クラウド エンジニアブログ

「Kiro」って何?概要からAmazon Q Developerとの使い分けまで徹底解説

2025年9月1日掲載

ソニービズネットワークス AWS Ambassador の濱田です。
最近、毎日のように生成 AI のアップデートが行われていて、非常に楽しい時代に生まれたな、と実感しています。
そんな中、AWS は7月の中頃に「Kiro」という新たなサービスのパブリックプレビューを開始しました。これはいわゆる「Cursor」や「Cline」を設定した VS Code と同じような AI 統合開発環境(Agentic AI IDE)で、非常に話題になっています。

※ 余談ですが、公開直後からダウンロードが殺到し、世界中の Amazon Bedrock が動かなくなったほど注目を集めています。次の日には waitlist 形式に変更されました。

今回のブログでは、Kiro とは何か、どんな機能があるのか、なぜ注目されているのか、どうやって使えばいいのか等、Kiro について徹底的に解説していきます。

Kiro の特徴

「仕様駆動開発(spec-driven development) 」というアプローチが鍵

前述の通り、Kiro とは AI 統合開発環境(Agentic AI IDE)です。
これだけを見ると、最近流行っている「Cursor」や「Cline」 (を入れた VS Code)、と一緒に思えるのですが、「仕様駆動開発(spec-driven development) 」というアプローチで差別化を図っています。

「仕様駆動開発(spec-driven development) 」とは、要件定義、仕様書作成、ToDo リスト作成、開発のプロセスで AI エージェントに開発を進めさせるアプローチです。従来の AI エージェントを使ったコーディング、いわゆる「Vibe Coding」では、AI エージェントの書いたコードに一貫性が無いケースがありました。最初にドキュメントを作成し、それに沿って開発させる事で、一貫性のあるコードを書かせる事が「仕様駆動開発(spec-driven development) 」の狙いです。

利用イメージ

AI 主導による開発を実現する「spec モード」

「要件定義って難しいのでは……?」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、Kiro の素晴らしいところは、それすら AI エージェントが実施してくれるところです。

まずは Kiro を起動し、トップ画面で「spec モード」を選択し、プロンプトを入力します。
Kiroのトップ画面でspecモード選択しプロンプトを入力

すると、必要そうな情報を自分で検討し、以下のようにあっという間に要件定義書を作成してくれます。

要件定義書を作成してくれます

次に、チャットでディスカッションしながらイメージしているアプリに近づけていきます。要件定義書が完成したら、「move to design」のボタンを押下しましょう。
すると、こんな感じで設計書を作成してくれます。

要件定義書が完成し「move to design」のボタンを押下で設計書を作成してくれます

スクリーンショットでは見切れていますが、インフラ設計、UI 設計、データベースのスキーマ設計まで全て揃っています。こちらもチャットベースでディスカッションしながら内容をブラッシュアップして、終わったら「move to imprementation plan」ボタンを押下します。
最終的に、以下のようなタスクリストが完成しました。

チャットベースでディスカッションした内容をブラッシュアップして、「move to imprementation plan」ボタンの押下し完成したタスクリスト

あとは task.md 内の「Start task」を押下すると、AI エージェントがその項目毎にコーディングを開始します。
このように、従来人間が行っていた開発プロセスを全て AI が行ってくれるのが、「spec モード」の特徴です。生成 AI に慣れていない人、開発の経験が無い人でもこのプロセスを踏襲出来るようになる点が、Kiro の強みではないでしょうか。

その他の機能

充実した、AI エージェントの能力を引き出す為の機能

コーディングモードの他にも、Kiro は様々な機能を持っています。IDE の左メニューの「お化け」アイコンをクリックするとこれらにアクセス可能です。
※ 以下赤枠はクリック後に表示されるメニュー
IDE の左メニューの「お化け」アイコンをクリックするとこれらにアクセス可能

今回は代表的なものについて、簡単にご紹介します。

  • Steering: コーディング規約を設定するもの。これによって、企業毎の独自ルールや変数命名規則等を生成コードに反映できる。「Generate Steering Docs」ボタン1つで既存のコードから作成してくれる。
  • hooks: エージェントが動く際、特定のタイミングで特定の処理を挟める機能。例えば、実行完了時に音を鳴らしてユーザに通知する、のように使える。自然言語で設定したい内容を説明すると設定を入れてくれるところがオシャレ。
  • MCP: エージェントに外部ツールを読み込ませて、機能拡張するためのもの。例えば、web 検索や社内データの検索、AWS Lambda の実行等が出来る。

特に、Steering を設定する事で AI エージェントの精度を底上げできます。
作成もボタン1つなので、ぜひ利用しましょう。

Kiro を使いこなす為のコツ

ここまでで Kiro がどんな機能を持っているかについて何となく理解頂けたのではないでしょうか。Kiro は初心者でも簡単に使える設計になってはいますが、何も考えずに使うと精度が上がらず(求めている品質のコードが生成されず) 、残念な PoC 結果となるかもしれません。実は、Kiro を使いこなすにはいくつかポイントがあります。

  1.  Spec モードを利用する
    本格的なアプリケーションを開発する際は、必ず Spec モードを利用しましょう。複雑な UI で、様々な API・データベースと絡み合ったアプリを作成しようとすると、Vibe Coding では限界があります。Spec モードを使ってドキュメントに沿って開発させる事で、各機能の連携部分に一貫性を持たせる事が可能です。
  2.  Steering をちゃんと書く
    コードを書いていくと、変数の命名規則やエラー処理の方法がだんだんズレて、一貫性がなくなっていく事があります。これは可読性や後のメンテナンスの為にも、非常に重要なポイントです。技術的な負債を減らす為にも、必ず Steering を作成してから実装を進めましょう。
  3.  細かく テスト & Commit する
    様々なテクニックを駆使して AI の実装に一貫性を持たせようとしていますが、AI が新しい機能を作成する際、過去のロジックを書き換えてしまう事はよくあります。なので、意図と異なるコードが生成された場合、すぐに戻せるようにしておく事が重要です。(伝わる方がいるかはわかりませんが、 )AI によるコーディングは、一昔前のソーシャルゲームでガチャを回して、SSR が出るまでリセットするようなものです。作業中、少し進捗があるたびにテストして、問題がなければその都度 Commit していきましょう。

これらのポイントを押さえる事で、Kiro の使い勝手は各段に向上するはずです。ぜひ様々なアプリケーションを作ってみて下さい。

Kiro と Amazon Q Developer の使い分け

Kiro について知れば知るほど、AI エージェントを活用してきた方なら次の疑問が浮かぶのではないでしょうか。
「Kiro と Amazon Q Developer って、どうやって使い分ければいいの?」
結論から言うと、最終的には好みになってくると思います。いずれのツールも、目的は「AIエージェントを駆使してアプリケーションを開発する」なので、実現出来る事は一緒です。とはいえ使っているうちに、どんな人にどちらが合いそうか、という所感は見えてきたので、そちらをご紹介します。

ポイントは、作業主体は誰か? です。この「誰」には人間か AI が当てはまります。あくまで人間が主体的にコーディングを進める場合(一人でコードを書ける場合)、Amazon Q Developer のようにエージェントベースのツールが合うと思います。
この場合、AI ツールは開発者の能力を拡張するものとして動くので、こなせる仕事量が各段に増えるでしょう。
反対に AI 主導でアプリ開発を行いたい場合(初心者・非エンジニア含む)、専門知識が少なくても安定的に動作する Kiro の方が快適に使えるはずです。

その他の観点としては、開発以外のタスクをどれくらい任せるか、でしょうか。
例えば、Amazon Q Developer は運用業務にも活用できる為、全ての業務に AI を取り入れるのであれば、Amazon Q Developer の方がコストパフォーマンスに優れます。あくまで開発に特化 + 初心者が開発を行うなら、Kiro が合うと思います。

注意事項

必ずコードレビューをしよう

AI を利用すると非常に速く、かつ多少知識が無くてもアプリを実装出来ますが、そのまま本番環境に適用するのは非常に危険です。何故なら、AI は脆弱性のあるコードを生成するリスクを持っているからです。
例えば、以前私がパラメータストアから API キーを取得するコードを書かせた時の事です。Bedrock のモデルC君は以下のコードを生成しました。
パラメータストアからAPIキーを取得するコードを書かせBedrockのモデルC君が生成したコード
お分かりでしょうか……?
あろうことか、機密情報である API キーをログに出力したのです!何のために暗号化してパラメータストアに入れていると思っているのか!!もちろんこの時はしっかりコードレビューしていたので、笑い話で済みました。実際のコード開発ではもっと複雑なコードを生成させる事になると思います。コードレビューは確かに大変ですが、生成 AI を使う際は必ず全てのコードをチェックし、少しでも理解出来ないコードをマージしない事が非常に重要です。

まとめ

Kiro はコーディングの民主化を実現する画期的なツールです。現在はまだパブリックプレビューですが、GA されたらエンジニア・非エンジニア問わず活用され、AI によるアプリ開発を一般的にしていくツールだと思います。
一方で、全くの知識ゼロでアプリ開発出来るかというと、現状まだ厳しいです。
何故なら AI のコードをチェックし、脆弱性の有無を判断できるだけのスキルは依然として必要だからです。とはいえ GitLab 等の CI/CD ツールでコードスキャンや SAST・DAST 等のテストを組み合わせることで、ある程度のセキュリティ対策は可能です。コード管理はもちろん、セキュリティ強化の為にもぜひ併せて活用してみて下さい。

今回のブログは以上です。Kiro を通して、少しでも AI エージェントの面白さを感じて頂けると幸いです。AWS Ambassador の濱田がお送りしました。

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