AI 元SEママの情シスなりきりAWS奮闘記

画像判別AI「ELFE」はなにに使えるのか?具体的な活用例を聞きました!

2022年12月1日掲載

こんにちは。シイノキです。最近出てきたAIが絵を描いてくれるサービス、すごいですね。絵心が皆無の私としては結構気になって試してみたのですが、なかなか思ったようには出ませんでした。絵を指示するスキルすらないのか……と凹みましたが、ここはもう少し研究したいところです。

お絵描きはさておき、AIで画像解析というと、だいぶ実用化が進んできたのでは?という印象があります。ソニービズネットワークスでもAIを活用した 画像判別サービス「ELFE on AWS」を提供中!これは、ソニー独自のアルゴリズムを採用したAI「ELFE」で、画像分類を自動化するもの……ですが、どんなことなら実際の業務で使えるレベルなのかというと、具体的にはイメージしにくいのも本音。使えるシーンは多そうなのに、想像がつかないので使えない、というのではあまりに悲しいです。
そこで今回は、「ELFE on AWS」を担当する高橋さん、菅原さんのおふたりにインタビュー。ELFEって実際なにに使えるの?を詳しく伺いました!

ニーズの多い、製造業での「良品・不良品判別」

―― 画像判別をおこなうAIエンジン「ELFE」は、画像の特長をもとに分類するものですよね。これをうまく活かすことで、良品・不良品などの判別に使える、ということになりますが、実際どういった用途での相談が多いのでしょうか?

菅原 一番多いのは製造業で、金属製品・プラスチック成型品などの傷やへこみ、サビといった不良品判別をできないか、とご相談をいただきます。これまでは人が目視でチェックしていたところをAIで自動化し、人材配置を最適化したいという要件ですね。

 

―― やはり製造業なんですね。このあたりはすでに自動化が進んでいる印象がありました。

菅原 確かに、大手企業でも量産しているような製品は検査の自動化が進んでいますが、小規模なラインではそこまでできておらず、低コストで手間をかけずにできないかと相談いただきます。中小企業も同様です。
また、これまでの検査自動化はルールベースのものが主流で、事前にプログラミングなどで指定したものしか検出できません。また、閾値の設定が難しく、環境変化に対応するのも大変で、どうしても誤検出や過検出が多くなりがちなので、AIによる適正化が期待されています。

ベテランしか分からない!浄化槽の水質をAIで監視

―― 製造ラインでの不良品判別は割とイメージしやすい使い方だと思うのですが、そのほかの活用例はありますか?

高橋 浄化槽の水質判断にELFEを使ったケースがあります。ある工場で排水を浄化するのですが、浄化槽の水質をチェックする必要がありました。人が目視で監視して、適切に浄化できているかを判断するのですが、正直私が見ても違いはよく分かりません。きちんと判断するためには、専任の監視員やベテラン技師が担当するしかありませんでした。これをAIで判断できないか、ということですね。
実は、浄化槽が屋外にあるので、日中と夜間で明るさなど撮影条件が変わりますし、晴れ・曇・雨と天気でも大きく変わってしまいます。AIでの画像判別を考えると、あまりいい条件とは言えませんでした。ただ、ここでは24時間撮影して学習データを集めた結果、一定の精度で判断できるようになりました。夜間などスタッフの負担が大きい時間はAIで監視するなど、人とAIの“ハイブリッド”で活用して、従業員の負担軽減に成功しています。

 

―― なるほど、そういった使い方があるのですね。素人考えですが、水質というと水族館などでも使えそうです。

高橋 用途によりますが、可能性はあると思います。ただ、やはりどんな写真を用意できるかがネックになりそうです。ガラス越しに撮影するとなると、映り込みが入ってしまうので、AIでの判別が難しくなります。撮りたい対象をどう工夫して撮影するかが重要なポイントです。

牛肉の霜降り具合、冷凍ピザの具のバランスも判別できる!

―― やはり、屋内の安定した環境だと導入しやすい、ということなんですね。

菅原 そうですね。少し違った例を挙げると、食肉の出荷ラインで「牛肉の霜降り具合によってランクを判断する」といったことにも使えます。ELFEでは良品・不良品の2種類だけでなく、20分類まで対応できるので、対象を細かくカテゴライズできます。

 

―― 霜降り度合いは人が見極めるのも難しそうですし、AIで判別するメリットも大きそうです。

菅原 あとは、実際に工場にご協力いただいて検証したのが、冷凍ピザの盛り付けチェックです。サラミやバジルなどの具材が「何枚載っているか」といった枚数チェックは、従来型のルールベースの仕組みでも比較的チェックしやすいのですが、AIならば「バランスよく配置されているか」もチェックできます。色も見られるので、ソースがバランスよく乗っているかの判別にも使えます。

 

―― 確かに、ピザの具が思い切り偏っていたら、我が家はバトルがスタートします。バランスもチェックできるのは大きいですね。となると、お弁当の盛り付けや、レストランでの盛り付けなどにも応用できそうですが、どうでしょうか?

菅原 大量生産で、同じものをたくさん作るケースなら、大丈夫かなと思います。そういう意味だと、作る数の限られる日替わり弁当のようなものは難しく、教師データを確保しやすい“定番弁当”の方が適用しやすいでしょう。また、チェーンのレストランで盛り付けを統一したいといったケースもあり得るかもしれません。
どちらにしても、人が作業する厨房などで撮影するとなると、安定して撮影できる環境をどうやって用意するかが鍵になります。

屋外では難しい?インフラ設備の外観検査のケースでは……

―― 「安定して撮影できる環境を確保」となると、やはり屋外はハードルが上がるように思いますが、ほかにも屋外ならではの課題はありますか?

高橋 最近聞いたのは、道路にある電柱などの設備の外観検査をAIでできないか、といった相談です。これも、素人には正常・異常の判断が難しいですが、タブレットやスマートフォンで撮影した写真をAIで判断すれば、エンジニアは異常があるところだけピンポイントで行けるようになります。撮影するだけなら、アルバイトなどのスタッフにレクチャーして対応できます。
この場合、当たり前ですが、外で撮影するので場所によって背景が違いますよね。人が見ると、どんな背景であっても「どれが電柱か」を判断できますが、AIはまずそれが分かりません。また、「周りに写っているものが結果に影響しない」と学習するところから始めることになるので、手間もかかります。ただ、学習データを増やして対処するほか、事前に画像処理をおこなって、対象物だけ切り抜いてしまう方法もあります。やり方次第で実現できると思います。

少ないデータから「とにかくやってみる」ことが大切

―― 屋外でも対処方法はある……ということですが、学習データをどう作成するか、というのが気になります。学習データが多いほど精度が上がるのは分かるのですが、事前に「どれが正常か、異常か」などのラベリングは、人が仕分けしていくしかないのでしょうか?

高橋 そうですね。基本的には、事前に手作業で画像をカテゴリごとに分けてもらう形になります。ただ、枚数が多くなるとやはり大変ですので、ELFEではここをサポートする機能を追加しました。この機能は、インプットした画像を自動で分類するもので、分類された結果から間違っているものだけを再仕分けすることで、かなり手間を減らせると思います。

菅原 もうひとつ、学習データを用意する際に、「そもそも不良品の画像を数多く用意できない」という悩みはよく聞きます。ここをクリアするために、良品のデータだけを学習させ、それ以外と区別するという方法もあります。細かく分類するのではなく、正常・異常の2種類に分類するのであれば、これで対応できるケースもあると思います。導入時の負担はかなり減らせるのではないでしょうか。

 

―― 導入がラクになるのは、やはりいいですよね。ちなみに、ELFEは少ない枚数でも判別できることを特長としています。正直「本当にできるの?」という疑問も感じてしまうのですが、実際どうなんでしょうか?

菅原 カテゴリごとに100枚ほどデータがあれば、学習すること自体はできます。ほかのAIと比べてかなり少ない枚数でできるので、これは強みですね。ただ、どれくらい精度を高めたいか、どれくらい細かく判別をしたいのかにもよるので、実践しながら、画像枚数を増やして検証を進めていくのがよいのではと思います。

高橋 ELFEは「遺伝的アルゴリズム」という技術を用いて画像を判別することで、一般的に使われているDeep Learningよりも少ない画像でもある程度の精度を出すことができます。ただ、画像を多く集められるケースではDeep Learningの方が、高い精度が出ます。ELFEでは、遺伝的アルゴリズムに加えて、Deep Learningにも対応したので、最初は少量の学習データを使って遺伝的アルゴリズムでスタートし、学習データが集まったらDeep Learningで精度を高める形をお勧めします。

 

―― 確かに最初から必要な画像データがそろっている、というのはなかなかレアケースでしょうし、少ないデータでもとにかく始めることができるのは魅力です。

高橋 最初から高い精度で、完璧なものを目指そうとするケースは多いのですが、いきなりそれではうまくいかないことが多いです。とにかく少量のデータでも実際にスタートすることで、「どんなデータが足りないのか」も見えてきます。データを集める意識が持てるようになれば、数年後に使えるAIを実装できるようになりますから、まずはいかに早く社内で意識付けできるかが大切ではないでしょうか。

菅原 最近のAI活用では、すべてをAIで完結するのではなく、人の作業と組み合わせる「ハイブリッド」が大きなテーマになっています。判別をすべてAIに任せるのではなく、たとえば1000件の画像をチェックするなかで、95%はAIが判別できる・残り5%は人が対応する、という形ですね。AIで100%の精度は出せませんが、1000件の画像をすべて人がチェックしていたところを、95%までAIで自動化できれば、かなりの負担削減になります。これをメリットと感じる企業には、ぜひELFEを検討いただきたいです。

まとめ

「なんだか身近になってきた」気はするものの、実際仕事ではどんなシーンで使えるのかはなかなかイメージが付かず、やるとしたら結局大変なんじゃないの……?という疑念がぬぐえなかったAI。今回お話を伺って、やっぱりなんでもできるモノではないのね、と改めて思いつつも、工夫次第でどうにかできるケースもありそうですし、思った以上に幅広いシーンで使えそうだなと感じました。

なによりも、100%を目指さずにまず少量データでやってみるのが大事、というのも刺さりました。新しいことにはつい腰が重くなりがちですが、試してみないと「できそうかどうか」すら分からないですし、一度実際にやってみることで、ほかでは得られない情報が手に入るわけです。

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