IPv4とは?基本的な仕組みを解説
IPv4は現在のインターネット通信で広く利用されている通信プロトコルです。企業のネットワーク環境を理解するために、まずはIPv4の基本的な仕組みを詳しく見ていきましょう。
IPとは?
IP(Internet Protocol)は、インターネットを含むネットワーク上でデータをやり取りするための基本的な通信規約(プロトコル)です。インターネット上の各デバイスにアドレス(IPアドレス)を割り当て、そのアドレスを使ってデータの送り先を識別し、データをパケットという小さな単位に分割して効率的に送受信する役割を担っています。IPがなければ、世界中のコンピューターが互いに情報を交換することはできません。
IPv4の特徴
IPv4(Internet Protocol version 4)は、インターネットプロトコルの第4版として1981年に標準化された通信規格です。現在のインターネット通信の基盤となる技術として、世界中のネットワーク機器で使用されています。
IPv4の主な役割は、ネットワーク上の各機器に固有のIPアドレスを割り当て、データパケットを正しい宛先に届けることです。企業のネットワーク環境では、サーバーやクライアント端末、ルーターなど全ての機器がIPv4アドレスを持つことで相互の通信が可能になります。
IPv4の通信プロトコル
IPv4における通信は、データをパケットと呼ばれる小さな単位に分割して送信する方式を採用しています。各パケットには送信元と宛先のIPアドレスが含まれており、ルーターがこの情報を元に最適な経路を選択してデータを転送します。
また、IPv4はARP(Address Resolution Protocol)と連携して動作します。ARPは、IPアドレスから対応する物理アドレス(MACアドレス)を取得するプロトコルで、同一ネットワーク内での通信に必要不可欠です。ARPは送信元が宛先IPアドレスに対応するMACアドレスを調べる際、ネットワーク上にARPリクエストをブロードキャストし、該当する端末がARPリプライで応答する仕組みとなっています。この応答結果はARPテーブルに一定期間保存され、同じ宛先との通信時の効率が向上します。
IPv4とIPv6との違い
インターネットプロトコルには、現在主流のIPv4の他に、次世代のプロトコルであるIPv6が存在します。これら二つの最も大きな違いは、そのアドレス空間の大きさです。
IPv4アドレスは32ビットで構成されており、約43億個のアドレスを生成できます。一見多く見えますが、インターネットの急速な普及により、このアドレスはすでに枯渇寸前となっています。
一方、IPv6アドレスは128ビットで構成されており、そのアドレス数は事実上無限とも言える膨大な数になります。これは、地球上の砂粒の数よりもはるかに多いと例えられるほどの規模です。IPv6の導入により、すべての人、デバイス、そしてモノが固有のIPアドレスを持つことが可能になり、IoT(Internet of Things)などのさらなる発展を支える基盤となります。
現在、多くのネットワークやサービスはIPv4で動作していますが、アドレス枯渇の問題や新しい技術への対応のため、IPv6への移行が世界的に進められています。将来的には、IPv6がインターネットの主流となることが見込まれています。
IPv4とIPoE/PPPoEとの関係
IPoE(IP over Ethernet)とPPPoE(Point-to-Point Protocol over Ethernet)は、いずれもインターネット接続方式の種類であり、IPアドレスの取得方法や通信経路に違いがあります。IPv4とIPv6は、これらの接続方式を通じて利用されるIPプロトコルのバージョンです。
PPPoE接続とIPv4/IPv6
PPPoEは、従来のADSLや一部の光回線で使われてきた接続方式です。PPPoEでは、インターネットに接続するためにユーザー認証(IDとパスワード)が必要となり、ルーターでPPPoE接続を設定することで、プロバイダーからIPv4アドレスが割り当てられます。
この方式では、プロバイダー側の通信設備(BRAS: Broadband Remote Access Server)を経由するため、利用者が増えると通信速度が低下しやすいという課題がありました。IPv4アドレスが枯渇し始めた現在でも、多くのプロバイダーはPPPoE接続でIPv4アドレスを提供しています。しかし、PPPoEの仕組み上、IPv6通信を行う場合もPPPoEトンネルを通す必要があるため、IPv4と同様に通信速度のボトルネックになる可能性があります。
IPoE接続とIPv4/IPv6
IPoEは、次世代のインターネット接続方式として注目されており、主に光回線で利用されます。PPPoEとは異なり、IPoEはイーサネットフレームに直接IPパケットを流すため、ID/パスワードによるユーザー認証が不要で、よりシンプルな経路でインターネットに接続できます。
IPoE接続では、基本的にIPv6アドレスが利用されます。これは、IPv6が元々IPoEのような広帯域でシンプルなネットワーク環境での利用を想定して設計されているためです。IPoE接続であれば、IPv6の持つ広大なアドレス空間と効率的なルーティングのメリットを最大限に活かすことができます。
また、IPoE環境でIPv4のウェブサイトやサービスにアクセスしたい場合は、IPv4 over IPv6という技術が利用されます。これは、IPv6のネットワーク上でIPv4のパケットをカプセル化して通信する技術であり、IPv6の高速な回線を活かしつつ、既存のIPv4コンテンツにもアクセスできるようにします。
IPv4アドレス枯渇問題について
IPv4アドレス枯渇問題は、インターネットの急速な普及により深刻化している課題です。企業のネットワーク戦略にも大きな影響を与えています。
約43億個の上限
IPv4の32ビットアドレス空間は、前述のとおり、理論上約43億個(4,294,967,296個)のアドレスを提供します。しかし、実際にはネットワーク設計上の制約により、すべてのアドレスを有効活用することはできません。
特殊用途で予約されたアドレス範囲があります。例えば、0.0.0.0/8はソフトウェアで使用され、127.0.0.0/8はループバックアドレスとして予約されています。また、224.0.0.0/4はマルチキャスト用、240.0.0.0/4は実験用または将来用で予約されています。
プライベートアドレス(約1800万個)を除くと、実際にインターネットで使用可能なグローバルIPアドレスは約37億個程度になります。
割り当て管理機関の現状
IPv4アドレスの割り当ては、IANA(Internet Assigned Numbers Authority)を頂点とした階層構造で管理されています。IANAから5つの地域インターネットレジストリ(RIR)に大きなブロックが割り当てられ、さらに各国のネットワーク情報センターやプロバイダーに分配されます。
2011年2月にIANA (Internet Assigned Numbers Authority) において新規に割り振りできる IPv4アドレス が無くなりました。2011年4月15日には、 アジア太平洋地域の RIR (地域インターネットレジストリ)である APNIC においても、通常の申請により割り振り可能であるIPv4アドレスの在庫がなくなり、アジア太平洋地域は、IPv4アドレス在庫枯渇の状態となりました。
日本のJPNIC(日本ネットワークインフォメーションセンター)では、現在も限定的な割り当てが行われていますが、新規割り当てには厳格な審査が適用されています。企業がグローバルIPアドレスの追加割り当てを希望する場合、詳細な利用計画と正当性の証明が必要です。
IPv4枯渇への対策
IPv4アドレス枯渇問題への対策として、複数のアプローチが採用されています。短期的な対策と長期的な対策を組み合わせることで、事業継続性を確保できます。
短期的な対策には、CG-NAT(Carrier Grade NAT)の導入があります。プロバイダーレベルでNATを実装することで、複数の顧客が同一のグローバルIPアドレスを共有できます。また、IPv4アドレスの有効活用を促進するため、未使用アドレスの回収や再配布も行われています。
長期的な対策として、IPv6への移行が不可欠です。IPv6は128ビットアドレス空間を持ち、事実上無限のアドレスを提供できます。デュアルスタック構成により、IPv4とIPv6を並行運用しながら、段階的な移行を進めることが推奨されています。
| 対策手法 | 効果 | 導入難易度 |
|---|---|---|
| CG-NAT | アドレス利用効率向上 | 中 |
| IPv6移行 | 根本的解決 | 高 |
| アドレス回収 | 一時的な枯渇回避 | 低 |
表はスライドできます
IPv4からIPv6への移行に向けたチェックポイントと対策
IPv4の課題を解決するため、多くの企業でIPv6への移行が検討されています。効果的に移行するために必要な知識を解説します。
IPv4とIPv6を併用する
IPv6への移行においては、IPv4からIPv6への一斉切り替えではなく、両方のプロトコルを同時に運用するデュアルスタック環境の構築が一般的です。この方式により、既存のIPv4システムを維持しながら、段階的にIPv6への移行を進めることができます。
デュアルスタック環境では、ネットワーク機器やサーバーがIPv4とIPv6の両方に対応し、通信相手に応じて適切なプロトコルを選択して動作します。
またIPv6移行技術には、トンネリング(6to4、ISATAP)や、アドレス変換(トランスレーション/NAT64・DNS64)方式もあります。ネットワークやサービス環境に応じてこれら技術を柔軟に併用することができます。
段階的なIPv6への移行の手順
効果的なIPv6移行計画を立てるためには、現在のネットワーク環境の詳細な把握が必要です。使用している機器のIPv6対応状況、アプリケーションの互換性、運用手順の見直しなど、多岐にわたる検討が求められます。
移行計画では、段階的なアプローチが推奨されます。まず、インターネット接続部分からIPv6を導入し、その後、内部ネットワークや重要なサーバーへと順次展開していく方法が一般的です。また、移行期間中の運用の監視体制の強化も必要になります。
企業が取り組むべき対策
企業がIPv6移行を進める際は、段階的なアプローチが重要です。まず、現在のネットワーク環境とアプリケーションのIPv6対応状況を調査し、移行計画を策定する必要があります。
ネットワーク機器の対応状況確認が第一歩です。ルーター、スイッチ、ファイアウォールなどのインフラ機器がIPv6をサポートしているかを確認し、必要に応じて機器の更新計画を立てます。
アプリケーションレベルでの対応も重要です。Webサーバー、メールサーバー、データベースサーバーなどの基幹システムがIPv6に対応しているかを確認し、必要に応じてアップデートや設定変更を行います。
スタッフの教育も欠かせません。IPv6のアドレス体系や設定方法について、システム管理者やネットワーク運用担当者に適切な研修を実施する必要があります。
| 移行フェーズ | 主な作業 | 期間目安 |
|---|---|---|
| 調査・計画 | 現状分析、移行計画策定 | 3-6ヶ月 |
| インフラ整備 | 機器更新、設定変更 | 6-12ヶ月 |
| アプリケーション対応 | システム改修、テスト | 12-24ヶ月 |
| 運用開始 | サービス開始、監視体制構築 | 3-6ヶ月 |
表はスライドできます
- NUROアクセス 10G
-
高コスパの帯域確保型上下最大10Gbpsサービス
- NUROアクセス 2G
-
クラウド時代を支えるインフラのスタンダート回線
まとめ
IPv4は現在のインターネット通信の基盤として重要な役割を果たしている一方で、アドレス枯渇問題という大きな課題に直面しています。企業の情報システム担当者は、IPv4の基本的な仕組みを理解し、適切なアドレス管理を行うことで、現在のネットワーク環境を効率的に運用できます。
同時に、IPv6への移行は避けて通れない課題となっており、デュアルスタック環境の構築を通じて段階的な移行計画を立てることが重要です。これらの知識を活用して、将来に向けたネットワーク戦略を検討することが、企業の競争力維持に不可欠となっています。
お役立ち資料をダウンロード
IPv4 over IPv6とは?どんなメリットがある?
【パンフレット概要】
IPv4(PPPoE接続)と IPv6(IPoE接続)の違いやそれぞれのメリット、選び方の注意点など解説します。


