けられます。

画像などのコンテンツ生成は、前者の「生成系AIによる新しいユースケース」ですね。そしてもう1つの既存AIと組み合わせていくパターンとしては、たとえば「従来のAIで録画・録音データから文字起こししたものを、生成系AIで要約する」ものや、逆に「生成系AIが作成した画像に危険なものが入っていないか、Amazon Rekognitionで判断する」といったケースなどが挙げられます。

今回は、既存AIとの組み合わせパターンにフォーカスして、3つのユースケースを紹介します。

<ユースケース 1>精度の高い「会話型検索」を実現する

必要な情報を探すのに、検索キーワードを入れて、該当する資料やサイトが提示される……のではなくて、「自然文で質問すると、文章で回答が返ってくる」会話型の検索を生成系AIで実現できる、ということですね。

前回のコラムの最後でも取り上げましたが、一般的な生成系AIでは情報の正確性が課題で、しかも返してくれるのはあくまでも「一般論」にすぎません。社内ルールや自社製品にあわせた回答をしてくれるわけではないので、「社内ヘルプデスクの代わり」みたいなものとしてそのまま使う……とはいかないわけです。

この問題をどう解決するか、というところですが、Amazon Bedrockでは、たとえば、社内規定や自社製品の情報などをまとめているストレージなどを、自社のデータソースとして定義して、それを生成系AIに学習させることで、自社に特化した回答ができるようにチューニングすることもできますし、検索エンジンで取得したコンテンツを生成系AIで要約することも可能です。キーワードで検索して、該当する情報の記載があるPDFなどを提示して終わりではなくて、よりピンポイントに必要な情報が返ってくるよ、ということですね。「出張費の上限っていくらまで?」って質問したときに、経費精算規定のPDFファイルだけがポンって結果に出てくるのではなく、そのなかから「こういう条件だと●●円、こういう条件だと●●円、上限を超える場合は事前承認が必要です」のように、必要な情報をまとめて回答してくれる、というイメージかなと理解しています。

ちなみに、「このファイルに書いてありましたよ」的な元のコンテンツ(データソース、上の例だと経費精算規定のPDFファイル)をあわせて提示することもできるので、出典元の確認も簡単です。

もちろん社内のルールに関する問い合わせだけではなくて、「製品Aの競合他社を教えてください」のような質問に回答させたり、顧客向けに提供して「サポートのSLAはどういったものですか?」「新製品のリリースについて教えてください」などの質問に対応させたり、といったことも可能です。いずれも、キーワードを並べて検索するのではなく、自然文での質問に回答できるところがポイント。自社が持っているデータと用途がうまくマッチすれば、割と導入しやすいのかなという印象です。

<ユースケース 2>コンタクトセンター業務を効率化する

続いては少し業種を絞って、コンタクトセンターでのユースケースです。以前にコラムでも取り上げましたが、AWSでもコンタクトセンター向けサービス「Amazon Connect」を提供しており、これに既存のAIサービスと連携することで、通話内容をリアルタイムで文字起こしするといったことはできました。

そして、ここに生成系AIを組み合わせると、文字起こししたものを要約することが可能に!通話が終わった段階で、通話内容をまとめたレポートまでできちゃう、というイメージです。さらに、通話内容を受けて「次やるべきタスク」をまとめたり、お客さまに送るメールの文章を考えてくれたりも。これがうまくいけば、かなり便利そうです。

<ユースケース 3>個人に最適化したマーケティング

最後は少し「生成系AIによる新しいユースケース」に近いかもしれません。マーケティングの領域でも「One to One マーケティング」など個人の嗜好や傾向にあわせて訴求する方法が注目されています。AWSでいうと「Amazon Personalize」がありまして、ECサイトなどで、個人ごとの嗜好や購買履歴に基づいて“おすすめ商品”を出せるものです。これと生成系AIを組み合わせることで、「その人にあった商品説明」を入れたり、「より訴求力の高い画像」を作って入れたりができるようになります。あれですかね、その人が前に買った商品の情報などをもとにして「前に買ったこの洋服とあわせると、こういうシーンでこういう風に使えて素敵ですよ」的な内容をいい感じの文章にしてくれたり、といった感じでしょうか。これまでは「この商品がお勧めです」と出てくるのがせいぜいですし、できたところで商品ごとのお勧めコピーを書くところまでで、「その商品を、その人にお勧めするコピー」を人力で書くのは無理がありました。そこを生成系AIでうまいことできるなら、それはすごそう。

正直、Amazon Personalizeをしっかり使いこなすのは、結構ハードルが高そうだなーとは思っており、ここまで全部作り込んで仕組み化するのは難しいのでは……とも思うのですが、個人ごとに最適化した商品説明や画像を一気に生成するパーツとしては、うまく使えそうに感じました。

生成系AIを活用するためにも、小さいところから検討を

今回は3つのユースケースをまとめましたが、つまりは「すでにあるテキストをどうにかする」「すでにあるデータをもとに画像や文章を作る」のどちらかがベースになるんだなと理解しました。とはいえ、さあ!どうぞ!と言われてすぐにできそうな気はしませんが、会話型検索あたりは最初に手を付けるのによさそうなのではないでしょうか。

そして、この「生成系AIで」と言っている領域を、うまく実装するために便利なのが、「Amazon Bedrock」ということですね。フルマネージド型で、導入のハードルが低いので、まず検証してみるのにも便利、ということです。

生成系AIはどう使いこなしていくかがこれから問われるジャンルのように思っています。自社に使えるのか、使いものになるのか、今のうちに小さいところから試しておくのもよいのかもしれません。以上、シイノキでした!

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