01. IPv4 over IPv6の概要、誕生の背景
IPv4 over IPv6とは?
IPv4 over IPv6とは、従来から利用されているIPv4と、次世代型のIPv6の両方に対応できる、新たな接続方式です。IPv6(IPoE)接続の高速性や安定性といったメリットを享受しながら、広く普及しているIPv4(PPPoE)接続にも対応することができる、「良いところ取り」な技術といえます。このIPv4 over IPv6はサービス名として、「v6 プラス」と表記される場合もあります。
IPv4 over IPv6がインターネット光回線の速度に悩むユーザー向けサービスとして注目を集める理由(メリット)は、大きく以下の3点です。
- IPv6 環境下でIPv4アドレスによる接続が可能
- 通信の安定性が高く、快適
- 通信速度が改善する
まずは、その理由を解説します。
光回線は、網終端装置を中継して接続する方式が主流です。しかし、アクセスが集中すると通信速度が遅くなることが課題でした。一方、インターネット回線に接続するまでに中継ポイントを介さない、新たな接続方式のIPv6(IPoE)を選択することで、インターネット接続の速度低下を防ぐことができます。
しかし、IPv6(IPoE)を利用するためには、インターネットへ接続する企業側だけでなく、アクセスする先のWebサイトなどの接続サービス側も、IPv6対応である必要があります。どちらもIPv6に対応していない場合は、そもそも接続しようとするWebサイトなどにアクセスできません。
そこで登場したのが、「IPv4 over IPv6」という技術です。IPv4 over IPv6は、IPv6パケットの中にIPv4パケットを包含して通信する「カプセル化」という技術を用います。IPv4 over IPv6では、IPv4(PPPoE)で混雑しがちな網終端装置を介さずにインターネットへ接続することが可能です。そのため、IPv4を利用する環境下でも、快適な高速通信が期待できるのです。
IPv4 over IPv6技術が開発された背景
皆さんもご存じの通り、以前からIPv4アドレスの枯渇が叫ばれ、IPv4に代わる新たな規格として、IPv6への移行が進められています。しかし、現在でもまだ多くの通信はIPv4であり、混在状態にあります。代表的な例では、Googleの検索ページやFacebookなどはIPv6対応サイトですが、X(旧Twitter)やAmazonなどIPv4のみ対応のWebサイトは、IPv6では閲覧できません。
そのため、IPv6とIPv4を臨機応変に利用できる技術の必要性が高まり、両方を上手く使い分けられるIPv4 overIPv6という、新たな技術が生まれました。
さらに正しく理解するために、ここからはそもそもIPv6とは何なのか、IPv4との違いについて、インターネット接続の仕組みであるIPoEとPPPoEの違いも含めて、解説します。
*IPv4 over IPv6のIPv6との違い、メリット、注意点が知りたい方は、
次章<02.基礎知識>を飛ばして、<03.IPv4 over IPv6のメリット・注意点>へお進みください。
現在のプロバイダーがPPPoE接続のみしか対応していないという場合を除いて、
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02. 基礎知識: IPv4(PPPoE)とIPv6(IPoE)とは?
そもそもIPv6とは?IPv4とは何が違う?
IPv4は、1990年代後半から使用されている従来型の接続方式。「Internet Protocol Version 4」の略称であり、IPのバージョン4にあたります。
IPとは、簡単に言えば「インターネット通信を行うためのルール」です。このIPが定めるルールの1つに、インターネット接続に必要な「IPアドレス」の管理があります。IPアドレスとは、PCやスマートフォンなどのデバイスを識別する番号のことです。郵便物(データ)を家(デバイス)に届けるためには、住所(IPアドレス)が必要、というイメージです。
IPv4で利用できるIPアドレスの数には限りがあります。近年、PCやスマートフォン、タブレット端末などが爆発的に普及し、1人2台以上を所有するケースも増加しました。そのため、IPv4では全世界で利用される端末を管理しきれないという課題が顕在化しました。
そこで誕生したのが、IPv6です。IPv6とは、「Internet Protocol Version 6」の略称で、IP(インターネットプロトコル)規格のバージョン6にあたります。
IPv4とIPv6にはさまざまな違いがありますが、いちばん分かりやすいのは「使用できるIPアドレスの数」です。
- IPv4で使用できるIPアドレスは全世界で約43億個。
- それに対し、IPv6で使用できるIPアドレスは約340澗(かん)個。
約340澗とは、「340兆の1兆倍の1兆倍」という、無限大に近い数であり、IPアドレスの枯渇問題の不安が解消するとして、普及が推進されているのです。
表はスライドできます
IPv4 | IPv6 | |
---|---|---|
IPアドレス数 | 約43億 | 2の128乗、約340澗(1澗菅=1兆×1兆×1兆) |
表記方法 | 32桁の2進数で表記 | 16桁を8つに区切った上で16進数で表記 |
網終端装置 | 要 | 不要 |
対応機器 | IPv4対応のルーター | IPv6対応のルーター |
IPv4からIPv6に変更する際は、設定変更やルーターの買い替えが必要になる場合もあるため、注意が必要です。
IPv6の接続方式は「PPPoE方式」と新方式の「IPoE方式」の2つが利用可能
もう一つ、IPv4とIPv6の大きな違いが、接続方式です。
IPv4で使われている接続方式は「PPPoE方式」。それに対し、IPv6では従来方式である「PPPoE方式」と新方式の「IPoE方式」の2つが利用可能です。
次に、それぞれを詳しく解説します。
PPPoEとは?
- IPv4で使用されるPPPoEとは「Point-to-Point Protocol over Ethernet」の略称。その名の通り、PPPをイーサネットに応用して接続する通信プロトコル(規格)の方式です。
- PPPoE方式は網終端装置を中継するため、「トンネル方式」とも呼ばれています。また、PPPoE方式ではインターネットに接続する際、中継ポイントにアクセスするために「認証ID・パスワード」の入力が必要です。
- IPv4ではIPv4とこのPPPoEの組み合わせによってインターネット回線に接続。IPv4方式のWebサイトにのみ、アクセスできます。
- 前述の通り、PPPoE方式ではインターネットに接続する際に網終端装置を通過します。インターネットの利用者が多くなるとデータ通信量も増加し、この網終端装置が混雑して渋滞してしまい、通信速度が遅くなるという課題があります。
- IPv6にも、IPv6とPPPoEの組み合わせによるIPv6(PPPoE)があります。しかし、IPv4には対応しておらず、通信速度は「IPv4(PPPoE)」と大差ありません。
IPoEとは?
- IPv6で使用されるIPoEとは、「Internet Protocol over Ethernet」の略称。電話回線を用いる接続技術をイーサネット上に応用させたPPPoE方式とは異なり、イーサネットの利用を前提として、プロバイダーを介してインターネットに直接接続する方式です。
- PPPoE方式と違い、IPoE方式ではインターネットに接続する際、中継ポイントにアクセスするための「認証ID・パスワード」の入力が不要です。そのため、IPoE方式は「ネイティブ方式」とも呼ばれます。
- IPoE方式はプロバイダーのネットワークに直接接続して通信するため、安定した高速通信が可能です。PPPoEと比較し、中継ポイント(料金所)がなく、渋滞しにくい道路をイメージすると分かりやすいと思います。
- 繰り返しになりますがIPv6はPPPoEとIPoEの両方が使用できます。ですので、「IPv6は通信が速い」というのは厳密には正しくなく、正確には「IPv6 IPoE方式が速い」ということになります。
- なお、IPoE方式はIPv6のIPアドレスを使用したWebサイトにのみ接続可能です。IPv4のIPアドレスを利用したWebサイトには、アクセスできません。
関連記事: IPv4との違いや接続方式PPPoEとIPoEについても解説
03. IPv4 over IPv6のメリット・注意点
ここからは、IPv4 over IPv6を利用した場合のメリットについて解説します。
IPv6とIPv4 over IPv6の違い
IPv6とIPv4 over IPv6との明確な違いは、IPv4へのアクセスや通信が可能かどうか、という点です。
IPv4 over IPv6のメリット
IPv4 over IPv6のメリットは、以下の通りです。
メリット①:IPv6環境でもIPv4が利用できる(IPv4のみ対応のWebサイトにも接続可能)
IPv4 over IPv6では、IPv6環境でもIPv4形式の通信パケットの利用が可能です。たとえば、IPv6でインターネット回線に接続した場合、WebサイトがIPv4対応でも直前でIPv6からIPv4へ自動変換されます。したがってIPv4、IPv6のどちらのWebサイトにもアクセスできます。
メリット②:通信速度の改善に役立つ
IPv4 over IPv6を利用する最大のメリットは、通信速度の改善に役立つことです。IPv6 環境で通信することにより、アクセスが集中する終端装置を介さないため、通信速度がIPv4よりも改善される場合があります。また、安定した通信を維持できるため、通信速度が遅いと悩む心配はありません。
NUROブランドの法人向けインターネット接続サービス「NUROアクセス」では、IPv4とIPv6のどちらも利用可能な「デュアルスタック方式」を採用しています。またお客様オフィスからインターネットまでのネットワークを1社で提供しており、中継ポイントがなく、安定した速度と接続が実現できます。
IPv4 over IPv6の注意点・よくある質問
次に、IPv4 over IPv6を利用する際の注意点と、よくある質問について解説します。
提供しているプロバイダーと、対応ルーターは?
IPv4 over IPv6の利用には、提供しているプロバイダーや利用するルーターがIPv4 over IPv6に対応している必要があります。IPv4 over IPv6に対応したルーターを選択する際は、契約するプロバイダーの接続方式とルーターの接続方式を合わせることが必須であるため、プロバイダーからレンタルするのが確実です。
IPv4 over IPv6の通信技術は、「4rd/SAM」「MAP-E」「DS-Lite」の3つに分類されます。いずれも、IPv6とIPv4に対応していますが、「4rd/SAM」と「MAP-E」はポート開放が可能なものの、「DS-Lite」はVNEによるNAT変換のため、ポート開放はできません。
プロバイダーによって採用する通信技術が異なるため、必要に応じてオプションへの申し込みや追加料金の支払いなどが必要になるケースもあります。IPv4 over IPv6に切り替える際は、プロバイダーと対応ルーターの確認を忘れずに行いましょう。
ポート開放はどうなる?固定IPは利用できる?
IPv4 over IPv6では、IPアドレスのほか、ポートも複数のユーザーと共有します。そのため、ポート開放は制限され、割り当てられたポートのみを開放できます。
また、IPv4 over IPv6では固定IPが使用できないため、利用できる接続サービスも少ないです。それにより、これまで利用できたサービスでも、IPv4 over IPv6で利用できなくなるケースも少なくありません。
たとえば、VPS(仮想専用ネットワーク)などのPPTPや、Linux kernel・Solaris・AIXなどのOSを始めとするSCTPを利用するサービスは利用できないので、注意が必要です。広く利用されているWindowsやMacなどのOSは使用できます。
関連記事: IPv4とIPv6の通信速度の違いは?
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まとめ
いかがでしょうか。本コラムでは、IPv4 over IPv6技術の仕組みやメリット、サービスを選ぶ際の注意点について、さらにその正しい理解のために必要なIPv4(IPoE接続)とIPv6(PPPoE接続)のそれぞれの特徴と違いについて、解説しました。
まとめると、以下のようになります。
- IPv4 over IPv6は、従来から利用しているIPv4と次世代型のIPv6の両方に対応できる新たな接続方式
- メリットは、IPv6 環境下でIPv4アドレスによる接続が可能な上に、通信が安定し、通信速度の改善に役立つ
NUROブランドの法人向けインターネット接続サービス「NUROアクセス」は、通信速度下り最大10Gbps/2Gbpsを実現する高速インターネット接続サービスです。10Mbps以上の帯域確保が標準スペックになっており、高品質かつハイスペックでありながら、コストパフォーマンスにも優れています。
また、NUROアクセスではIPv6をデュアルスタック方式にてご提供。そのため、物理的な接続構成を変更することなくIPv4とIPv6双方のご利用が可能です。
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IPv4 over IPv6とは?どんなメリットがある?
【パンフレット概要】
IPv4(PPPoE接続)と IPv6(IPoE接続)の違いやそれぞれのメリット、選び方の注意点など解説します。