売上予測とは
売上予測とは、過去の売上傾向から将来の売上を予測することです。経営陣は、売上予測の数値をもとに、経営的な判断を行います。
売上予測はさまざまなデータを基に算出される客観的数値です。売上目標とは異なり、「これくらいの売上になればいいな」という理想の値ではありません。
1.売上予測に必要なさまざまなデータ例
売上予測に必要なデータは、業界や扱う製品・サービスによって異なります。例えば、以下のようなデータを使います。
- ・商品ごとの売上実績
- ・期間ごと(月、四半期、年度)の売上高
- ・見込み顧客(セールスリード)からの成約率
- ・期間ごと(四半期、年度)の平均成長率
- ・現在の案件数
- ・サービスのリピート率、解約率
ここに挙げたのはあくまでも一例です。売上予測を立てるときは、自社の業種によって複数のデータを組み合わせながら厳密に予測しましょう。
2.売上目標との違い
売上目標は、売上に対する希望や理想、期待、考えが入ったものです。企業としての構想などを実現するために目指すべき到達点であるともいえます。売上目標を売上予測の数値に基づいて設定する場合もありますが、あくまで主観的な数値であることが特徴です。
これに対して、売上予測は客観的な数値となります。
エクセルによる売上予測
現在、企業において広く行われているのが、エクセルによる売上予測です。エクセルはMicrosoftのofficeツールのひとつで、全世界で幅広く使われており、使い慣れている人が多いこともメリットといえます。Excel2016から「予測シート機能」が搭載されており、売上予測に利用している企業も多いでしょう。
ただし、Excelには、売上予測に利用する際のメリットとデメリットがあります。
1.Excelによる売上予測のメリット
Excelの最大のメリットとして、多くの人が使い慣れていることが挙げられます。全世界で使われているだけあって操作性も良く、マクロの知識・スキルがなくても問題なく売上予測に活用できることが魅力です。
関数やグラフなど、使える機能も豊富で、Office 365などのクラウドサービスならオンライン共有で複数の人が同時に編集することもできます。
2.Excelによる売上予測のデメリット
Excelはあくまで表計算ソフトであり、データ管理ツールではありません。つまり、管理できるデータ量に限界があるのです。膨大なデータの管理や素早い抽出・分析には不向きで、データが大きくなりすぎるとデータの破損によって、会社にとって損失となる可能性もあります。
売上予測の精度を高める方法
売上予測の精度はどのようにして高めることができるのでしょうか。売上予測の精度を高める方法や、より精度の高い情報分析をするために必要なものについて、詳しく解説します。
1.ITツールの導入
精度の高い売上予測を行うならば、ITツールの導入がお勧めです。売上予測に役立つ代表的なツールは、SFA(営業支援システム)と呼ばれるものです。SFAは、案件管理など営業職に関連する仕事を支援するもので、支援内容のひとつに売上予測があります。
また、AIを活用したシステムでは、商談の内容をAIが分析し、精度の高い売上予測につなげます。
2.組織・チーム内のコスト意識の統一
組織内やチーム内で、売上予測が経営に与える影響を共に理解すると、売上予測の精度を高めることにつながります。場合によっては、売上予測に関する研修も行うと良いでしょう。
イレギュラーな値引きなど売上にムラがあるようなデータは、またそもそも入力されたデータ自体が不確かであるなど、チーム内の意識が統一されていないと精度の低い売上予測につながる恐れがあるため気をつけたいポイントです。精度の低い売上予測はさまざまなリスクを生んでしまいます。
3.組織・チーム全体の協力体制
先を見越した正確な予測には正確なデータが必要です。正確なデータを得るためには、組織やチーム全体の協力体制ができていることが重要になります。
情報の共有ができない環境では、予測に使用するデータに不備等が生じ、予測が曖昧になることが考えられるでしょう。見込みの売上など、リアルタイムな情報を組織内・チーム内で共有して、精度の高い売上予測を目指しましょう。
売上予測の良い影響
売上予測が正確であればさまざまなメリットがあります。精度の高い売上予測による良い影響について解説します。
1.予算管理に重要
精度の高い売上予測ができていると、借り入れや設備投資、宣伝・広告活動などの予算の分配が適切に行えます。
この分配が適切でないと、予算が不足して資金繰りが悪化したり、最適な広告活動が行えず売上そのものが落ち込んだりする可能性もあります。売上予測が正確であれば、客観的数値を基に予算管理が可能になり、資金繰りの悪化や予算の立て直しのリスクを減らすことができます。
2.適切な人事ができる
売上予測を正確に行い、各部門の売上見込みを把握することで人員配置の参考にもできます。売上や業務量の多い部署に人員が少ないと、ミスやクレーム、労働超過、離職などの原因になることもあるでしょう。売上予測を参考にスタッフの増員や配置換えなどを適宜行うことで、離職率を上げない対策にもなります。
3.在庫管理や生産量の適切な管理ができる
在庫を確保するべき商品数は売上に応じて変動します。売上予測ができていない場合、仕入れ過剰、生産過剰、あるいは生産不足で商機を逃すこともあります。売上予測により、事前に売上見込みを把握することで、過剰在庫、在庫不足を防ぎ、より最適な生産管理の実現が可能になります。
売上予測の悪い影響
売上予測がビジネスに悪い影響を及ぼす場合があります。それは売上予測の精度の悪い場合です。製造や開発などを行う企業にとって、売上予測の精度は大変重要です。販売計画、生産計画、調達計画などの局面を取っても、精度が悪いと計画と実績とのズレが生じる可能性が高くなります。最終的には、企業全体としての損失にもつながってしまうことがあります。
1.無駄なコストがうまれる
売上予測の精度が悪いと、在庫コスト、廃棄ロス、調達コスト、人件費の増加など無駄なコストをかけてしまう可能性があります。
多く売れると予測すれば、調達コストをかけ、人材や在庫も多く準備するでしょう。ところが、実際には少量しか売れなければ、在庫過多や余剰人員が発生してしまいます。また、見込み売上で資金調達した場合は金融機関からの借り入れなどの損失につながることもあります。
2.顧客サービスの低下
精度の悪い売上予測では、在庫不足で販売機会の損失や見込み客を逃すことにつながります。商品の販売機会を逃すということは、顧客が商品をほしがっているときに要望を満たせないということでもあり、顧客満足度の低下につながる可能性もあります。また、販売量に対して人手が足りない場合も、顧客の要望を満たせなくなるでしょう。
3.売上の低下
売上予測の不確実性は、準備不足からくる生産の遅れにつながります。生産の遅れは販売機会の損失であり、買いたいと思っている顧客の満足度を下げてしまうことで、売上低下にもつながってしまう可能性もあります。
つまり、精度の低い売上予測により、在庫管理などが最適な形で運用されなくなることで、会社全体の売上減少にもつながります。
売上予測の基本的な立て方
企業活動にとって重要な売上予測はどのように立てたら良いのでしょうか。ここでは、基本的な売上予測の方法について、2つ紹介します。
1.過去の売上データを使った計算
売上予測は過去の実績を基に算出できます。過去の同月の売り上げと年間成長率から計算する方法がオーソドックスです。
基本は「一年前の売上✕年間平均成長率=今年の売上」という計算です。ここでは、年間平均成長率が問題となるので、過去のデータが増えるほど精度は増します。年間平均成長率は「CAGR[年平均成長率]= (N年度の売上÷初年度の売上) ^ {1÷(N年-初年)}-1」という式で算出できます。
過去の売上データを使った計算は、過去の実績売上データがない新規事業には向いていません。
2.営業パイプラインを使った売上予測の立て方
営業パイプラインとは、営業のプロセスと実際の顧客数を照合しながら、どれくらいの量の顧客がどの程度のリードタイムを経て、成約に至るかを常に分析しておく方法です。
営業活動の全体をいくつかのプロセスに分け、各プロセスにおける現在のデータと過去の実績(顧客数、リードタイム等)を組み合わせることで予測を行います。新規事業でも、短いスパンでの暫定的な予測が立てられるのがメリットです。
ただし、数字で表記できる要素のプロセスでなければ予測が立てられません。
効率的な売上予測にデータの精度は不可欠
効率的な売上予測のためには、データの精度は不可欠です。しかし、ビジネスの現場は、日々状況が変化しています。変化をリアルタイムに近い速さで反映することで、売上予測の精度を高められるでしょう。
日々集められるデータから精度の高い売上予測を行うには、生身のデータの素早い整理と活用の仕方、統計・解析スキルが重要です。集められるデータの種類や、どのような分析から精度の高い売上予測を得られるかについては、予測分析実施前だけでなく、予測した後にも検証を行いましょう。
AIによる売上予測が注目されている理由
現在、売上予測を立てるツールとしては、AIが注目されています。AIによって行われる売上予測は非常に精度が高く、根拠ある生産計画を立てられるため、収益の最大化が図れるためです。
売上予測が正確であれば、設備や人材の稼働を最適化することにもつながります。効率よく、ロスの少ない経営計画は利益の増加が期待できます。
まとめ
売上予測は、簡単に行うものであれば、これまでのデータを使って計算をするだけで難しいことではありません。しかし、売上には様々な内部/外部要因が影響していることが多く、その売上の予測が正確でなければ生産や広告、人材配置などのタイミングがずれてしまい、売上の低下につながってしまいます。
正確な売上予測を行うためにはAIの活用がおすすめです。需要予測は「予測分析」というAIの手法によって行うことが可能です。
下記資料では、予測分析を行うことでビジネスにどんなメリットがあるのか、導入事例を交えながらご紹介していますのでぜひご覧ください。
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