クラウド 元SEママの情シスなりきりAWS奮闘記

AWSのAI・機械学習ウェビナーでソニーの講演を聞いたら、画像判別「ELFE」がすごかった!

AWSのAI・機械学習ウェビナーでソニーの講演を聞いたら、画像判別「ELFE」がすごかった!
2022年5月2日掲載

こんにちは。シイノキです。「ひとりで子ども2人を連れて出かけても、前ほど大変じゃない」ということに最近気づきました。小6・小2なので、乳児時代と比べちゃいけないのはそうなのですが、よくぞここまで大きくなって……とついしみじみしたくなります。

さて、前回に続き「機械学習を勉強しよう」シリーズをお届けします。今度は「デジタル変革2022 AI・機械学習の実装と成功例」というAWSのオンラインセミナーを視聴しました。こちらはソニービズネットワークスも登壇し、AIによる画像判別ソリューション「ELFE」について、具体的にどう使えるのか、ソニーグループの工場での実例を交えた解説があり、実際工場でどんな課題があり、どう使って、どんな効果があったのか……とかなり興味深い話が聞けました。AWSのセッションとあわせて、レポートしたいと思います。

機械学習プロジェクト、事前の検討から運用までで注意すべきポイント

まずAWSによるセッション「AI・機械学習のビジネス活用を成功させる5つのポイント」では、事前の検討から、機械学習プロジェクトの進め方、導入後の運用まで、一連の流れにおいて注意すべきポイントの解説がありました。まずはその5つのポイントをざっと紹介していきます。

  1. ビジネス価値の特定と評価プランの策定
    機械学習プロジェクトを進めるには、まず「正しいビジネス課題の選択や優先順位付け」が重要という話です。「機械学習においてよく見られるPoCから先に進まない『PoCの壁』を超えるためにも、最初にビジネス観点でのROIやKPIを設定することが重要になる」とのこと。PoCでは精度や性能に注目しがちですが、ビジネス観点での検証もあわせておこなうべき、というのは「なるほど」と思える気づきでした。
  2. クラウド上でのデータ活用手段の選択ポイント
    機械学習は低コストでスピーディな検証を繰り返して、社内での活用を進めるのがお勧め、そしてそれをやるならやっぱりクラウド、ということで、クラウドで機械学習をするときの選び方です。
    ポイントは「最初から完璧を目指さない」「なるべく手間やコストがかからないものからスタートする」の2つ。そして、これらをクリアし、スピーディに検証を進められるのが、「マネージドサービス」というわけですね。ちなみにAWSでは22種類のマネージドサービスが提供されているそうです。
  3. データサイロからの脱却/全体最適化
    続いては、機械学習のプロジェクトを進めるにあたってのポイントです。「機械学習プロジェクトはひとりでやるのではなく、フェーズによって担当者が変わるため、さまざまな形式のデータを一元管理できるデータレイクなどの仕組みが必要」とのこと。これによって、「データの民主化」ができて、使いたい人が簡単かつ安全に使えるようになる……と。なかなか話が壮大になってきましたが、理想としてはそうだよねというのはわかります。
  4. 機械学習の運用・業務活用の簡素化と半自動化
    そして、運用がはじまってからの話です。機械学習では入るデータによってパフォーマンスが変わるため、継続的にモデルを再構築する必要があるのだとか。こういったモデル再構築は、AWS Step FunctionsやAmazon SageMaker Pipelinesといったサービスで自動化できる、とのことでした。
  5. モデルの透明性/説明性/公平性を担保
    最後は「AI・機械学習が出した結果に対する説明責任をどう担保するか」という観点で話がありました。AIや機械学習が「なにを基準に結果を出したか」はブラックボックスと言われていたこともありましたが、「予測などのインパクトが大きくなると説明責任が求められるほか、コンプライアンスや公平性の担保なども重要になるため、ブラックボックスではうまく進まない」そう。例としては、「クレジットカードの審査で、入力した個人情報をもとにAIが判定し、“利用不可”となった際には、なぜダメなのかの説明が求められる」ということですが、確かにそこは説明を聞きたいですよね。ここは、近年まさに研究が進んでいる分野で、AWSでも、Amazon SageMaker Clarifyによってなにに重きを置いて判断したかなどの説明レポートなどを出せるようです。今回は、具体的なレポートなどの解説はなく、正直、AIの説明レポートを見て、人がどこまで納得できるかは疑問かも……と思わなくもないですが、今後どうなっていくのかは気になるところです。

「多品種の製造工場の目視検査を自動化せよ!」ミッションを解決した「ELFE」とは?

続いて、ソニーのセッションに移りましょう。本セッションはソニーコンピュータサイエンス研究所の宮尾氏の話からスタートしました。生産技術領域でのソフトウェア開発を手がけてきた方で、ソニーの工場で機械学習による画像判別をどう活用してきたか、実体験に基づいた解説がありました。

当時、同氏のミッションは「目視検査をカメラで自動化すること」で、AV機器を中心に19種類、120件に及ぶ画像系プロジェクトが同時進行で動き、すべてハードウェアから設計してチューニングまで対応していたとのこと。聞いただけでも、いやな汗が出てきそうなプロジェクト数です……。その中で課題となっていたのが、

  • 画像処理関数を組み合わせて使うが、組み合わせの順番にも大きく結果が左右されるため、属人化していた
  • ちょっとした明るさの変化などで閾値を超えてしまい、頻繁に再チューニングしなければならない

といったことでした。

しかも、商品のライフサイクルが短く、それにも対応し続けなければならない、と。……ちょっと気が遠くなってきます。

そんな同氏の課題を解決したのが、ソニーが開発した画像判別ソリューション「ELFE」でした。ELFEは、簡単に言うと「クラス分け」をする機械学習エンジンで、たとえば、「これは食べ物」と分類した画像と、「花」と分類した画像を与えると、それぞれを分類するアルゴリズムを作ってくれるもの。これを使うことで、生産ラインにおける良品・不良品を分けられる、ということです。

ELFEをこう使った!実際の活用事例を紹介

実際にソニーの工場で、ELFEを活用したケースとして紹介があったのがこちらです。

  • AV製品
    製品内のコネクタがきちんと刺さっているかどうかのチェックです。当時はハイエンド製品からローエンド製品まで全200カ所以上のコネクタをチェックしなければならず、手作業でひとつずつ画像処理のモデルを作成するのでは追いつきません。
    ここにELFEを導入したことで開発速度は10倍以上に!また、トータル124,000回の検査で正解率は100%に近く、かなりの精度を実現したということでした。
  • 海外工場での検査
    海外の工場でもこういった検査は必要で、それまでは現地でエンジニアを採用して対応していましたが、いろいろな問題が。その対策としてもELFEが活躍!現場のスタッフにも操作方法を教えて、現場で使ってもらうように。
    導入当時は、高い精度のモデルを作るまでに1ヶ月ほどかかっていましたが、今では1~2日で使えるモデルを作成できるようになったそうです。まさに簡単に使えるELFEならではの効果ですね。

そのほか、ソニー以外の企業での活用事例も紹介がありました。

  • 部品(ナット)の混入を判別
  • 浄化槽で、適切に浄化が進んでいるかを判別(泡が減っているか)
  • ACFフィルム貼り付け(両面テープの気泡やヨレの状態を判断)

「屋外の浄化槽は、影や天気によって画像が変わるため、従来の方法では判断できなかったが、柔軟な判定が可能に」「両面テープはシワや気泡が“ゼロでなければダメ”ではないが、入りすぎはダメ。その微妙な加減も判定できた」と、これまでは難しかったものもかなりの精度で判別できるようになったそうです。

「AIで判断できる=実用化できる」ではない?!

このほか「AIで判断自体はできるが、実用には課題があった事例」について話があり、個人的にはかなり興味を引かれました。

それは、衣料品における縫製(縫い目)が蛇行していないかなどをチェックしたい、という要件だったそうですが、「AIで検査自体は可能だが、現場で使うには課題が多い」という結論に。「そもそもAIで検査するための写真をどう撮影するかが問題で、デザインも頻繁に変わるため、そのたびに撮影方法を検討するのは難しいのではないか。マネキンに着せて撮影などの対処をするなら、その作業をする人がそのまま縫い目をチェックすればよくなってしまう。画像検査ではない方法を検討した方がよいと提案した」ということでした。

言われてみれば確かにそのとおりですよね。つい「ちゃんとAIで判別できた!」というところで喜んで導入したくなってしまいますが、それが生産ラインで実用化できるかというと別の話。前回のコラムで取り上げたAWSセッションでも話がありましたが「それは機械学習で解くべき問題か」というのとあわせて、検討すべきなのだなと思いました。

最後に「機械学習では100%を保証できない。保証できない領域をほかの方法でフォローできるならば機械学習は有効。期待しすぎてはいけないが、まずやってみなければ分からないもの。小さいところからやってみることで、自社ビジネスにもAIを取り込めるのではないか」と締めくくられました。

ELFEをAWS上で使えるソリューション「ELFE on AWS」

ということで、続いてソニービズネットワークスの菅原氏より、ELFEをAWS上で手軽にスタートできるソリューション「ELFE on AWS」の紹介です。これは要するに、ELFEをEC2インスタンス上に展開して使える、というもの。

「機械学習を進めるうえでは、インフラは課題になる。マシンスペックもCPUでよいのかGPUにすべきかなど悩ましく、そもそも検証がうまくいくか分からないのに高額なサーバを購入するのは難しい。そのうえ、技術革新が早く、購入しても数年で使えなくなる可能性もある。AWSを使うことで、これらの課題は解決できる」

まさにAWSのメリットと重なる領域ですよね。短期間で導入できて、必要なときだけ使えばコストも抑えられる、と機械学習のスタートにはかなりよさそうです。

「ソニービズネットワークスでは、自宅や会社、工場などからAWSまでのネットワークもワンストップで提供する。また、専任SEがお客さまごとにあわせてサーバのサイジング、運用保守まで、AWS環境の構築・運用を支援する」と、全部まとめてお任せできるのも安心です。もちろん、このコラムでも何度も紹介してきたマネージドクラウド with AWSで提供している独自開発のAWS運用管理ツール「クラウドポータル」も使えるとのこと。これで、ELFEが動いているサーバの運用管理などを簡単に自動化できます。

最後に、ELFE on AWSのトライアル提供をおこなっていて、AWS利用料・ELFE利用料を1ヶ月無料で使える、とのこと!インターネットにつながるPCがあれば、すぐに試せるそう。機械学習プロジェクトは、予算化するにも、検討を進めるにも、まずやってみなければはじまらないように思います。この機にぜひ試してはいかがでしょうか?

ELFE on AWS

ソニー独自の画像判別AIソリューション 「ELFE」をAWS上で提供

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