需要予測とは
需要予測とは、自社が扱う商品やサービスがどの程度売れるか推測することです。需要予測を行えば、効率的に仕入れや生産ができます。また、より計画的に資金の確保や投資も行えるようになるでしょう。商品やサービスを販売する際も、無駄な在庫が発生しにくくなります。
もちろん、需要予測は絶対に当たるとは限りません。しかし、商品やサービスを扱ううえで生じるリスクを最小限に抑えるために役立ちます。
需要予測の必要性
需要予測は、企業のビジネスを成長させるうえで重要な意味をもちます。需要をなるべく正確に試算できれば、商品やサービスの販売機会を逃さずに済みます。また、管理にかかるコストも抑えることが可能です。これらの効果により、企業全体の収益の最大化も目指せます。
なお、ここからは需要予測の手法について解説します。事前に需要予測が注目されている背景やメリット、具体的な手法について知りたい方は以下記事をご一読ください。
需要予測の手法の分類
ここでは、需要予測の手法はどのように分類できるのか解説します。
1.過去の実績を用いた統計的予測
統計的予測は、過去の実績をもとにして未来の状況を予測する手法です。具体的には、算術平均法、移動平均法、指数平滑法などの手法があげられます。
あくまでも過去の実績が基準になるため、まったく新しい事情が発生すれば予測が外れる可能性もあります。そのため、定期的に予測モデルを見直し、需要予測の精度を確認することが大切です。状況を考慮して改善を加え、精度を向上させる必要があります。
2.担当者や専門家の情報・意見による予測
担当者や専門家が保有する情報や意見をもとにして需要を予測する場合もあります。たとえば、陪審法やデルファイ法などがあります。経験や勘などに頼るため、状況が突然変化しても柔軟な予測が可能です。特に、近い将来の状況について予測したい場合に適しています。ただし、複数の人の意見を集約して予測する場合、結果を導き出すまでに時間がかかる点に注意が必要です。
3.市場調査による予測
需要予測は、市場調査の結果をもとにして実行するケースもあります。市場に参入する前の段階でも需要の予測が可能です。たとえば、新しい商品やサービスのターゲットに対してアンケートをとり、その結果を踏まえて需要を予測します。
市場調査を活用して需要予測をする場合、ほかの方法よりも期間が長めになります。コストもかかるため、予算や費用対効果を考慮したうえで実施しましょう。
4.AI・機械学習による予測
AIや機械学習による予測は、ビッグデータ等を活用して需要予測をする方法です。機械学習にはさまざまなアルゴリズムがあるため、自社がどのような予測をしたいのか明確にしたうえで実施する必要があります。
需要予測では、教師ありの機械学習が行われるケースが多いです。複雑なモデルを活用し、精度の高い結果を得られます。
需要予測の5つの手法
需要予測にはさまざまな手法があります。ここでは、代表的な5つの手法について解説します。
1.算術平均法
算術平均法は、複数の数値を平均して1つの数値とみなし、予測値を算出する方法です。過去のデータを平均し、その後も同様に数値が不規則な変動を続けると仮定して需要を予測します。
需要予測の手法のなかでは特に単純な計算方法であり、仕組みがわかりやすいです。使用するデータに誤差がある場合でもおおよその予測ができます。ただし、算術平均法を用いてもさらに大きな誤差が出る可能性もあるため、注意しましょう。
2.移動平均法
移動平均法は、数値を移動させながら平均値を割り出して予測値を得る方法です。たとえば、過去3ヶ月の実績値をもとに売上を予想する場合、過去3ヶ月分の売上を平均して予測値を計算します。具体的な計算例をあげると、以下のとおりです。
表はスライドできます
実績値 | 3ヶ月の移動平均 | |
---|---|---|
2021年5月 | 2,000円 | – |
2021年6月 | 2,300円 | – |
2021年7月 | 2,100円 | – |
2021年8月 | 2,200円 | 2,133円 |
2021年9月 | 1,900円 | 2,200円 |
2021年10月 | 2,000円 | 2,067円 |
2021年11月 | 2,150円 | 2,033円 |
2021年12月 | 1,800円 | 2,017円 |
移動平均法を活用すれば、直近のデータをもとに予測値を算出できます。そのため、膨大なデータがあっても一部のデータのみで算出することになります。
3.指数平滑法
指数平滑法は、過去の実績値と予測値から新しい予測値を算出して需要を計算する方法です。指数平滑法により今期の予測値を求める場合の計算式は、「α×前期の実績値+(1-α)×前期の予測値」です。指数平滑法におけるαは平滑係数と呼ばれる任意の指数。具体的な計算例をあげると、以下のとおりです。
表はスライドできます
実績値 | 指数平滑(α=0.2) | |
---|---|---|
2021年5月 | 2,000円 | 2,100円 |
2021年6月 | 2,300円 | 2,080円 |
2021年7月 | 2,100円 | 2,124円 |
2021年8月 | 2,200円 | 2,119円 |
2021年9月 | 1,900円 | 2,151円 |
2021年10月 | 2,000円 | 2,101円 |
2021年11月 | 2,150円 | 2,088円 |
2021年12月 | 1,800円 | 2,100円 |
指数平滑法では、αの値が1に近いほど実績を重視した予測になります。
4.回帰分析法
回帰分析法は、因果関係がある数値同士の関係性を算出し、その結果をもとに需要を計算します。たとえば、販売数と時間の関係を回帰直線と呼ばれる直線を描くことで算出し、得られた関係性から将来の販売数を導き出します。
回帰分析では予測したいデータに対して影響しうる要因を複数設定することも可能です。
5.加重移動平均法
加重移動平均法は、最新の需要変動の影響を考慮して計算する方法です。移動平均法に分類されますが、移動平均法よりも最新のデータを重視しています。加重移動平均法の計算式は「(◯月の加重係数×◯月の販売数量)+(□月の加重係数×□月の販売数量)+…+(△月の加重係数×△月の販売数量)」です。
最新のデータほど加重係数を大きく設定することで、直近データをより重視し算出します。
需要予測の手法を用いる際のポイント
需要予測の手法を用いる場合、さまざまなポイントがあります。以下で具体的に解説します。
1.過去データを用いて誤差の少ない手法を選ぶ
需要予測を行うときは、過去データを利用して手法の精度を試しましょう。過去の状況を予測し、なるべく誤差が少ない手法を採用することが大切です。過去の状況はすでに確定しているため、実績と予測を比較できます。精度を確かめたうえで需要予測の手法を選択すれば、より効果的な運用につなげられます。
2.元になるデータの質と量を上げる
需要予測においては、元になるデータの質や量も重要です。たとえば、分析に不要なデータが含まれている場合、需要予測の精度は下がってしまいます。分析に必要な要素のみを含む質の高いデータを用意しましょう。また、データの量を増やすためには、継続的にデータを集める必要があります。
3.予測値と実績値を比較・分析する
需要予測を行うだけで終わりにせず、実績値が出たらそのたびに比較することも大切です。単に予測値と実績値の誤差を確認するだけでなく、なぜ誤差が発生しているのか細かく分析する必要があります。また、商材とターゲットの特性を意識し、どのような要素が需要を変動させるのか検討しましょう。
AI活用による需要予測の事例
真空断熱ボトルや炊飯器などを製造するタイガー魔法瓶株式会社は、業務のAI化に力を入れています。特に需要予測に重点を置いており、データを有効活用した需要予測に取り組んでいます。そのために、データを社内で管理でき、パソコンのみで完結できるシステムを導入しました。
導入したシステムは操作がわかりやすく、社内だけで需要予測を実行できる体制を整備できました。自社が保有する販売実績のデータだけでなく、一般に公開されている気象データなども組みあわせて需要予測を行っています。精度を高めるために試行錯誤を重ねており、より幅広い業務で活用できるよう試行錯誤しているところです。
まとめ
需要予測は、ビジネスに取り組むうえで重要です。需要予測にはさまざまな手法があり、それぞれ考え方が異なります。自社に適した手法を選択し、需要予測の精度を高めましょう。
ソニービズネットワークの「Prediction One」は、過去のデータをもとに未来を予測するためのツールです。機械学習やプログラミングのスキルがなくても簡単に利用でき、精度の高い結果を得られます。需要予測はもちろん、業務を効率化したり新しいビジネスを創出したりするために役立ちます。
各データが予測結果にどれくらい影響を与えているか「寄与度」を得られるため、より実践的に活用が可能です。自社のビジネスの成長のために、ぜひ利用してください。
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