店舗DXとは？成功事例と導入のメリットや流れを解説

店舗運用（実店舗で実施）のDXの具体例として、以下4つがあります。

• キャッシュレス決済の導入
• セルフレジの導入
• 受発注システムの導入
• 在庫管理システムの導入

最近では、スーパーのセルフレジや、飲食店でのタッチパネル注文が増えています。また、アパレルや家電量販店において、リアルタイムで在庫確認が出来るのも店舗DXの事例です。

成功事例として代表的な会社が、ユニクロを運営するファーストリテイリングです。

ユニクロの店舗では、商品を入れたカゴをセルフレジの横に置くだけで、会計金額が自動で計算される仕組みになっています。

加えて、リアルタイムで店舗在庫を確認でき、希望店舗に在庫がない場合は他店舗から取り寄せる仕組みもDX化によって実現しました。

EC・VRオンライン店舗のDXの具体例としては、以下4つがあります。

• ECサイトの構築
• オンライン予約システムの導入
• オンライン接客の導入
• チャットボットの導入

パソコンやスマートフォンを使って買い物や来店予約ができるのも店舗体験のDX事例です。

あるスキンケアブランドでは、オンライン肌診断を利用することで、自宅にいながら店舗でアドバイスを受けるような体験ができるようになりました。

また、不動産やインテリア業界では、VRを活用したショールームの開催が広がりを見せています。

このように、自宅にいながらまるで店舗に来店しているような感覚を体験できるのが、EC・VRオンライン店舗のDXです。

店舗DXが必要とされる1つ目の理由として、人口減少による人手不足の深刻化があります。

帝国データバンクの調査(2023年4月)によると、業種別では、「飲食店」が85.2％でトップ、「旅館・ホテル」（78.0％）が続き、小売業やサービス業など個人向け業種での人手不足が顕著な状況です。
出典：帝国データバンク　人手不足に対する企業の動向調査（2023年4月）

さらに新型コロナウイルスの流行が落ち着いた影響もあります。

政府は2023年4月28日に新型コロナウイルスの水際対策を終了し、さらに5月8日には感染症法上の分類が5類に移行されました。行動制限が厳しかった時期は、来客数が落ち着き、人員を削減していた店舗も多くあったはずです。

しかし、最近は行動制限の緩和にともない人流が戻ってきており、人材の確保が追いつかない店舗が多くなりました。

店舗DXが必要とされる2つ目の理由として、購買スタイルの多種多様化が挙げられます。

例えば、決済方法では、現金支払いやクレジットカード以外にもさまざまなキャッシュレス決済が増えていますよね。また、家にいながら購買活動をするスタイル（ECサイト利用）の需要も急増しています。

顧客のニーズを満たし、長期的に店舗経営を続けていくためには、これらの変化に対応していく必要があります。

店舗DXが必要とされる3つ目の理由として、他店舗との「差別化」の必要性が挙げられます。

ただ安ければモノが売れる時代ではなくなりました。店の評判や口コミが瞬時に広がるようになり、良い商品を提供すること以外の面でも顧客満足度を上げることが求められる時代です。

今後も顧客のニーズは多様化していくことが予測されます。

• 欲しいタイミングで必要な分だけすぐ買いたい
• スマホで家にいながら買い物したい
• 時間を無駄にせずに買い物したい
• 自分に合ったものを失敗なく買いたい

こういったニーズに対応していくためにも、店舗DXが必要だといえます。

先の店舗DXが必要とされる理由の中にもあるように、これから人口減少による人材不足は避けられない状況です。店舗DXを導入することで、業務効率化や生産性向上が実現でき、人手不足の解消や働き方の改善につながります。

また、長期的な業務効率化や生産性向上の結果、コスト（主に人件費）の削減にもつながります。

店舗DXの導入によって会計作業や在庫管理などが自動化できるため、計算ミスや注文漏れといったヒューマンエラーを防ぎやすくなります。

従業員のスキルの差によって業務のスピードや質が変わることもなくなるため、業務の進行が安定します。

ECサイトを活用すると、店舗が営業していない時間帯でも顧客が商品やサービスを閲覧・購入でき、収益増加と顧客体験の向上につながります。

「店舗に興味があっても、遠くて行けない」といった課題を抱えた顧客にもサービスを提供できるため、幅広い顧客層にアプローチが可能です。

店舗DXによって需要予測や来店予測ができれば、適切な在庫管理ができるようになります。

その結果、発注しすぎて廃棄が増えてしまったり、反対に発注数が少なく機会損失につながったりすることを防止。従業員の経験や勘に頼らず、在庫を管理できます。

また、顧客の来店数を高い精度で予測できれば、適切な数の人員をそろえられるため、スムーズな店舗運営を行えます。

「正確かつスピーディな店舗運営」や「多様な顧客ニーズを満たせること」は、顧客満足度の向上につながります。

• いつ行っても品切れがなく、欲しい商品をすぐに購入できる
• 会計時の回転が早く、待ち時間が少ない
• さまざまなキャッシュレス決済に対応しており、現金の手持ちがなくても購入できる

このような顧客のニーズを満たすことで「また利用したい」と思える店舗になり、売上の増加にも影響します。

店舗DXの結果が出始めるまでの期間に加え、導入効果を確認する期間も必要になるため、長期的な視点で店舗DXに取り組むことが求められます。

また、他社をマネしてDXを進めても、成果が出るとは限りません。扱っている商品やサービス、顧客層によってどのツールを利用すれば効果的なのかを見極めていくことが必要です。

DX化は人件費におけるコストダウンにつながりますが、先にシステムを導入する必要があるため、初期投資としてのコストがかかります。

すでに店舗を運営している場合は、現在使用しているシステムからのデータ移行や、連携をする際のコストも試算して導入を検討する必要があります。

店舗DXを導入した際には、導入したシステムを使いこなせる人材の確保と育成が必要です。導入したシステムや機械を使いこなせる人材を自社で育成する場合でも、時間やコストは少なからずかかります。

このような問題を解決するためには、専門的なスキルや知識がなくても使えるツールの導入を検討しましょう。まずは小規模で始めてテストし、使いこなせることを確かめてから規模を拡大することもおすすめです。

現在の店舗運営の中で、以下の特徴に当てはまる場合は、店舗DXの必要性が高いといえます。

• 顧客数に対してスタッフの人員が足りておらず、機会損失を起こしている
• 店舗運営でアナログ作業が多く、無駄な時間を取られている
• 適切な売上予測ができずに発注ミスが発生し、大量の廃棄や欠品が出ることがある
• 混雑時はレジに行列ができ、顧客の不満につながっている
• オンラインショップを開設しているが、商品のイメージが表現しにくいため、いまいち売上があがらない
• 店舗や商品に対する問い合わせ対応に時間がかかり、サポート担当の負担になるうえ、顧客からクレームをもらうことがある

反対に、以下の特徴に当てはまる場合、店舗DXを導入する必要性は低いといえます。

• 1日の客数が限られていて、一人ひとりに手厚いサービスが求められる高級店
• 顧客の年齢層が高めで、従来の営業や接客とマッチしている地域密着型のスーパーやコンビニ
• ワンオペ、もしくは2～3人ぐらいで満足度の高い接客ができている小規模な店舗

ただし、接客以外の部分でDXの導入が必要なケースもあります。

例えば、事前に顧客の来店数が予測できれば、省人化・省工数が実現でき、顧客に対してより満足度の高いサービスを提供できるように。また、DXによって需要予測の精度が向上すれば、適切な数の在庫を確保して廃棄や機会損失を防ぐことが可能です。

まずは「何のために店舗DXをするのか」という目的を明確にしましょう。目的なしに導入しても、「導入したシステムが自社には不要だった」というような無駄になってしまうからです。

店舗DXを進め、将来的にどのようなメリットを得たいのかを明確にすることで、適切なシステム導入につながります。

次に、DX化を進める目的・理由や、導入するシステムや機械について、現場のスタッフに共有しましょう。

DX化によって働き方が変わるのは現場のスタッフです。共有する際には、メリットを含めた情報も伝え、前向きに取り組んでもらう空気をつくりましょう。

ここからは、ステップ1で明確にした目的に合ったツールを、適切に導入する動きに入ります。

店舗DXに活用できるシステムはさまざまな種類があります。

例えば、

• オンラインでの接客ツール
• モバイルオーダーシステム
• 顧客管理システム
• 顧客行動の分析システム
• AIによる需要予測システム

などです。

また、費用も幅広いため、予算も含めて資料請求や問い合わせから始め、店舗に合ったツールを見つけましょう。

利用するシステムが決まり、導入準備ができました。まずは、一部の店舗で小さく運用を始め、システム導入後の効果を見ながら少しずつ横展開をしていきましょう。

効果を確認できたら、システムの追加導入や、多店舗での運用を検討します。

システム導入後の効果をデータとして可視化し、現場スタッフにも共有します。

このとき、併せてシステムの使用に関する意見を聞きましょう。課題があれば改善に取り組みます。こうして現場スタッフとPDCAを回すことで、現場スタッフのモチベーションアップにもつながります。