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ゼロデイ攻撃の脅威とは?定義と対策法を紹介

ゼロデイ攻撃の脅威とは?定義と対策法を紹介

近年、サイバーセキュリティの世界で特に警戒されているのが「ゼロデイ攻撃」です。この攻撃は、OS・ソフトウェアの未知の脆弱性を悪用するため、従来の防御策では防ぎきれないという特徴があります。

本記事では、ゼロデイ攻撃の定義から具体的な対策法、万が一被害に遭った場合の対応手順まで、実務担当者が知っておくべき情報を網羅的に解説します。

事例の課題やよくいただくご相談を基に、サービスの活用方法をご紹介します。

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ゼロデイ攻撃とは?

ゼロデイ攻撃とは、OSやソフトウェアの脆弱性(セキュリティホール)が発見されてから、その脆弱性を修正するパッチがリリースされるまでの「ゼロ日目」に行われる攻撃のことです。つまり、開発者側が脆弱性に気づいて対策を講じる前に、悪意ある攻撃者がその脆弱性を発見し悪用する攻撃手法を指します

ゼロデイ攻撃の特徴

通常のサイバー攻撃であれば、脆弱性が発見された後、開発者がパッチを提供し、ユーザーがそれを適用することで防御できます。しかし、ゼロデイ攻撃の場合は、脆弱性が一般に知られていないか、対策が間に合わない状態で攻撃が行われるため、従来の防御策が機能しません。

この種の攻撃は「Day Zero」(ゼロ日目)という言葉に由来しており、脆弱性が発見されてからパッチ適用までの時間がゼロ日(実質的に対策不可能な状態)であることを意味します。高度な技術を持つハッカーやサイバー犯罪組織、時には国家支援型の攻撃者によって実行されることが多いのが特徴です。

ゼロデイ攻撃の発見が難しい理由

ゼロデイ攻撃が特に危険視される理由は、その発見の難しさにあります。一般的なセキュリティ対策ツールは、既知の脆弱性や攻撃パターンのデータベースを基に動作します。しかし、ゼロデイ攻撃は、既知の攻撃パターンに基づくセキュリティ対策では検知できないため、従来型のセキュリティソリューションでは防御が困難です

また、攻撃者はこうした脆弱性情報を秘密裏に保持し、最大限の効果を得るために慎重に攻撃を計画します。そのため、被害が表面化した時点ですでに深刻な情報漏洩や権限奪取が完了していることも珍しくありません。

さらに、攻撃の痕跡を巧みに隠すステルス性の高い手法が用いられることも多く、企業のセキュリティチームが通常の監視活動で発見するのは極めて困難です。こうした特性から、ゼロデイ攻撃は企業にとって深刻なセキュリティリスクの一つと考えられています。

Nデイ脆弱性について

ゼロデイ攻撃に関連する脅威に「Nデイ脆弱性」があります。Nデイ脆弱性とは、OS・ミドルウェア・アプリケーションなどの脆弱性が発見されてから、それに対するセキュリティパッチ(修正プログラム)が公表され、エンドユーザがパッチを適用するまでの期間に存在する脆弱性の事を指します。

ゼロデイ攻撃が開発者が認識していない未知の脆弱性を悪用するのに対し、Nデイ脆弱性は公表済みだが未対応の脆弱性を指します。

こういったNデイ脆弱性も重大なリスクとなります。効果的な対策には、迅速なセキュリティパッチの適用と定期的な脆弱性のスキャンが不可欠です。

ゼロデイ攻撃の主な手法

ゼロデイ攻撃は様々な手法で実行されますが、中でも頻繁に利用されるのは、メールを使った攻撃とWebサイトを悪用した攻撃です。これらの詳細を理解することで、防御の手がかりを得ることができます。

マルウェア付きメールによる攻撃

メールを使ったゼロデイ攻撃は、最も一般的な侵入経路の一つです。未知の脆弱性を突くマルウェアを添付したり、マルウェアへのリンクが記載されたメールを送信し、受信者にファイルを開かせることで内部ネットワークへの侵入を図ります。この手法は大きく分けて「標的型」と「ばらまき型」の二種類があります。

標的型攻撃では、特定の企業や組織を狙い、取引先や関係者を装った精巧なメールが送られます。社内で使われている文書形式や用語を模倣するなど、受信者が疑いを持たないよう細心の注意が払われています。例えば、財務部向けに請求書や見積書を装ったファイル、人事部向けに履歴書を装ったファイルなど、業務上開封せざるを得ないような文書を添付し、企業の担当者を騙そうとします。

一方、ばらまき型攻撃は不特定多数を対象に大量のメールを送信し、少数でも感染者を出すことを目的としています。「配送通知」「料金未払い警告」「懸賞当選通知」など、受信者の好奇心や不安を煽るタイトルが用いられることが特徴です。

いずれの場合も、添付ファイルやリンク先には、Microsoft 365などの広く使われているソフトウェアに未パッチの脆弱性を突くマルウェアが仕込まれています。ファイルを開いた瞬間に感染し、バックドアが作成されたり、ランサムウェアが展開されたりするケースが報告されています。

Webサイト改ざんによる攻撃

Webサイトを経由したゼロデイ攻撃も頻繁に観測されています。正規のWebサイトが改ざんされ、訪問者のブラウザやプラグインの脆弱性を突くコードが埋め込まれる手法です

特に危険なのは「ドライブバイダウンロード攻撃」と呼ばれる手法で、ユーザーがWebサイトを閲覧しただけで、何のクリック操作もなく自動的にマルウェアがダウンロード・実行される仕組みです。Webブラウザやプラグイン(Adobe Flash、Java等)の未知の脆弱性が悪用されることが多く、ユーザーは感染に気づきにくいという特徴があります。

また、最近では「水飲み場型攻撃」と呼ばれる、標的を絞った手法も増加しています。これは特定の企業や組織の従業員がよく訪問するサイト(業界ニュースサイトや特定のサービスサイトなど)を狙って改ざんし、標的組織の関係者だけを選別してマルウェアに感染させる高度な攻撃です。

最近の事例では、ソフトウェアのアップデートなどを装ってユーザー自身に不正なファイルを実行させるソーシャルエンジニアリングの手法が用いられるケースも報告されています。

WebサイトのCMSやプラグインの脆弱性を利用して攻撃コードを埋め込むケースが多く、サイト運営者自身が気づかないうちに攻撃の踏み台にされているケースも少なくありません。特にしばらく更新されていない古いウェブサイトや、セキュリティ対策が不十分な中小企業のサイトが標的になりやすい傾向があります。

ゼロデイ攻撃による影響と被害

ゼロデイ攻撃は、その性質上、発見が遅れることが多く、被害が拡大しやすい特徴があります。どのような被害が発生し得るのか、また特にどのような企業が標的になりやすいのかを理解することが重要です。

企業が受ける具体的な被害

ゼロデイ攻撃による被害は多岐にわたり、企業経営に深刻な影響を与えます。侵入に成功した攻撃者は、システムの乗っ取りや情報流出といった直接的被害だけでなく、長期的なビジネス損失をもたらす可能性があります

最も一般的な被害は情報漏洩です。顧客データ、知的財産、事業戦略、財務情報などの機密情報が盗まれると、競争力の低下や信用失墜につながります。特に個人情報漏洩は、GDPR(欧州一般データ保護規則)などの法規制により制裁金が課される可能性もあります。

また、ランサムウェアによる被害も深刻です。ゼロデイの脆弱性を突いてランサムウェアが展開されると、データが暗号化され業務が停止します。

さらに危険なのは、長期潜伏型の攻撃です。バックドアを設置して長期間にわたり情報を盗み続けるAPT(Advanced Persistent Threat)と呼ばれる攻撃では、平均発見までの期間が200日以上とも言われており、その間に膨大な情報が流出している可能性があります。

被害は自社内にとどまらず、サプライチェーン全体に波及することもあります。取引先や協力会社への攻撃の足がかりとして自社が利用されるケースもあり、ビジネス関係にも悪影響を及ぼす恐れがあります。

ゼロデイ攻撃への効果的な対策

未知の脆弱性を突くゼロデイ攻撃に対しては、従来型の防御だけでは不十分です。多層防御の考え方に基づいた、包括的なセキュリティ対策が必要となります。

基本的なセキュリティ対策

ゼロデイ攻撃への対策の基盤となるのは、まずは基本的なセキュリティ対策の実施です。脆弱性が発見された後の迅速なパッチ適用体制を整備することで、ゼロデイの窓口期間を最小限に抑えることができます

重要な対策の一つが、ソフトウェアの定期的なアップデートです。OSやアプリケーション、特にブラウザやOfficeソフトなど広く使われているソフトウェアは、脆弱性が発見されるとすぐにパッチがリリースされます。これらのアップデートを迅速に適用するための体制を整えることで、ゼロデイの脆弱性が公表された後、Nデイ脆弱性への対応を早めることができます。

不要なソフトウェアやサービスの削減も効果的です。システムに導入されているソフトウェアが多いほど、攻撃対象面(アタックサーフェス)が広がります。特に使用頻度の低いアプリケーションやプラグインは、セキュリティリスクとなるため定期的な棚卸しが推奨されます。

メール環境のセキュリティ強化も重要です。前述のように、メールは主要な攻撃経路となっています。SPFやDKIM、DMARCといった送信元認証技術の導入や、添付ファイルの自動スキャン、URLフィルタリングなどを実施することで、不審なメールをブロックする確率を高められます。

さらに、ネットワークセグメンテーションの実施も推奨されます。社内ネットワークを適切に分割し、部門間やシステム間の不必要な通信を制限することで、万が一侵入されても被害の拡大を防ぐことができます。特に重要なシステムや機密データを扱うサーバーは、厳格なアクセス制御の下で隔離することが望ましいでしょう。

高度な防御策の導入

基本対策に加え、ゼロデイ攻撃に特化した高度な防御策を導入することで、検知・対応能力を大幅に強化できます。振る舞い検知やサンドボックス技術を活用することで、未知の脅威にも対応可能なセキュリティ体制を構築できます。

サンドボックス技術の導入は、ゼロデイ攻撃への有効な対策です。サンドボックスは、隔離された仮想環境内でファイルやプログラムを実行し、その挙動を分析する技術です。既知のシグネチャに依存せず、プログラムの振る舞いから悪意ある動作を検出できるため、未知のマルウェアも発見できる可能性が高まります。

また、EDR(Endpoint Detection and Response)ソリューションの導入も効果的です。EDRは端末の挙動を常時監視し、不審な活動を検知・対応する技術です。EDR機能を持つ製品を導入することで、ゼロデイ攻撃の兆候を早期に発見し、迅速な対応が可能となります。

重要情報の暗号化も、被害軽減には欠かせません。機密データを適切に暗号化しておくことで、万が一侵入されてデータが窃取されても、そのまま利用されるリスクを低減できます。特に個人情報や機密情報は、保存時だけでなく通信時も暗号化することが望ましいでしょう。

 
対策技術 主な機能 ゼロデイ攻撃への有効性
サンドボックス 隔離環境でファイルを実行し、挙動を分析 未知のマルウェアの検出に効果的
EDR 端末の挙動監視、異常検知、自動対応 侵入後の不審な活動を検知可能
情報の暗号化 機密データの保護、不正読取防止 データ窃取後の被害軽減に有効
脆弱性診断 システムの弱点を事前に発見 攻撃されやすい箇所の特定・改善

表はスライドできます

また、定期的な第三者によるセキュリティ診断も重要です。ペネトレーションテスト(侵入テスト)や脆弱性診断を専門家に依頼することで、自社では気づかなかった弱点を発見し、事前に対策を講じることができます。特に新しいシステムを導入した際や、大きな設定変更を行った後には、セキュリティ診断を実施することをお勧めします。

関連記事:EDRとは?従来のセキュリティ対策「EPP」との違いや機能・導入メリットを解説

ゼロデイ攻撃を受けた際の対応手順

万全の対策を講じていても、ゼロデイ攻撃の被害を完全に防ぐことは困難です。万が一攻撃を受けた場合の対応手順を事前に整備しておくことが、被害の最小化には不可欠です。

初動対応の重要性

ゼロデイ攻撃の被害が発覚した際は、迅速かつ適切な初動対応が被害拡大の防止に直結します。感染拡大を防ぐためのネットワーク隔離措置を速やかに実施することが最優先事項となります

まず、感染が疑われる端末やシステムをネットワークから即座に隔離します。物理的にネットワークケーブルを抜く、無線LAN接続を切断するなど、確実に外部との通信を遮断することが重要です。これにより、マルウェアの拡散や情報の外部送信を防止できます。

次に、社内のインシデント対応チームや情報システム部門に速やかに連絡します。事前に定められた連絡フローに従って報告し、専門チームの指示を仰ぎましょう。この際、発見時の状況や症状、実施した応急措置などを詳細に伝えることが、その後の対応を円滑にします。

また、証拠保全も重要な初動対応の一つです。端末の電源を単純にオフにするのではなく、メモリダンプの取得やログの保存など、後の調査に必要となる情報を可能な限り保全します。特にマルウェアの痕跡やログファイルはすぐに消去されることがあるため、迅速な対応が求められます。

さらに、初期調査を進め、影響範囲の把握に努めます。同様の症状が出ている端末はないか、不審なネットワークトラフィックは検出されていないかなど、攻撃の広がりを早期に特定することで、効果的な対策を講じることができます。

復旧と再発防止策

初動対応の後は、安全な状態への復旧と再発防止策の実施が必要です。
被害端末の完全クリーンアップと脆弱性の根本的解決を行い、同様の攻撃を防ぐための対策を講じることが重要です

被害端末の対処は、状況に応じて適切な方法を選択します。セキュリティソフトによるスキャンと駆除を試みる方法もありますが、ゼロデイ攻撃の場合は検出されない可能性も高いため、可能であれば端末の初期化とOSの再インストールが推奨されます。特に重要なシステムや機密情報を扱う端末では、完全なクリーンインストールが安全です。

また、バックアップからのデータ復元も慎重に行う必要があります。ランサムウェアの場合、感染前の安全なバックアップから復元することになりますが、どの時点のバックアップが安全かを見極めることが重要です。感染後のバックアップを復元すると、再感染のリスクがあります。

さらに、攻撃の原因となった脆弱性への対処も欠かせません。ベンダーからパッチがリリースされていれば即座に適用し、まだ対策がない場合は当該機能の無効化や代替手段の検討など、暫定的な回避策を講じます。

インシデント終息後は、詳細な事後分析を行い、再発防止策を検討します。侵入経路や攻撃手法を分析し、セキュリティ対策の見直しや強化ポイントを特定します。また、同様のインシデントが発生した際の対応手順を改善し、社内での訓練も定期的に実施することで、組織全体のセキュリティレジリエンス(回復力)を高めることができます。

yarai

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まとめ

ゼロデイ攻撃は、未知の脆弱性を悪用する高度なサイバー攻撃であり、従来型のセキュリティ対策だけでは防ぎきれない特徴を持っています。この脅威に対処するためには、基本的なセキュリティ対策の徹底と、先進的な検知・防御技術の導入、そして緊急時の対応計画の整備が不可欠です。

特に重要なのは多層防御の考え方です。単一の対策に頼るのではなく、ネットワーク、エンドポイント、アプリケーション、ユーザー教育など、複数のレイヤーでセキュリティ対策を実施することで、攻撃者が全ての防御を突破することを困難にします。

最後に、セキュリティは技術だけの問題ではなく、組織全体で取り組むべき課題であることを認識することが重要です。経営層の理解と支援のもと、定期的な訓練や啓発活動を通じて、全ての従業員がセキュリティ意識を高めることが、真に強固なセキュリティ体制の構築につながります。

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