EPPとは?エンドポイントセキュリティの基盤
EPP(Endpoint Protection Platform)は、企業のネットワークに接続されるデバイスを保護するためのセキュリティ対策の基盤となるプラットフォームです。
EPPとは
EPPは「Endpoint Protection Platform(エンドポイント保護プラットフォーム)」の略称で、PC、サーバー、スマートフォンなどのエンドポイントをマルウェアから守るためのセキュリティ製品群の総称です。従来からあるアンチウイルスソフト(AV)も EPPの一種と考えられています。
EPPが保護対象とするエンドポイントには、デスクトップPC、ノートPC、サーバー、スマートフォン、タブレットなど、企業ネットワークに接続されるデバイスが含まれます。これらのデバイスは、企業ネットワークの「端点」として、サイバー攻撃の入口になりやすい特性を持っています。
EPPは単なるウイルス対策ソフトではなく、エンドポイントを様々な脅威から包括的に保護するための統合プラットフォームとして位置づけられています。EPP製品のほとんどは、マルウェア対策、ファイアウォール機能、侵入検知・防止、デバイス制御など複数の保護機能を統合して提供しています。
EPP市場の現状と成長性
EPP市場は急速に成長を続けており、Emergen Research社の調査によれば、2021年には約33億ドル規模だった市場が、2030年には69億ドル規模へ成長すると予測されています。(引用:2030年のエンドポイント保護プラットフォーム市場規模は69億1000万ドル)
この成長は、サイバー攻撃の高度化とテレワークの普及による企業のセキュリティ意識の高まりを表しているといえます。
特に近年注目されているのが、クラウド型EPPの需要拡大です。クラウド型EPPは、従来のオンプレミス型と比較して、初期導入コストが低く、運用・保守の手間が少ないことが大きなメリットとなっています。また、クラウドから常に最新の脅威情報を取得できるため、新種のマルウェアに対しても比較的迅速な対応が可能とされています。
テレワークの広がりにより、社外からのアクセスが増加する中、従来の内部からの脅威に脆弱な境界型セキュリティに代わるセキュリティ対策としてネットワーク境界に依存しないEPPの重要性が高まっています。エンドポイントそのものを守る仕組みが、分散型の働き方においては必須のセキュリティ要素となっているのです。
加えて、ゼロトラストセキュリティモデルの観点でも、EPPとEDRは「全ての端点を信頼しない」前提の防御として重要な役割を果たします。
従来型アンチウイルスからNGAVへの進化
エンドポイント保護の中核技術は、従来型のアンチウイルスソフトから次世代アンチウイルス(NGAV)へと進化しています。
従来型アンチウイルスの仕組み
従来型のアンチウイルス(AV)ソフトウェアは、主にシグネチャ(パターンファイル、定義ファイル)に基づいた検出方式を採用しています。この方式では、既知のマルウェアの特徴をデータベース化し、ファイルがそのパターンと一致するかどうかを検査します。
シグネチャベースの検出方式は、既知のマルウェアに対しては高い検出率を誇りますが、新種のマルウェアやゼロデイ攻撃には対応できないという大きな課題があります。ウイルス定義ファイルの更新が新種のマルウェアの出現に追いつかず、「検出→定義ファイル作成→配布→更新」というサイクルに時間差が生じます。
従来型AVでは、未知の脅威に対して「後手に回る」という根本的な問題があり、高度化・巧妙化するサイバー攻撃への対応が困難になっています。また、定義ファイルの肥大化によるシステムへの負荷増大も課題となっていました。
NGAVが活用する新しい検出技術
NGAV(Next Generation Anti-Virus:次世代アンチウイルス)は、従来型AVの限界を克服するために開発された新しいタイプのセキュリティ技術です。NGAVは単一の技術ではなく、複数の先進的な技術を組み合わせたアプローチを採用し、未知の脅威を予測して検知することができます。。NGAVが活用する主な検出技術には以下のようなものがあります。
| 検知方法 | 説明 |
|---|---|
| 振る舞い検知 | プログラムが実行する操作をリアルタイムで監視し、不審な動作パターンを検知します。 |
| 静的ヒューリスティック | プログラムを実行せずにコードを解析し、悪意のある命令や構造を特定します。 |
| 機械学習 | 大量のデータからパターンを学習し、未知のマルウェアも検出できるよう自動的に進化します。 |
| サンドボックス技術 | 隔離された安全な仮想環境でプログラムを実行し、その振る舞いを分析します。 |
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これらの技術を組み合わせることで、NGAVは既知のマルウェアだけでなく、未知のマルウェアや高度な標的型攻撃(APT)にも対応できる検出能力を実現しています。また、多くのNGAV製品は従来のシグネチャベース検出も併用することで、検出の確実性を高めています。
NGAVのもう一つの大きな特徴は、クラウドベースの情報共有と分析能力です。あるユーザーのエンドポイントで検知された脅威情報がクラウドに送信され、分析後すぐに全ユーザーのエンドポイントに配信されるため、脅威への対応スピードが大幅に向上します。
EPPとEDRの違いと連携の重要性
エンドポイントセキュリティを強化するには、EPPとEDRの違いを理解し、それぞれの役割を活かした連携が重要です。
EPPとEDRの役割の違い
EPP(Endpoint Protection Platform)とEDR(Endpoint Detection and Response)は、どちらもエンドポイントセキュリティに関わる重要な要素ですが、その目的と機能には明確な違いがあります。
| 項目 | EPP | EDR |
|---|---|---|
| 主目的 | 侵入前の防御(予防) | 侵入後の対応(検知・駆除・調査) |
| 対象範囲 | 既知・未知のマルウェア防御 | ログ分析・リアルタイム検出・脅威ハンティング |
| 主な役割 | 検出・ブロック・駆除 | 封じ込め・調査・復旧支援・証拠保全 |
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EPPは「予防」を主目的としており、マルウェアやその他の脅威がエンドポイントに侵入するのを防ぐことに重点を置いています。一方、EDRは「対応」に焦点を当て、すでに侵入した脅威を検出し、その影響範囲を特定して対応するツールです。
EPPは「ゲートキーパー」として機能するのに対し、EDRは「検知と対応のスペシャリスト」として、侵入に成功した脅威への対処を担当します。現代のサイバーセキュリティでは、「侵入を完全に防ぐことは不可能」という前提に立ち、侵入を前提とした対策が重視されるようになっています。
関連記事:EDRとは?EPP・アンチウイルスとの違い、仕組み、機能を解説
EPPとEDRを併用するメリット
EPPとEDRは相互補完的な関係にあり、両者を併用することで、より強固なエンドポイントセキュリティを実現できます。EPPとEDRを併用する主なメリットには下記のようなものがあります。
| 利点 | 説明 |
|---|---|
| 多層防御の実現 | 防御(EPP)と検知・対応(EDR)の両方を備えることで、サイバー攻撃のさまざまな段階に対応できます。 |
| 可視性の向上 | EDRによって収集される詳細な活動ログは、セキュリティインシデントの全容把握に役立ちます。 |
| インシデント対応の迅速化 | EDRの調査・分析機能により、侵害の範囲特定と対応が迅速になります。 |
| 適応型セキュリティの実現 | EDRで得られた知見をEPPの防御強化にフィードバックできます。 |
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「予防」と「対応」の両方を備えることで、サイバーセキュリティの基本原則である「多層防御(Defense in Depth)」が実現でき、単一の防御層が破られても被害を最小限に抑えることができます。
近年では、EPPとEDRの機能を統合したXDR(Extended Detection and Response)や、エンドポイント保護に特化したマネージドサービスであるMDR(Managed Detection and Response)なども登場し、エンドポイントセキュリティの選択肢はさらに広がっています。
- yarai
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標的型攻撃で利用される未知の脆弱性や マルウェアの検知・防御に特化した エンドポイントセキュリティ
- WatchGuard Endpoint Security
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Endpoint Protection Platform (EPP)の次世代アンチウイルス、Endpoint Detection and Response (EDR)、DNSフィルタリングソリューションなど、エンドポイントへの高度なサイバー攻撃を阻止するために必要な技術を提供
まとめ
EPP(Endpoint Protection Platform)は、企業のエンドポイントセキュリティを担う基盤として、従来のアンチウイルスから進化を遂げています。現代のEPPは、単なるマルウェア対策だけでなく、機械学習や振る舞い検知などの先進技術を活用して未知の脅威にも対応できる次世代アンチウイルス(NGAV)へと進化しています。
効果的なエンドポイントセキュリティを実現するには、予防に重点を置いたEPPと、検知・対応に特化したEDRを併用することが重要です。両者の連携により、サイバー攻撃の予防から検知、対応、復旧までの一連のプロセスをカバーする多層防御が可能になります。エンドポイントセキュリティ市場は今後も拡大が予測されており、クラウド型EPPの需要が高まっています。企業の情報システム部門は、自社のセキュリティニーズに合ったEPPソリューションの選定と運用体制の構築を検討していくことが求められています。
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