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Amazon WorkSpacesで仮想デスクトップ環境を導入!メリットや懸念点とあわせて解説

テレワークの推進にあたり、在宅勤務環境の標準化や効率化を進めたいと考えてはいないでしょうか。社員が使用する端末や通信環境の違い、セキュリティ面の不安は、多くの企業で共通の課題として挙げられています。

仮想デスクトップサービスはPC環境の標準化に便利なサービスですが、仕事に必要な機能や性能が備わっているかが重要になります。「Microsoft 365に対応しているか」といった個別のアプリケーション対応も気になるポイントです。

そのような状況で注目を集めているのが、AWSが提供するマネージド型仮想デスクトップサービス「Amazon WorkSpaces」です。この記事では、Amazon WorkSpacesの基本的な仕組みや特徴、導入のメリットを詳しく解説します。

Amazon WorkSpacesとは?

まずは、次の2つのポイントからAmazon WorkSpacesの基礎知識を身に着けていきましょう。

  • AWSの仮想デスクトップサービス
  • 製品は「Personal」「Pools」の2種類

AWSの仮想デスクトップサービス

Amazon WorkSpacesは、AWSが提供するマネージド型仮想デスクトップサービスです。仮想デスクトップ環境にアクセスすれば、端末の性能や設置してある場所を問わずに会社の作業環境を利用できるようになります。

はじめてAmazon WorkSpacesがリリースされたのは2014年です。以来、継続的な機能追加とアップデートにより、Windows 11対応やマルチモニターサポート、高解像度対応など、従来のオフィス環境と同等以上の操作性を実現しています。従来の仮想デスクトップよりも使い勝手が良いとされ、多くの企業に注目されるようになりました。

Amazon WorkSpacesの最大の特徴は、クラウドベースでありながら、ローカルPCと変わらない応答性とユーザーエクスペリエンスを提供できる点にあります。PCoIPプロトコルの採用により、高品質な画面転送と低遅延を実現し、グラフィックス処理を必要とするアプリケーションでもストレスなく作業できます。

製品は「Personal」「Pools」の2種類

Amazon WorkSpacesは、「Personal」「Pools」という2つのタイプの仮想デスクトップを提供しています。それぞれの違いや特徴を理解することで、最適な選択肢を見つけられるでしょう。

Amazon WorkSpaces Personalはエンジニアやデザイナーなどのナレッジワーカー向けモデルです。高度なフルマネージド型サービスとなっており、アプリケーションやリソースへのスムーズなアクセスを実現できます。ユーザー設定を保存し、同じ環境に再ログインが可能です。

一方で、Amazon WorkSpaces Poolsはより簡易的なものとなっています。タスクワーカーやコンタクトセンターの従業員などのユーザー向けモデルで、詳細設定は保存できません。管理者側で設定を保存し、配布する形式となっています。

Personalの方が高性能でクリエイティブな仕事に向いていますが、Poolsには安価さや運用のしやすさにメリットがあります。自社の業務性質を鑑みたうえで、どちらのタイプのAmazon Workspacesを選ぶか考えてみましょう。

Amazon Workpacesの導入が進む理由

Amazon WorkSpacesは多くの企業に注目されており、実際の業務への導入が進められています。Amazon WorkSpacesの導入が進む背景には、主に次の2つの要因があります。

  • 在宅勤務の長期化を見据えた環境改善
  • テレワーク導入検討の加速

これらの要因について詳しく解説します。

在宅勤務の長期化を見据えた環境改善

新型コロナウイルスの感染拡大や緊急事態宣言をきっかけに、多くの企業がテレワークを開始しました。しかし、急ごしらえの環境には課題も多く、VPNの同時接続数の制限や社内ネットワークの帯域制限によってスムーズに業務を進められないというケースも見られました。

緊急事態宣言の解除以降も、在宅勤務が今後の働き方の標準になることを見据える企業は少なくありません。そうしてテレワーク環境の見直しをする中で注目されるようになったのがAmazon WorkSpacesです。

Amazon WorkSpacesは、AWSのグローバルインフラストラクチャを活用し、最適化された通信プロトコルによって安定したパフォーマンスを実現します。また、エンドユーザーは専用のクライアントアプリケーションを使用するだけで、場所を問わず一貫した作業環境にアクセスできます。

「在宅勤務の効率化を目指す企業にとって、既存のVPN環境の課題を解決し、セキュアで安定した環境を実現する選択肢といえます。

テレワーク導入検討の加速

製造業など、工場を持つ企業は事業の性質上在宅勤務への切り替えが難しいものです。オフィスへの出社が業務の前提となっていることも珍しくありません。しかし、営業職や事務職など出社が必須ではない一部の社員に対してはテレワークを検討することも増えてきました。

従業員数の少ない営業拠点などでは、物理的なオフィスそのものを廃止し、全員が在宅勤務で対応することでコスト削減を図ることもあります。クラウドサービスやコミュニケーションツールの発展により、テレワークでも従来と変わらない業務遂行が可能になったことも、この流れを後押ししています。

Amazon WorkSpacesは、テレワーク移行のニーズに合致する仮想デスクトップです。職種によってはテレワークのための最適な選択肢となるため、事業の性格を問わず導入を進める企業が増えています。

Amazon WorkSpacesのメリット

Amazon WorkSpacesには、主に次のようなメリットが存在しています。

  • 強固なセキュリティ
  • AWS環境との統合による運用効率の向上
  • 柔軟な料金体系

それぞれの詳細を見ていきましょう。

強固なセキュリティ

Amazon WorkSpacesは、どこからでも安全に仮想デスクトップへアクセスできます。仮想デスクトップ環境のデータはAWSのクラウド内に保存されローカルデバイスには残らないため、情報漏洩のリスクを低減し、データセキュリティとコンプライアンスへの対応を強化できます。また、集中管理によってセキュリティポリシーの統一的な適用も可能です。

テレワークでは個々人のデバイスからの情報漏えいや、不正アクセスといったリスクが懸念材料となります。Amazon WorkSpacesは、多要素認証やトラフィックの暗号化、Active Directoryとの統合など、AWSの包括的なセキュリティ機能を活用することで、安全なテレワーク環境を実現します。

AWS環境との統合による運用効率の向上

Amazon WorkSpacesを導入する際にAWSへの移行を同時進行すれば、より効率的なテレワーク環境を構築することができます。社内に設置されたファイルサーバやActive Directory(AD)をAWSに移動させることで、運用・管理がクラウド上でおこなえるようになります。

AWS上に構築された環境では、WorkSpacesを通じて安全かつ効率的なリソースアクセスが実現できます。さらに、AWS Directory ServiceやFSx for Windowsなどのマネージドサービスと組み合わせることで、従来のオンプレミス環境と同等以上の機能性を確保できます。

さらに、インフラストラクチャの管理がクラウド上で一元化されることで、場所を問わない効率的な運用管理が可能となります。これは製造業を含む、あらゆる業種で活用できる利点です。

また、AWSへの移行はオフィス縮小や運用コストの削減といった副次的なメリットも得られます。テレワークと同時に経営のスリム化をおこないたい企業にとっても、有効な選択肢となるでしょう。

柔軟な料金体系

Amazon WorkSpacesには柔軟な料金体系が用意されています。ナレッジワーカー向けのAmazon WorkSpaces Personalと、タスクワーカー向けのAmazon WorkSpaces Poolsのそれぞれに分けて見ていきましょう。

Amazon WorkSpaces Personalの料金体系

Amazon WorkSpaces Personalでは、「AlwaysOn」と「AutoStop」という2つのオプションが用意されています。

AlwaysOnは、月額で仮想デスクトップを無制限に使用できるプランです。予算の計算が簡単な月額制のため、頻繁にデスクトップを使用するユーザーや長時間の稼働が求められる業務に最適です。

AutoStopは従量課金制のプランです。仮想デスクトップが使用されていないときには課金が停止します。停止中でも仮想デスクトップのデータやアプリケーションの状態はそのまま維持されます。断続的な利用が多い場合でも無駄なコストを抑えられるプランと言えるでしょう。

Amazon WorkSpaces Poolsの料金体系

Amazon WorkSpaces Poolsでは、低額の月額料金と従量課金制を組み合わせた体系となっています。基本的には月額料金の範囲内で使用しつつ、作業量に応じて従量課金が変動する仕組みです。

突発的・散発的なニーズの変化にも対応しやすい料金体系といえるでしょう。

Amazon WorkSpacesについてよくある疑問

最後に、Amazon WorkSpacesの利用を検討する人が抱きがちな疑問をQ&A方式で紹介します。

  • 導入までに時間はかかる?
  • Office 365は使える?

それぞれの詳細を見ていきましょう。

導入までに時間はかかる?

Amazon WorkSpacesは、AWSマネジメントコンソールから数クリックで環境を構築でき、最短で1時間程度での導入が可能です。Microsoft Office搭載のバンドルを選択することで、すぐに利用を開始できます。また、その他の一般的なソフトウェアについても、カスタムイメージを作成することで効率的な展開が可能です。

しかし、社内システムにあるアプリケーションを使用したい場合は条件が変わってきます。社内システムとの連携が必要な場合は、AWS Direct ConnectやVPN接続を利用してAWSと社内ネットワークを接続する必要があります。また、Active Directoryとの統合やネットワーク構成の設計など、事前の準備作業が発生します。

AWS Direct Connectについてはこちらの記事で詳しく解説しています。興味のある方はぜひご覧ください。

関連記事:AWS Direct Connectとは?メリットや注意点、AWSへの接続方法の種類を解説

Office 365は使える?

使用可能です。2023年から、Microsoft 365 Apps for enterpriseがAmazon WorkSpaces上で利用できるようになりました。以前まではライセンスの制約から、OfficeアプリケーションをAmazon WorkSpaces環境にインストールできませんでした。

2024年12月現在では、Microsoft 365 Apps for enterpriseライセンスを保有していれば、WorkSpaces上でMicrosoft 365アプリケーションを問題なく利用できます。

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まとめ

Amazon WorkSpacesは、リモートワーク環境を効率化する手段として注目されている仮想デスクトップサービスです。AWSが提供する高いセキュリティと柔軟な料金体系により、企業の多様なニーズに応えることができます。

Office 365の利用が可能なため、多くの企業の通常業務に利用できます。社内システムとの連携が必要な場合は、全社的な環境のAWS移行も検討してみましょう。

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