新サービスは「今あるものをより良く・より使いやすく」するものがメイン
AWS re:Inventの印象をどなたに聞いても毎回言われるのですが「とにかく規模がすごい」。特に3年ぶりの参加となった小竹さん曰く、「前は会場もホテルひとつだけで、期間中ホテルから出ることがなかったのですが、3年ぶりに参加したら複数ホテルでセッションを開催していて、街全体がイベントになっていて驚きました」とのこと。その規模感や盛り上がりには、皆さん圧倒されるようです。
全体的な発表の印象としては、前回まで機械学習やIoTなどかなりイノベーティブな発表が多かったのに対し、今回は「今あるものをより良く」するための新サービスや機能改善が多かった、というのが3人の共通意見でした。
新しいものは開発し尽くした……わけではないのでしょうが、今はちょうど取り組むべきテーマがひと通り出揃い、これまで出してきたものをより便利に・使いやすくするフェーズにいる、ということなのでしょうか。それだけAWSが“当たり前に”使われるようになった(もうみんな使っているから、次は便利にするね、ということ)とも言えるのかもしれません。競合他社を寄せ付けない、圧倒的立場にいる余裕すら感じます。
やっぱり気になる!AWS Outpostsは使えるの?
ではここからはソニービズネットワークスの皆さんが注目したサービスをご紹介。まず國府さん・小竹さんのお二人が挙げたのが「AWS Outpostsの一般提供開始」です。前回の「AWS re:Invent 2018」で発表されたAWS環境をオンプレミスに構築できるハードウェア、AWS Outpostsがいよいよ一般ユーザも利用できるように!日本も対象に含まれているので申し込めば使える、ということになりました。
少し前までは、とにかく全部クラウドへ移行を、という流れが大きかったのですが、ここにきてオンプレミスとクラウドを適材適所で使い分けるハイブリッドクラウドが注目を集めています。そこでも、AWSと同じインフラをオンプレミスに構築できるAWS Outpostsの魅力は大きいはず。
さらに、今回新たに発表された「AWS Wavelength」。こちらは「エッジコンピューティング」を実現するためのサービスで、5Gネットワークを活用し、超低遅延でエッジにアプリケーションを展開できるもの。インターネットを介してクラウド環境を利用すると一定の遅延が出てしまうので、それを避けるべく、ユーザや端末の近くで処理しよう!というのがエッジコンピューティングですが、このエッジに置いたサーバにアプリケーションを超高速でデプロイできる、というわけですね。つまり!エッジにAWS Outpostsのハードウェアを置いて、AWS Wavelengthでアプリケーションをデプロイすれば最強なのでは……?
ただし、気になる点も。「AWS Outpostsはフルラックのみで提供されるので、価格がかなり高額になるのがハードルですね」と國府さん。今はまだ利用できる企業は限られそうですが、これからどう展開していくのか、ハーフラックでも使えるようになったりするのか……今後に期待です。
こちらについてはエンジニアの東川さんも「クラウドポータルからオンプレミスのAWS Outposts環境とクラウド側のAWS環境を一緒に管理できたら、用途が広がっておもしろそう」とのこと。そんな未来を楽しみに待ちたいと思います。
EC2環境がより便利に!独自開発プロセッサを採用した新インスタンスタイプに期待
そんな東川さんが注目したのは、冒頭でも少し触れた、AWSが独自開発したプロセッサ「Graviton 2」。AWS re:Invent 2019では、Graviton 2を用いた新しいEC2インスタンスタイプとして「M6g」「R6g」「C6g」があわせて発表されました。なんとこれ、「x86プロセッサのサーバと比較して、40%も価格性能比が高い」とされています。もはや、どれだけの性能に、どれだけお金を払うのが適切なのか、よく分からなくなりそうな数字です。
「ほかにも仮想化ハードウェアのNitroシステムにより、より高速なAmazon EBSの最適化インスタンスをサポートするという発表もありました。これまでのAWSのアーキテクチャで問題やネックになっていた部分をしっかり分析して、それを解決してきたな、という印象です。ユーザにAWSを『より良く・より安く』使ってほしい、という想いが伝わってきました」(東川さん)
機械学習関連サービスがさらに充実!プラットフォームとしての地位を確立した?
もうひとつ、今回新サービスが多くリリースされたのが、機械学習の分野です。前回も注力していたイメージがありますが、今回もAmazon SageMakerに関連するサービスを大量リリース!その内容は、機械学習のための統合開発環境「Amazon SageMaker Studio」や、機械学習モデルのデバッガー「Amazon SageMaker Debugger」、さらには機械学習モデルを自動でトレーニングしてくれる「Amazon SageMaker Autopilot」など多岐にわたります。
これは、Amazon SageMakerを利用する開発者が増え、その開発者たちが抱える課題や手間がかかる部分を一気に解決しにかかっている……とみていいのではないでしょうか。機械学習の開発プラットフォームとしてAWSの地位がほぼ確立されたと言ってもいいのかもしれません。
ここでご紹介した以外にも、AWS re:Invent 2019では量子コンピュータの研究施設創設なども発表されており、これからも最先端をガシガシ攻めていくよというスタンスに変わりはないのでしょう。機械学習にしてもなににしても、最新技術へのハードルを下げて、使いやすくする、という点はこれからも期待していきたいところです。
以上、シイノキでした!